残酷なキスと暖かなビスケット
(屋敷内)
「あ・・・」
神崎は目を覚ました。
そこは、いやな思い出しかない薄暗い部屋。
逃げ出したはずなのに
あいつを殺したはずなのに
なのに、どうしてあいつは私の前にいたの?
神崎には、疑問と恐怖の念だけが心の中をうごめいている状態なのだと気づいたように思えたそんな時
・・・
「何これ・・・身体が・・・動かない・・・」
身体の異変はそれだけに留まらなかった
「声も・・・出にくい・・・。」
「だって、また暴走しちゃうじゃないですか?だから僕が少しおまじないを・・・」
神崎の視界に、優しく微笑む澪が入ってきた。
「お帰りなさい。砂羽」
「み・・・お・・・どう・・・す・・・る・・・つも・・・り?」
澪は、砂羽の頬にそっと冷たい手を当てながらその問いに答えた。
「どうする?決まっているじゃないですか。その身体にすべてを聞くだけです。」
澪はそういうと、神崎を抱きしめキスをした・・・。
やさしいようで、冷たく残酷なキスを・・・
神崎の身体に刻むようにずっと・・・
そのころ別室では、焔が刀の手入れをしていた。
ただ無言で刀を研いでいる。
彼の心の中は死神への復讐心だけだった。
そのころ一馬は、子どもたちを抱えながら無我夢中で走り続け、やっとの思いである屋敷にたどり着いた。
「ここなら、大丈夫だな。」
一馬は屋敷の外に結界を張ると、子どもたちを応接室のソファーに寝かせる。
「・・・」
一馬は子どもたちの頭を優しくなでていた。すると、子どもたちは目を覚まし、小さな目で一馬の事を見ていた。
しかし、その目は何かに怯え、身体は小刻みに震えていた・・・
「もう大丈夫、安心して。」
そういって子どもたちに触ろうとすると、ソファーから立ち上がり、部屋から飛び出してしまった。
「・・・そうだよな・・・すぐに信じてもらえるなんてことないか。」
一馬は、床のホコリの中の小さな足跡をたどるように部屋を出た。
(屋敷1階 会議室)
「湊・・・」
「どうしたの?祈?」
「死神だよね・・・さっきの」
「たぶん。」
祈と湊は、会議室の議長席の下に隠れていた。
大きな作りをした椅子には、黒い布がかぶせられている。
その布の内側の空洞に彼らは息を殺しながら隠れていた。
彼らがひそひそ話していると、冷たい風と同時に少しの光が入ってくる。
「み~つけた。」
一馬はそういうと、さっと彼らを抱きかかえる。
「離して!」
「触るな!」
「大・・・痛て!大丈夫!俺は、何にもしないから!だから、暴れんな!」
一馬は、暴れる彼らを抱えながら応接室に戻っていった。
(応接室)
一馬は暴れる子どもたちをソファーに座らせ、身に付けていたバックを開ける。
(うわ・・・これしかないか・・・)
バックの中のビスケットの袋をそんな気持ちで眺めてしまった。
ふと横を見ると、子どもたちはただじっと一馬のほうを凝視している・・・。
「ふ~、お疲れさん。こんな物しかねーけど食うか?」
子どもたちに小さくて丸いビスケットを渡すと、あまりに空腹だったのか一瞬で食べきってしまった。
「他に何かあればよかったんたけど、ごめんな。」
一馬がそういった瞬間、一馬のバックの中のビスケットを貪るように食べ始めた。
泣きながら、ただずっと・・・。
「辛かったな・・・」
そういうと、一馬は子どもたちを強く抱きしめた。
「もう大丈夫だ。俺がそばにいる。お前らをずっと守るから。」
数分後、今度は眠くなったのかソファーで小さな寝息を立てながら眠っていた。
口の周りに、さっきのビスケットの粉を付けながら・・・。




