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美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった  作者: lavie800


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第三十六話 本物の月の小面

「何者だ!ここは堀尾吉晴が娘、小那の私室ぞ。許可なく立ち入ることは何人たりとも許さぬ!」


背後から響いた不意の物音に、小那姫が毒気を含んだ声で吠えた。

仰向けに横たわり、絹の帯で手足を縛り上げられた俺のすぐ横には将棋盤の底から暴かれた「月の小面」が、月の光を浴びて不気味な白さを放っている。


荒々しく戸が開いた。 「……唯一の例外だとは思うがな。入るぞ、ラミア」


現れたのは、城主・堀尾吉晴だった。

その鋭い眼光は、娘の乱れた姿を素通りし、床に転がる白磁のような面に注がれた。


「これは……月の小面ではないか!」


洗礼名ラミアを持つ小那姫の、潤んでいた瞳が驚愕に見開かれた。


「ち、父上……何事でございますか」


「それはこちらの台詞だ。その小面は何だ。そして、そこに転がっている女……いや、男はどうしたのだ」


小那姫は慌ててはだけた胸元をかき合わせ、乱れた髪を指ですくい上げた。父の詰問から逃れるように、俺へと憎悪に満ちた視線を向ける。


「この者が……将棋盤を持って現れたのです。私の前で盤を裏返し、中からこの小面を取り出しました!浜松城で面を盗んだのもこの者の仕業に相違ありません。ゆえに、こうして捕らえ、手足を縛り上げたのです。父上、直ちに切り捨ててくだされ!」


出鱈目もいいところだ。俺は必死に身をよじり、食い込む帯を解こうと暴れた。


「小面を盗んだのがこの女……いや、この者だと言うのか。家康殿の至宝を弄んだ罪は死に値する。……だが小那、武家の娘が偽りを申すな。もう一度聞く。この面はどうしたのだ」


吉晴の重圧に耐えかねたように、小那姫は床に突っ伏して慟哭した。その肩が激しく震える。


「月が、あの女が悪いのです!忍びの月に、私は魂も体も奪われたのです!」


彼女は顔を上げず、狂おしいほどに切ない声を漏らした。


「あの女の蛇のようにしなやかな肢体、耳元で囁かれる濡れた吐息……。女同士の禁断の情欲に溺れた私は、月の甘い言葉に唆され、家康様の小面をからくり木箱に隠しました。すべては月を喜ばせたい一心……。なのに、あの一夜限りの夢が明ければ、箱は空。月は私を裏切り、小面を奪い去ったのです」


「内々に、家康殿から聞いておる。やはり貴様の仕業だったか」


「月はその後、小面を囲碁盤に隠したようです。偶然それを見つけた私は、独占したいという狂おしい独占欲に駆られました。あの女の滑らかな肌を思い出すたび、小面だけは渡すまいと誓ったのです。だから私は、石山安兵衛に月の小面を隠せる『空洞の将棋盤』を作らせました」


小那姫は立ち上がった。

その瞳には、もはや理性ではなく、裏切られた情念の炎が燃え盛っている。


「月が再び私を抱いてくれないのなら、殺めるしかない。愛憎の果てに、私は女中を通じて安兵衛に『死を運ぶ椅子』を注文しました。あの女の胸に、冷たい鋼を突き立てるために!」


俺は手首に食い込む帯を死に物狂いで緩め、ようやく自由を掴み取った。


「それで、あのからくり車椅子で月を殺そうとしたのか」


吉晴の問いに、小那姫は憑かれたように笑った。


「ええ!月を誘い出すために、私は囲碁盤に偽の手紙を仕込みました。

『黄金の狐を目指せば月が現れる』と。あの女、必ず現れると思っていました。自分の欲望に忠実な、あの淫らな忍びなら……!」


小那姫の顔が絶頂を迎えたかのように紅潮する。


「私は正義のために、裏切り者を始末した。しかし……!」


その時、堀尾吉晴の影から、凛とした男装の少女が姿を現した。


「しかし、殺されたのは月ではなかった。妹の貞さんだったわ」


宗古だ。隣には、静かに全てを見届けていた徳川家康が立っている。


「死体の右胸に痣があるのを見て、あなたは気づいた。殺したのが愛した月ではなかったことを。だからあの時、あなたは真っ青になったのよ」


宗古の冷徹な指摘に、小那姫は言葉を失い、崩れ落ちた。家康が転がっていた月の小面を静かに拾い上げる。


「小那姫、もうよい。堀尾殿、娘の処分は任せる。私は月の背後にいる元締めを追うことにしよう」


俺は女装のまま、宗古と家康に従って部屋を出た。

背後で、堀尾吉晴の深い溜息が聞こえる。

そして、闇の底から響くような、錯乱した女の絶叫が城内に木霊した。


「月は必ず、この私の手で、バラバラにして殺してあげるわ……!」

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