序文 私のこと
私のことも書くように。
愛する少年から、そんなご命令を下されてしまいました。
とても困りました。
私の何を書けばよいのでしょうか。
彼に出会う前のこと?
あまり覚えていませんから、書きようがありません。
彼に出会った頃のこと?
一年近く牢屋の中でしたから、書くことがありません。
彼とともに世継ぎ争いを戦っていた頃のこと?
もろもろの法律に引っかかることばかりです。おいそれとは書けません。
彼が当主になり、私が正式に婚約者になってからのこと?
受験勉強か、彼とイチャイチャするかしかしてませんね。書くほどのことはありません。
あら、困りました。
書くことがありません。
仕方ありません、それではみなさま、またの機会にということで。
ヒッ!?
か、書きます、書きますから、わが君!
それだけは、それだけはご勘弁を!
はぁ……びっくりしました。ずっと見ておいでだったのですね。
ふふ、そうですか、私、彼に監視されていましたか。
ふふ、ふふふ……なんて幸せなんでしょう。
さて。
仕方ありません、なんとかひねり出すといたしましょう。
ああ、そうです。
大学でできた友人とのことを書きましょう。
友人の名は、ニンリル。
とても頭がよくて、まだ十四歳なのに大学入学が認められた、天才少女です。
ええもう、補欠合格の私とは、雲泥の差です。
ボーイッシュで快活な子で、大学ではちょっとしたアイドルです。それはもう年上のお姉さま方にかわいがられていまして、密かにファンクラブも作られているという噂も耳にします。
私は、入学早々の研修合宿で同室になったご縁で仲良くなり、親しくさせていただいております。
そんな彼女が、私の本性を知ってなお、友達でいたいと宣言してくださった、そんなエピソードでございます。




