事件は再び
・PIXIVで連載中の「鎮魂歌・零」の過去編「KEY」を少しだけ書き直したものです。
・少し残酷な描写が出てくるのでご注意ください。
獅織が入隊して2年の月日が経った。
翡翠黒鬼の中では、不可解な事件が発生していた。
隊員連続殺害事件・・・
発見された隊員の亡骸は、身体の一部が切り取られ、目立つように木に吊るされるなど、猟奇的なものであった・・・。
(翡翠黒鬼 会議室)
龍崎達はこの事件に関する隊長会議に出席していた。
部隊は龍崎、不動、朝比奈が仕切る実行部隊以外に、特殊武具・薬品の製造管理をする第4部隊“創生”と隊員の救護、食事管理等医療的業務を行う第5部隊“命音”が存在する。
この会議は、彼ら部隊長5名と彼らの上司である総隊長の6名で行われた。
「今回までに5件の被害が出ています。全て男性隊員です。一度目は左腕、2度目は左足、3度目は胴体、4度目は右腕、5度目は右足が欠損した状態で遺体が発見されており、あまりにも猟奇的且つ残虐的な犯行としか思えません。」
不動は、手元の資料とスクリーンに映された隊員の亡骸を見ながら、参加メンバーに事件の説明をしていた。
「あの事件に酷似しておるな・・・」
スクリーンの写真を見ながら、中央のソファーでつぶやいたスーツ姿の女性。
彼女が、翡翠黒鬼の総隊長、神崎砂羽である。
神崎は、他の隊長達を見ながらこう話し始める。
「25年ほど前に、ある村で起きた村民集団虐殺事件だ。成人男性は身体の一部が欠損、成人女性は体内の血液が残っていない状態で発見された。また、この事件では村の子どもがほぼ全員姿を消している。その後も同じような事件が何件も発生し、全て同じ手口で、同じように子どもが消えた。今もその子供達は見つかっていない。今回のこの事件と25年前のこの事件は手口が似ていることから同一犯、もしくは模倣犯と考えてもいいかも知れんな、龍崎。」
「はい・・・。」
「大丈夫か?顔色がさっきより悪いぞ。少し外の空気を吸ってくるか?」
「大丈夫です・・・。」
龍崎は、怯えていた。
最初の事件が発生した時から眠れないくらいに・・・。
怒りと恐怖に震えていた。
会議が終盤に入り始めた時、部屋にドンという音が・・・
「龍崎!」
神崎の視線の先には、意識を失い倒れこんだ龍崎の姿があった。
「あ・・・ここは・・・」
「処置室ですよ。龍崎隊長。」
そこには、第5部隊“命音”の隊長、山王和丸がいた。
「そっか・・・会議は?」
「中止です。龍崎隊長が会議で倒れられたので。」
「そっか・・・」
白い部屋の中、龍崎と山王は少し会話をした。
「何かあったのですか?」
「別にねーよ。なんで?」
「いえ。あまりにも顔色が悪かったので。それにあまり眠れていないようでもあるので・・・」
そういいながら、山王は龍崎に栄養剤を点滴で投与する為、準備をしていた。
「しばらく、安静にされたほうがいいです。」
「しなくていい。」
栄養剤を投与されながら、龍崎はまた眠りについた。
(総隊長室)
神崎は、25年前の事件の資料を見ながらため息をついていた。
「この会議に、龍崎を出席させたのは間違いだったかもしれんな・・・」
そういいながら、またため息を吐く。その繰り返し・・・
「失礼します。総隊長、兵頭豪紫様お連れいたしました。」
「了解。お通しして。」
「かしこまりました。」
秘書が、豪紫と摩那を部屋へ呼び入れた。
「お久しぶりです。神崎総隊長。」
「改まりすぎだ、兵頭。」
「そうですね。では・・・お久しぶりです、神埼先生。」




