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愚かな人間による自己観察記  作者: ログ


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第1話 鈴の音が止まった日

なんでだろう。

どうしてこうなったんだろう。

どうしてぼくはばあちゃん家で飼っていた猫、「鈴」の前で手を合わせてるんだろう。



ぼく──観崎律かんざきりつの学校での出来事はいじめグループとの叩き合いがほとんど。クラスにはいじめられてるくせにやり返せない人もいたが、ぼくは叩かれたら叩き返すくらいは気が強い……そうしないと心が潰れてまいそうで、やり返して自分を守ることが必要だった。


いじめをする人の表情ははみんな笑っていて、僕は笑っていない――少なくとも最初の頃はそうだったはずだ。


ぼくの家族は母と父とぼくの三人で、車で行ける範囲にばあちゃんの家もある。小学校の頃は夏は家族の家、冬はばあちゃん家で生活をしていた。家族関係は良好で普通の家庭環境だった。でも、ぼくの「普通」は少しおかしかったらしい。


叩き合い──「暴力」が日常だった学校生活を送って半年以上が経って僕は、正常性というようなものをなくしたんだと思う。


いつからか、日常の些細なことで苛立つようになり、ぼくは母やばあちゃんを叩くようになった。


一方的な家庭内暴力だった。


小学4年生が知っていることは限られている。学校で知ったのはみんなの「暴力」と、みんなの「傍観」だけで、ストレスの対処法は「暴力」しか知らない。



母とばあちゃんの背中にあざが目立ってきて、空から雪が降るようになった頃だった。


ばあちゃんが買い物に行って家にいない間に、鈴を床に叩きつけるようになった。いじめによる強いストレスは、自分より弱い存在──飼い猫の鈴に「暴力」をぶつけることで、一時的に麻痺したように感じていた。


「ニャッ ニャッ ニャッ」


床に叩きつけられて鳴く声が、いじめをする奴らの笑い声に重なったような気がして、不思議なほどに気分が良くて、またしたいと思っていた。そんな日々が少し続いた。


その日も鈴の首の肉を掴んで床に叩きつけていた。


鈴が息苦しそうにフラフラと歩いている。


くしゃみをするように血を吐いて、酒に酔ったように歩いている。いつも鈴を鳴らすように動かしていた足も重く、テレビ台によったまま口で呼吸をしている。


おかしいな、いつもは3分くらいしたら落ち着くのに。もう10分以上経っている。


やがて、倒れた鈴の音が止まった。


「ばあちゃんが帰ってくるだろっ!いつもみたいにすぐ立てよっ!」 


―鈴は動かなかった。顔も、足も、心臓も。



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