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美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった  作者: lavie800


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第三十一話

翌朝、宗古は城の勝手口で俺を連れてきた。

「この城の出入りが堅ろうなのは分かったけれど、出入りの商人が勝手口の倉庫に密かに隠れることはできるような気がするわ」

「その場合でも、倉庫の扉の鍵は閉めるから倉庫から外には出られないよ。

倉庫の中の換気孔も途中で鉄格子があるから人間は通れないはずだ。

密室のトリックでもない限り城内に忍び込むのは難しいと思う」

「勝手口の出入り口や倉庫の扉を閉めてから、誰かが倉庫の鍵をあけたらどうかしら。共犯者が城の中に居たら、城内に忍び込めそうよ」

宗古は勝手口の見張りのところに行って何か聞いていた。

そのあと俺のところに走ってきた。

「勝手口の出入りの鍵は城内で厳重に保管していて見張りが一晩中、保管場所に待機していると聞いたわ。

でも、倉庫の鍵は、食料品や雑貨があるだけだから、鍵も一旦閉めてしまえば防犯上問題ないということで、倉庫の奥の廊下の近くにぶら下げているだけと言ったわ」

「そうすると城内に共犯がいれば、倉庫の鍵は簡単に開けられるのか?」

「そういうことよ。

忍びの月は、商人の恰好をして倉庫に忍び込んだ。

夕方に自分が持ってきた籠か何かを倉庫に持って行って倉庫に忍び込んだのよ。

ただし勝手口の扉は、夜は出入りできないから誰かが倉庫の鍵を開けるまでじっと待つしかないけれど」

「夜に誰かが倉庫の鍵を開けてくれれば、そのまま城内に忍び込めるのか。

月は何故浜松城に忍び込みたいのかな」

「月の小面が浜松城に未だ有ると思っているのよ」

「本物の月の小面を欲しがっているのは、家康を疎んじている人だよね。

最初に小那姫が月の小面をからくりの木箱に隠した理由は、百合の関係になってしまった忍びの月に頼まれたからだよね。

忍びの月が小那姫を誑かして月の小面を欲しがったのは、月自身がそれを手に入れて家康を窮地に陥れようとしたのか、誰かに頼まれたのかということだよね」

「そうね。今回城の中に共犯者がいるということだから、忍びの月だけの犯行動機ではなさそうね」

「本物の月の小面はどこに消えたのだろう」


勝吉がやってきた。

先ほどのやりとりを宗古が勝吉に話していた。

「わかった。念のために今日から倉庫の鍵もしっかり見張るように申し入れておく」

「勝吉さんは、石山安兵衛を良く知っていたのですか」

「能の小道具を作ってもらっていた。手先が器用で仕上がりも満足いく出来だった。

そう言えば算砂殿も取引があるようなことを言っていたぞ。

宗桂殿は石山安兵衛を知らないようだったが」


宗古と俺は算砂の所に言った。

聞きたいことがあったからである。

「算砂様、石山安兵衛を良く知っていたのですか」

「盤を作ってもらっていた。非常に高品質で打ちやすい囲碁盤を作ってくれていた。

それと色々趣向のある盤も作ってくれていた。

月にも石山安兵衛のことを話したことがある」

「趣向のある盤はどういうものだったのですか」

「囲碁や将棋の盤は、石や駒を打った時の音の響き方で対局者が気持ちよく打ったり指したりできるものだ。どうやったら、響きがよく聞こえるかをいくつか趣向を凝らした加工を石山安兵衛はしていた。それは見事だった」

「具体的にはどのような加工をするのですか。」

「最も一般的なのは、盤の裏の真ん中に凹みを作ることだ。これは盤の変形を防ぎやすくなる」

「将棋盤の場合は、凹みを血溜まりというのですね」

「よく知っているな。中国の明の書物に書いてあるという噂だ。

将棋は自分自身で考えて指さねばならない。他人からの助言はルール違反であるが、中国では、第三者が対局中に助言したらその首を切って将棋盤の凹みに飾ったという噂だ。だから凹みを血溜まりというらしい」

「将棋盤の四つの足の材料もくちなしの実に似ていますね。クチナシ 口無しということで助言してはいけないということですね」

「ほう。これは初めて聞いた。そうだったのか。宗桂殿の跡継ぎは聡明だな」

「石山安兵衛はそれ以外にどんな音響を良くする工夫をしていたのですか」

「盤の中に空洞を作るのだ。別の意味ですごい音の響きが出る」

「確かに石山安兵衛が、そのようなからくりの囲碁盤を作ったことがあると言っていました」

「そうか、月が大変その話に興味を示していたことを思い出した。

盤を空洞にしてしまえば、その中に何か隠せますねと言っていたぞ」

「その加工した囲碁盤が先日の遠江分器稲荷神社で見つけました。

空洞の中には手紙が入っていました」

「そうか。石山安兵衛に生前に聞いたのだが、囲碁盤以外にも将棋盤も空洞になったものを作ったと言っていたぞ。それぞれ発注者が違うが同じようなものを注文されたと石山安兵衛は言っていたな。

これから盤をどうしたらいいのか」


堀尾吉晴の家来がやってきた。

「大橋さつき様、小那姫様がお呼びです。何か聞きたいことがあるらしいです」

宗古が険しい眼をしている。

「私も行きます」

「小那姫様がさつき様おひとりでと」


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