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1話 絶望と出会い

あおがらすと申します。

拙い文ではございますが少々お付き合い下さいませ。

 "彼の者が魔王を倒した"


  その事実が大陸、世界へ伝わる前に彼の者は己が育った故郷へと辿り着いた。


 “絶句”


  この言葉が彼の者の心中を表すのに最適なものだろう。

  家は壊れ、草木は燃え、人は無惨な姿で横たわっている。辺りを見回せど同じ光景しか映らない。

  人が見えた。彼の者は大急ぎで駆けつける。見えたのは剣で貫かれた旧友と───その剣を持つ王国兵士だった。

  後ろには国王の姿が。

  すぐさま彼の者は捕らわれる。もはや抵抗する気も起きないのか、だらんと力無く頭を垂れる。


「ふんっ。やはり生きておったか。この忌々しい平民が!」


  彼の者が捕らわれるやいなや、国王は嘲笑を浮かべ言い放った。

  何の為にここまでしたと思っている。何の為に多くの人を犠牲にしたと思っているッ!!彼の心に渦巻くドス黒い感情。それは、憎悪。そして、悲しみ。

  捕らわれながら彼は嘆く。それに呼応するかの如く、空が嘶き咆哮する。

  彼の者の目には滴が浮かぶ。またも反応したのか、ポツリポツリと、雨が勢いを増しながら降り注ぐ。

  そして彼の者は目を見開き、天へ向かって叫ぶ。


 瞬間──




「──ッ!」


  窓から覗けば、雲一つない青空がそこにはある。耳をすませば、小鳥のさえずりでさえ、耳元で囁かれたかのように、ハッキリと聞こえる静謐がそこにあった。

  そんな、誰がどう見ても最高の環境と言えるだろう場にいる青年は、尋常ではない汗を浮かべて飛び起きた。


「はぁ…はぁ…」


  荒い息を整えながら、彼は汗を拭う。目を覆う形で手をかざし、呟く。


「はぁ…。また…この夢……」


  彼が呟いた数秒後、ドタドタと忙しく足音を鳴らし部屋の前で音が止まる。この部屋の静けさと、青年の激しく脈打つ鼓動の音を、バンッという音と共に現れた少女に青年は笑みを零す。そして言う。


「おはようございます。お嬢様」


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥


  遡ること15年前。ある村に1人の男児が生まれた。

  いや、拾われたと言った方がいいのか。夫婦に拾われた男児は「レイン」と、名付けられた。レインはスクスクと育った。容姿端麗とも言える美少年へと。彼はある日、一冊の本を読む。

 

「魔法…そして《アルカナ》か……」


  この世界、名を「バース」という。バースでは自らに宿る魔力を媒体に《魔法》という現象を引き起こすことができる。試しに使おうとしたが反応がない。レインは少し不満気な顔をして本に目を通す。


「魔法には火、水、風、土の4属性がある…と。僕はどの属性かなぁ」


  レインは目を輝かせながら本を読み続ける。バースには20の《アルカナ》が存在し、生物には皆《アルカナの加護》が付与されている。だが加護がハッキリと付与されているのは人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、そして魔族らしい。


「僕の加護はどれだろう…。カッコイイのがいいなぁ」


  そんな淡い期待を抱きつつ、彼は本を閉じた。


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥


  レインが村で育ち始めて10年が経った。

  いつもはやや遅く起きるレインは、もう起きていた。


「今日は神殿で、魔法の適正と加護の種類がわかるんだ!もう待てないよ!」




 ───神殿にて


「はぇ……?」

  神殿内で幼い声が響いた。

  結果としてレインに魔法適性はなかった。その事実を知らされて黙っていられる程、レインは大人ではなかった。


「何で……?何で、何でなんで?!」


  それは年相応の反応だった。彼の親達は、悲しみを浮かべてじっと、口を結んでいる。

  だがここでレインは思い出す。


「そうだ…。アルカナ…アルカナの加護は!?」

  見えたのは一筋の光。手を伸ばせば、まだとど──


「残念ながら、この子は加護持ちではありません。無加護ですね」


  珍しい、と言いながら頬をかく神父。


「加護が…無い……?」


  そうレインは呟いた。

  この日から彼の世界は色褪せていく。


 ◤◢◣◥◤◢◣◥◤◢◣◥


  村に帰ってからは散々な日々を過ごした。

 周りの同年代からの呆れや嘲笑、罵倒が続いた。一週間後、レインの両親はこの世を去った。“不慮の事故”で死んでしまった両親を、レインは一人で供養した。

  親が他界したのを機にレインは村から追放された。村の人々は誰一人レインを慮ることは無かった。


  そうして一人、レインは森を彷徨う。もう何処にいるのかも分からない。食べるものもない。木の根につまづく。


(もういっそ…このまま……)


  目を閉じてゆっくりになろう。怖いことなんて無い。向こうで父さん、母さんと一緒に仲良く暮らそう。

  その思いはついぞ届くことは無かった。


「ガルルゥゥ…」


(ッ!!ま、魔物!?)


  狼型の魔物がレインを見下ろしていた。レインは今まで考えていた事を振り切って、走った。



  もうどのくらい走ったのか覚えていない。息の続く限り、足が壊れない限り走った。でも、もう限界。ふらっと倒れ込むレインは空を仰いだ。


(綺麗な空だな…)


  目を閉じようか。そう考えていたら───


「あなた、だあれ?」


  見知らぬ少女と目が合う。

  だが、もう関係ない。レインは自分の意識を手放した。



 彼女と出会い、ようやくレインの人生は、動き始める。

如何でしたでしょうか?気に入って頂けると嬉しいです!

ではまた次話でお会いしましょう!!

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