第35話 体幹の圧と、可憐なるお仕置き
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「フランシスカ・アイゼンベルク! 貴様のような笑わない女など、我が王家の妃の座にふさわしくない! 今この場をもって、貴様との婚約を破棄する!」
満座の貴族が見守るホールの中央で、王太子レナードが勝ち誇った声を響かせる。その傍らには男爵令嬢マリアがしがみつき、高壇の上では正妃(王妃)は扇子の陰で「勝った」と言わんばかりの冷笑を浮かべた。
「そうよフランシスカ! 病弱で王家に何一つ貢献できない貴女など、我が息子の妃にはふさわしくありません! レナードには、マリアさんのように健やかで愛らしい伴侶こそがふさわしいのです!」
一方、会場の隅では国王(伯父様)と側妃ソフィア様、そして優秀な第二王子ヴィンセント様と彼の可憐な婚約者・クラリス令嬢が固まっていた。
「(あ、兄上の立ち姿……完全に軸がぶれていますね)」
「(ええ、ヴィンセント様……手に取るように分かりますわ。フランシスカ様のあの満ち満ちた体幹……恐ろしい圧です……)」
息をのむ周囲に対し、私の肩の上で金髪碧眼の小さな美少年精霊・ピピが、ニヤリと不敵な笑みを浮かべて念話を送ってきた。
『フラン! ついにきたね! あの王子様、相変わらず右肩が下がりまくって軸がガタガタだよ! 毎日コツコツ鍛えてきた僕たちの『体幹』の凄さを、あのおバカな王太子に見せつけてやろう!』
(ええ――もちろんですわ、ピピ!)
私は病弱で可憐な令嬢の笑みを浮かべたまま、すっと一歩前に踏み出した。
ズ―――ン!!
「ひっ……!?」
ただ一歩を踏み出しただけだというのに、ホール全体に不可視の「圧倒的な体幹の圧(物理)」が波のように広がった。
見た目は華奢で儚げな美少女のままだが、その体幹の密度と重力はまさにS級魔獣並みである。
「レナード殿下。婚約破棄、謹んでお受けいたします。……ですが、最後に一つだけよろしいですか?」
「ま、待て……な、なんだこの圧は……!? 近寄る
な! 衛兵――」
圧力に膝がガクガクと震え、ペタンと床に腰を抜かしたレナード。
私は可憐な動作のまま優しく微笑むと、細く華奢な片手でレナードとマリアの胸ぐらを軽々と掴み上げ、そのまま空中へとリフトアップした。見た目と腕力のギャップに、会場中の貴族たちが息をのむ。
「人生の軸を支えるのは、不誠実な愛じゃなくてよマリア様――人生の軸は圧倒的な体幹ですわ!」
「ひぎゃぁぁぁっ!?」
そのままレナードとマリアを軽々と投げ飛ばし、床へと綺麗に叩きつける!
泡を吹いて倒れたレナードと、悲鳴を上げて逃げ出すマリア、そして圧迫感で失神した王妃を横目に、私は可憐に首を傾げて微笑んだ。
「というわけで伯父様! 婚約も綺麗に破棄されましたので、私はこれよりピピと二人で世界中の鍛錬場を巡る旅に出ますわね!」
「お、おう……気をつけてなルミィ……(またたく間に我が王宮の裏の権限が入れ替わった……)」
呆然とする国王の横で、ヴィンセント様は苦笑しつつもクラリス令嬢の肩を優しく抱き寄せ、決意を秘めた目で私を見送ってくれた。
「(兄上たちが自滅した以上、俺とクラリスでこの国をしっかり立て直さなきゃな……。フランシスカ嬢、どうかお元気で!)」
「それじゃあみんな、行ってきまーす!」
ピピと共に大ホールの窓を突き破り、私たちは自由な大空へと爽やかに飛び出していったのだった――!
ご視聴いただきありがとうございました。本作の原作にあたる作品も、ぜひあわせてお読みいただけますと幸いです。
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