最終話 雪崩
母の心臓の音がうるさい。
その音は僕が今までの人生をすべて否定して、ぼくはひどい気分になる。
──違う、それは僕の感情だ
「ダンッ ダンッ ダンッ」
僕は昔から気になっていた母の首を掴んで、体を雪の上に叩きつけるように、床に叩きつける。
年老いた母の体は猫のように柔らかい。
少し重たいが、普通の大人と比べると母は大分軽い方に分類される。
僕は──母が鈴の首を押したように、親指で母の首の真ん中を押す。
思い出した。
あの時、鈴はまだ死んでいなかった。動かないから自分が殺したと勘違いしてしまっていた。
帰って来たばあちゃんが電話をして、母と何か話をしていた。
そして──母は瀕死の鈴の首を押した
床に倒れた母は動かない。
母の心臓に手を当てて、完全に音がしないことに安心する。
ぼくは、手を合わせるように首を握りしめる。
自分の中でなにかが崩れる音がして、雪が解けるように気分が落ち着く。しかし、僕の手が握っている沢山の免罪符は偽物で、罪は一つも消えていない事を思い出す。
この長年降り積もった雪山のような自分は、善人ではなく愚かな人間でしかない。
毎日使ってるチョークが折れるような音がして、ゆっくり指先を離す。
母は僕を管理していた。
そして、母はもういない。
僕は文字が敷き詰められた2冊の「観察記」を見る。
これは
──愚かな人間による自己観察記
文武両道を掲げるうち高校の生徒の間で、最近人気のパン屋があるらしい。
そんな情報をクラスのとあるグループから仕入れた私は、お腹を空かせて歩いている。昨日は校内が騒がしかったから、たまにはゆったりとした休日を過ごすくらいのご褒美があっても、罰は当たらないだろう。
空を見上げると、雪が降り始めていた。
上ばかり見てそんなことを考えていると、足元に黒い影が見えた。
「わぁ、可愛い猫ちゃんだ〜!」
「ニャン」
「そんな声で鳴いても車道に出ちゃダメだよ?」
普段歩かない道を歩いていると、新しいものばかり目に入る。
「あっ、待って!」
黒猫は軽い足取りで黒猫は逃げてしまった。
「なんか、落ちてる?……新聞紙?」
【自宅で母親殺害、高校教師の男を逮捕】
「◯◯県警は12月14日、自宅で同居する母親の観崎冴子さん(58)の首を絞めて殺害したとして、殺人容疑で県立✕✕高校の数学教師、観崎律容疑者(30)を逮捕した。
調べに対し容疑者は『母に管理されるのが限界だった。4回目のイメージしたら体が動いた』と供述している。また、犯行現場では膨大な量の手記のようなものが見つかり──」
─完─
皆さん、騙されていただけましたか?
活動報告に「あとがき」を投稿しました。




