↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美処女高校生の天才女流棋士が転生したら戦国時代だった  作者: lavie800


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/71

第三十話 葛の葉

挿絵(By みてみん)

朝食の膳を囲みながら、俺は意を決して尋ねた。この時代に飛ばされて以来、ずっと胸に引っかかっていた疑問――宗古の母の不在についてだ。


「宗桂殿、奥方とはどこで知り合われたのですか?」


俺の問いに、宗桂殿は遠い目をして、飯粒のついた口元をご機嫌そうに緩めた。


「江戸に行商に行っておった十七年ほど前かのう……。知り合いの王子稲荷神社の宮司を訪ねたら、そこに、吸い込まれるような大きな瞳をした、それは美しい巫女がおったのじゃ」


「それから、どうなったの?」 興味津々の宗古が身を乗り出す。

男装の小袖がはだけ、さらしに包まれた瑞々しい胸元が微かに波打つのを俺は隣で感じていた。


「わしの一目惚れよ。だが、最初は冷たい対応でな。ところが、わしが京の商人で、大橋という名の将棋指しだと名乗った途端、彼女の瞳の奥に見たこともない激しい光が宿ったのじゃ」


宗桂殿の語り口が熱を帯びていく。


「彼女は突然、『貴方を支えて名人にさせます。私たちの間に生まれる子も、跡を継ぐ名人に。

たとえ不思議なことが起きても、何も言わず私についてきてくれますか』とわしの手を握ったのじゃ。

わしは天にも登る気持ちで、『わしの妻になってくれ。

不思議でも何でも、お前がおるなら大丈夫だ』と答えたわい。彼女の名は葛の葉。大橋葛の葉となった」


そこから語られた話は、俺たちの想像を絶するものだった。

葛の葉は十六年前にも一度、そして昨年にも「旅」に出たという。だがそれは、単なる移動ではなかった。


「葛の葉が二度目の旅に出る前、わしにこう告げたのじゃ。

『私はこれから、さつき(養子)を連れて旅に出ます。その留守の間に、十五歳の女の子がやってきます。それは十五年前に私が旅先で産み落とした、あなたの子……名は宗古。あなたの跡を継ぐ名人になる娘です。さつきの代わりには、その生まれ変わりの草月(吉川)という男の子がやってくるでしょう』とな」


俺と宗古は、思わず顔を見合わせた。

俺たちが令和の記憶を持ってこの時代に突然現れた時、宗桂殿が驚きもせず受け入れたのは、すべて葛の葉の「予言」があったからなのか。


「母様は……私が男として育てられることも、草月(刑事さん)が一緒に来ることも、全部知っていたの?」


宗古の声が震えている。


宗桂殿は泰然とうなずいた。


「葛の葉は言っておった。『今のままでは家康様は天下を獲れず、貴方も名人になれない。歴史が食い違ってきている。それを修正する者が、じきに現れる』とな。今回の月の小面の一件で家康様に恩を売るのも、すべては歴史修正の糸口だとな」


その夜。 宗桂殿が地響きのような大いびきをかいて眠りについた後、宗古は音もなく俺の布団へと潜り込んできた。


「刑事さん……起きてる?」


背中に、彼女の瑞々しい肌の熱がダイレクトに伝わってくる。

さらしを解いた開放感からか、彼女の柔らかな双丘が俺の背中にぴったりと押し当てられ、動くたびにその弾力が俺の理性を激しく揺さぶる。


「お母さんかもしれない。葛の葉さんは、タイムリープして歴史を書き換えようとしているのよ」


宗古の吐息が首筋にかかる。彼女の指先が、俺の腕をなぞるように這い、その熱っぽい体温が薄い寝間着越しに混じり合う。


「葛の葉って、陰陽師・安倍晴明の母親と同じ名前よね。白狐の化身……。母様は、一体何者なの?」


暗闇の中、宗古は俺の腕の中に深く顔を埋めた。彼女の滑らかな肢体の曲線が俺の体に絡みつき、恥じらいと興奮が混ざり合ったような切ない香りが鼻腔を突く。


俺たちは歴史の「修正者」としてこの地に送られたのか。


月の小面を巡る闇の向こう側に、一人の女の巨大な意思が透けて見え始めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。