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2話 執事と実力の片鱗

はい、あおがらすです。

前話でレインの外見的特徴を入れてなかったのでここで説明します!

黒目黒髪です。では、どうぞ

 すぅ…すぅ…という、一定のリズムの奏でている少女を横に、レインの意識は覚醒した。

 見知らぬ天井、ふかふかなベッド、窓から除くは豊かな木々。そして───


「すぅ……ん…?」


 眠たそうに目を擦りながら少女は体を起こす。

 そしてレインの姿を見るやいなや、


「あっ!!やっと起きたのね!」


 開口して一番の声がレインの耳に響く。

 レインは苦しそうに耳を塞ぎながら言葉を発する。


「ここ…は?君は誰…なんだい?…」

「ねえ!あなたはだあれ?名前を教えてちょうだい!」


 レインの言うことを聞きもせず、自分の意見を通そうとする少女。

 そこで少女はハッとする。


「そっか…!名前を聞く時は、まず自分から名乗らないとね!お父様が言ってたもの!」


 スックと立ち上がって少女は言う。さらに腰に手を当て、ニンマリとした笑顔でレインを見る。


「私はシスティナ、システィナ=レイフォールド。それで、あなたの名前は?」


 手を差し出しながら少女──システィナは言う。澄みきった水色の瞳が輝き、両サイドに短く結われた銀髪が揺れる。

 レインは無意識ながらに、彼女の手に己が手を乗せ呟いた。


「僕は……レイン…」


 それはか細い声だったが、システィナには充分届いた。


「レインね。今後とも、末永くよろしくするわ!」


 そう言いつつシスティナは、レインの手をグイッと引きながら、彼を立たせる。

 レインは少し痛みを覚えつつ、システィナに返事をする。


「少し何を言ってるのか分からないけど、よろしくね、システィナ……さん」


 彼はいつぶりか分からない、小さな、しかし確かな笑みを零した。


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥



 システィナから「まぁいいわ、お風呂に入りなさい。これ、あなたの服よ」と渡されたレインは、自分の姿を見やる。全身ボロボロだ。彼女の厚意を無下にすることは出来ないと、風呂に入り、念入りに体を洗った後に風呂を出た。

 鏡に映る黒髪と黒い瞳は元のツヤを取り戻した。レインは服を手に取る。とそこで、


「ねえ!入ってもいいかしら?」


 そんな声が聞こえた。と同時にドアが開き始める。焦ったレインはドアを体で押さえつけた。


「もう、恥ずかしがらなくてもいいのに…」


 外から拗ねた声が聞こえた。

 それから2人は他愛のない会話を始めた。


「ねえ、あなた歳はいくつ?」

「僕?僕は10歳だよ」

「へぇ!私も10歳よ!同い年ね!」


 なんて会話を続けていると、システィナが問いかける。


「レインは何で森の中にいたの?」


 レインの着替えている手が思わず止まる。衣擦れの音が止まった事がわかり、システィナは狼狽えながら必死に言葉を紡ぐ。


「ご、ごめんなさい…。その、私、無遠慮に…」

「………いや、いいんだ。僕があそこに居たのは──」


 レインは余すことなく、彼女に全てを告げた。理由なんてない。強いて言うなら、楽になりたかった。

 途中から頬に滴が伝うのを感じながら、レインは言葉を発する。


「そう…,そんなことが……」


 全てを聴き終わったシスティナが呟いた。

 レインは全てを告げ終え、涙を拭い、手を動かし始めた。


「あら、いいじゃない」


 服を着終わったレインは部屋から出た。そこで待ち受けていたシスティナが放つ。


「ふぅーん…レインって綺麗な髪をしているのね」

「あ、ありがと…」


 至近距離から見つめられレインは思わずたじろいでしまう。そんなレインを横目にシスティナは歩き始めた。


「さ、こっちよ。着いてきて」

「え、あ、待って…」


 レインは彼女の後ろを追う。と同時に家を見回し始めた。

 綺麗な絨毯や照明、塵一つもない純白の廊下を歩く。

 すると、システィナが口を開く。


「いい?ここは、メルディア王国と言って……」


 システィナの言葉を耳に通しながら、考える。


(もしかして、システィナって貴族かなにかなのかな…)


 そんな事を考えていると、システィナの足が止まる。つられるように、レインの足も止まる。目の前には扉。システィナが扉を叩く。


「お父様、入るわね!」


 勢いよく開けた扉の先には、一人の男性がいた。

 色の深い茶髪に、蒼い瞳を持つその男は、やれやれと言った。


「システィ、またお前は返事も聞かないで…」

「あーあー何も聞こえなーい」


 目の前に広がるやり取りにレインは困惑する。すると、システィナに「お父様」と呼ばれた男は、レインを見やる。


「君は…」


 システィナがレインの前に来て、


「レインよ!今日から私の執事のね!」

「おお、この子がレイン君か!初めまして、私はシスティナの父、アルナ=レイフォールドだ。一応、伯爵であるぞ、はっはっはっ!」


 は?

 この言葉しかレインの胸の内を語れないだろう。

 レインは驚きを隠せないまま口を開いた。


「あの!それは、一体どういう…?」


 あたふたしているレインを見て、システィナは、


「だから言ったでしょ?今後とも末永くよろしくって!」

「あーなるほどね……ってそうじゃなくて!!」


 一瞬納得しかけたレインは、声を大きくする。


「執事ってどういうこと?!しかも君のって!?」

「もう、うるさいわね」

「いや、うるさいとかじゃなくて!」


 レインとシスティナのやり取りに綻ぶアルナ。


「娘はもう十歳。そろそろ執事がつく歳頃なのだよ。」

「だからってなんで僕…」

「それは私が説明するわ!」


 綺麗な銀髪を揺らしながら、割って入ってきたのはシスティナ本人である。


「レインを執事にしたのは、ズバリ……!」

「ズバリ…?」


 レインに緊張が走る。

 満を持してシスティナが口を開く。


「ズバリ!何となくよ!!」

「えー…何となくで執事になったの……?」


 満面の笑みを浮かべているシスティナに、レインは驚きを覚えるどころか、通り越して呆れてくる。


「すまんな、レイン君。この子は一度こうなると止められなくてね」

「そんな事だから、あなたは私の執事よ!」


 未だに納得出来ない部分はあるが、相手は命の恩人。レインは腹を括った。


「はあ…分かりましたよ…執事、なります……」

「分かってくれたのね!これからよろしく、私のレイン!」


 華やかな笑顔を浮かべるシスティナに対し、レインはため息をつくしか無かった。


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥


「はあ、どうしてこうなった……」


 レインは今、アルナにあてがわれた教育係と相対している。何故こうなったのか。


 屋敷に訪れて二週間経った頃レインは料理の修行中だった。なんでも、執事たるものなんでもござれが屋敷では当たり前らしく、掃除、洗濯、料理は完璧に出来なくてはならなかった。

 レインは掃除、洗濯を二日でマスターした。料理も吸収が早く、屋敷のシェフ顔負けの品を出せるようになっていた。


 そこでアルナがレインに言う。


「レイン君、君の成長ぶりには目を見張るものがある。是非精進してくれたまえ」

「ありがとうございます、旦那様」


 恭しく礼をするレインの姿は様になっている。

 アルナは笑みを零しながらさらに続ける。


「うむ、だがまだひとつ足りない」

「?それは、一体……」


 完璧以上に完璧に出来ているレインに何が足りていないのか。考え込むレインに、


「それは、戦闘術。己が主を守るための術だよ。」


 ニヒルな笑みを浮かべながらアルナは告げた。



 そんなこんなで今に至る訳だが…


「分かる、分かるけど……何でこんなにいるの!?」


 そう、相手が大人数だったのだ。何とか捌いていくがレインは人間、死角からの攻撃を防げるわけがなく。


「ガッ………ッッ!!」


 的確な一撃を頭に叩き込まれた。薄れ行く意識の中で、


 “すべて………の……し………すべ…………めつ……”


 誰とも知らない、しかし何処か懐かしい声を感じ、意識を手放す。






「ん……ぅ……」


 目をうっすらと開きながら体を起こすレイン。

 横からはすぅすぅという子気味いいリズムが。


「あ…お嬢様……」


 彼女の幸せそうな寝顔を見て、彼はまた自らの瞼を閉じた。


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥



「ふむ、凄まじいな」

「ええ、全くです」


 二人の男性が短い会話を交わした。片方の人物は屋敷の主であるアルナ。もう片方は、髪を刈り上げた、屈強な男。だがしかし、顔は暗がりでよく見えない。

 そんな二人の目の前には全壊しかけた中庭が。さらに横たわる大人達。



「どうだ、彼は?」


 アルナが問いかける。


「はい。組手を行い始めた時は余裕を持っていた彼を見る限り、彼には武の才があるようです。」


 そう男が告げると、アルナは嬉しそうな声を上げる。


「そうかそうか、それは良い。して、途中からのあれは何なのだ。」


 一転して神妙な顔を浮かべるアルナ。


「頭に一撃を貰ってからの動きが凄まじかったぞ。視認できんほどにな。お前には見えたか?」

「ええ、辛うじて、ですが」

「お前ほどでもか……いや、お前だからこそ見えたのか…」


 二人して苦虫を潰したような顔をする。アルナはシスティナの言ったことを思い出していた。


(あれで加護なしか……いやだがしかし、あの動きは…)


 アルナは違和感を覚えるが、振り切ろうと口を開く。


「彼なら…彼ならばもしや……システィナ様を……」


 と、そこで男が問いかける。


「して、明日からの彼の教育係はどう到しましょう?」


 アルナは男へと体を向け言い放つ。


「彼の教育係はお前に任せる。頼んだぞ───」


 アルナは一息付くと、数瞬遅れて男は一歩前へ出る。

 男の顔が光に照らされハッキリと見えるようになる。

 ツリ目で口を結んでいるその様は、威厳に満ち溢れている。

 そんな男に向かってもアルナは放つ。


「我らがメルディア王国近衛兵団団長、バスカー=アルヒムよ!」


 男───バスカーは表情ひとつ崩さず跪いた。

如何でしたでしょうか?物語書くのって難しいですね。それではまた次話でお会いしましょう!

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