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美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった  作者: lavie800


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第三十六話 本物の月の小面

「誰。ここは堀尾吉晴の娘である小那姫の部屋。

何人たりとも許可なくして入ることも邪魔することは許しません」


趣向で手足を軽く縛られた吉川の横には、将棋盤から出された月の小面が転がっている。


部屋の戸が開いた。

「唯一の例外だと思うが。入るぞ、ラミア」

堀尾吉晴が部屋に現れ、その視線が月の小面に注がれた。

「これは!

月の小面ではないか」


洗礼名がラミアである小那姫の眼が大きく見開かれている。

「父上。何事でございます」

「それはこちらの台詞。

そこにある月の小面とそこに縛られている女はどうしたのだ」

小那姫は慌てて胸元を整えた。

堀尾吉晴は、転がっている月の小面を拾い上げて小那姫の前に突き出した。

小那姫は髪の毛を弄り、堀尾吉晴から視線を外して吉川を見ると返答した。

「この者が将棋盤を持ってきて私の前で将棋盤をひっくり返し中から月の小面を取り出したのです。

きっと浜松城で小面を盗んだのもこの者の仕業でございます。

だからこの者の手足を縛ったのです。

剣で切り捨ててください」


何を言っている。無茶苦茶だ。濡れ衣だ。手足を早く解いてくれ。

吉川は手足を解こうと暴れた。

「家康様の月の小面をこの女が盗んだのであれば死に値する。

だが小那、武家の娘が間違ったことを言ってはならない。

改めて聞くが、この月の小面はどうしたのだ」


小那姫は慟哭し突っ伏した。

「月が悪いのです。忍びの月が悪いのです。

月の小面を太閤様から与えられた家康様が浜松城に立ち寄られた際に私は月に騙され、月の小面をからくり木箱に隠したのです。

しかし翌日からくり木箱を見たら、中には月の小面が無く、忍びの月に盗まれたのです」

「そうだろう。内々に家康殿から聞いておる」

「忍びの月はその後、浜松城にあった囲碁盤の中に月の小面を隠したようなのですが、囲碁盤が私の部屋に置かれたので触っていると囲碁盤が空いて、そこにあった月の小面を見つけたのです。

月の小面が入っていない囲碁盤は遠江分器稲荷神社に戻しました」

「何故囲碁盤から月の小面を見つけたときに、私に報告しなかったのか。」

「それを見せれば忍びの月が変心するかもしれないと思ったのです。一方で変心して再び私に情愛を注いでくれることはあり得ないとも思っていました。

そのまま囲碁盤に置いておくと再び忍びの月に盗まれるかもしれないと思い、石山安兵衛に、女中を通じて月の小面が隠せるからくりの将棋盤を発注したのです」


小那姫は泣いていたが、顔を上げると眼は狂気に満ちた光で輝いていた。

「月が変心してくれなければ私は月を殺めることにしました。

女中を通じて石山安兵衛に発注したのは、月の小面を隠せるからくり将棋盤だけではなく、自動で人を殺められるような装置をお願いしました。

しかし肥前名護屋城で忍びの月が再び私に情愛・情欲を注いでくれるようなことは決してあり得ないと悟りました。

むしろ私は騙された。忍びの月は最初から私を騙して家康様を窮地に陥れようとしたのではないかということが分かったのです。

忍びの月は家康様を疎んじる勢力の一派だと思われます。

忍びの月を殺めなければまた家康様が窮地に追い込まれますしわたしを騙した者は誰であっても抹殺しなければ許せません」


吉川は縛られていた帯を少し緩めることに成功した。


「それで自動からくり椅子で忍びの月を殺そうとしたのか」

「はい。肥前名護屋城から浜松城に私や家康様が到着した際に、淀君が急に遠江分器稲荷神社に祈祷されることになりました。

忍びの月を操る人物は不明ですが、何かの時に必ず月は小面を奪うためにこの地に現れると思っていました。

なので、私は忍びの月をおびき寄せる手紙を作ってからくりの囲碁盤に仕込んでおいたのです」


吉川の帯が完全に緩んだ。吉川は解放された。


「何という文でおびき寄せたのだ」

「『月の小面は、椅子に座りゼンマイを巻き黄金の狐を目指せば現れる』という手紙を女中に遠江分器稲荷神社に行かせて囲碁盤に仕込みました。

また、

『そして椅子に座り、能面を被り、血を流すことで黄金の狐は月を持ってくるであろう』

という手紙を女中に指示して、からくり車いすに設置させたのです。

石山安兵衛に注文した自動刺殺できるからくり車いすは遠江分器稲荷神社に隠していたのです」

小那姫は立ち上がって何かに取り付かれたような高揚した顔で続けた。

「忍びの月は抹殺されるべき者。私は正義のためにそれをした。しかし」


堀尾吉晴の後ろから男装の小柄で瞳の大きな人物が現れた。

「しかし、月ではなく、妹の貞さんが殺された。

殺された人の右胸元に痣が有ることに気づき、殺した人物が忍びの月ではないことを知って、あなたは真っ青になった」


宗古だ。やっとお出ましか。

宗古の後ろから徳川家康が姿を現した。

「小那姫、もうよい。そういうことだったのか。

堀尾吉晴殿、小那姫の処分は貴殿に任せる。

私は忍びの月とその元締めを探すことにする」


こうして徳川家康は、本物の月の小面を手に入れた。

吉川は小那姫から解放され宗古と家康に付いて小那姫の部屋から出た。堀尾吉晴は小那姫の部屋に残っている。

錯乱した女の声が部屋から聞こえてきた。

「月は必ず私が殺す」


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