末文 御礼とご挨拶
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
いかがでしたでしょうか。
私が愛する少年の、美しくも醜い、強くて脆い、そんな人となりの一端でも伝わったでしょうか。
そうであれば、幸いでございます。
こうして改めて書き記しますと、私が不在の時、彼が職責を果たすべく力を尽くす中で、ひどく苦悩していたことが思い忍ばれます。
きっと、彼の心はその苦悩を受け止めきれなくて、帰宅した私に甘えざるを得なかったのでしょう。
ふふ、思い出すと、とても甘酸っぱい、幸せな気持ちになります。
あの日、あの後、彼は年相応の子供のように、私にたくさん甘えてくれました。
私の胸に顔を埋め、アウラ、ではなく、お姉ちゃん、なんて呼んでくれた時には、あまりの可愛さに身悶えして、全力で抱き締めてしまいました。窒息する、とジタバタもがいていた姿が、おかしくも可愛らしくて、たくさん意地悪してしまいました。
その後、たくさん仕返しをされてしまいましたけどね。
ムキなって私をいじめ返す彼、とっても可愛くて、でも同時に男らしさも感じて。私、朝まで幸せなひと時を満喫させていただきましたわ。
さて、余談ではありますが。
この一件、後日新聞沙汰となりまして、鳥家の権威は一時的に失墜することになります。特にご当主夫妻は、身分差を超えて愛を貫こうとしたお二人への無理解を、多くの方に責められることとなりました。
お二人が早々にご長男に家督を譲られることにしたのは、この一件が引き金でしょう。
まあ、引退して重責から逃れられたと、悠々自適の生活をしておられますけれどね。
また、お二人を題材にした恋物語が、花家ご当主様の手により上梓され、またたくまにベストセラーとなりました。
私も読みましたが、それは美しい恋物語となっておりまして、涙無くしては読めませんでした。もっともわが君は、「さすがにこれは綺麗すぎだろう」なんておっしゃられていましたけれどね。
ふふ、小説ですもの、いいではないですか。
お二人が心中した(ことになっている)湖は、恋人たちの聖地として、多くの花が捧げられるようになりました。近々、鳥家ご三男ガダルさまの発案で、供養のために教堂をお建てになられる予定とか。
そこで結婚式を挙げるカップルとか、きっと大勢いるんでしょうね。
さすがは鳥家のご子息。あの一帯の観光政策は長年の課題でしたから、抜け目のないことです。
さて、よい頃合いですので、一旦ここで筆を置かさせていただきます。
わが君には、「私のことを晒したのだから、アウラのことも晒せ」なんてご命令を受けております。
はて、私のことなんて、知りたい方がいらっしゃるのでしょうか。
根本的なところで疑問がありますが、わが君のご命令です。おこがましくはありますが、まとまりましたら上梓させていただきたいと考えております。
どうぞごゆるりと、お待ちくださいませ。
では、この辺で一度失礼させていただきます。
乱文乱筆、平にご容赦を。




