1話 絶望と出会い
あおがらすと申します。
拙い文ではございますが少々お付き合い下さいませ。
"彼の者が魔王を倒した"
その事実が大陸、世界へ伝わる前に彼の者は己が育った故郷へと辿り着いた。
“絶句”
この言葉が彼の者の心中を表すのに最適なものだろう。
家は壊れ、草木は燃え、人は無惨な姿で横たわっている。辺りを見回せど同じ光景しか映らない。
人が見えた。彼の者は大急ぎで駆けつける。見えたのは剣で貫かれた旧友と───その剣を持つ王国兵士だった。
後ろには国王の姿が。
すぐさま彼の者は捕らわれる。もはや抵抗する気も起きないのか、だらんと力無く頭を垂れる。
「ふんっ。やはり生きておったか。この忌々しい平民が!」
彼の者が捕らわれるやいなや、国王は嘲笑を浮かべ言い放った。
何の為にここまでしたと思っている。何の為に多くの人を犠牲にしたと思っているッ!!彼の心に渦巻くドス黒い感情。それは、憎悪。そして、悲しみ。
捕らわれながら彼は嘆く。それに呼応するかの如く、空が嘶き咆哮する。
彼の者の目には滴が浮かぶ。またも反応したのか、ポツリポツリと、雨が勢いを増しながら降り注ぐ。
そして彼の者は目を見開き、天へ向かって叫ぶ。
瞬間──
「──ッ!」
窓から覗けば、雲一つない青空がそこにはある。耳をすませば、小鳥のさえずりでさえ、耳元で囁かれたかのように、ハッキリと聞こえる静謐がそこにあった。
そんな、誰がどう見ても最高の環境と言えるだろう場にいる青年は、尋常ではない汗を浮かべて飛び起きた。
「はぁ…はぁ…」
荒い息を整えながら、彼は汗を拭う。目を覆う形で手をかざし、呟く。
「はぁ…。また…この夢……」
彼が呟いた数秒後、ドタドタと忙しく足音を鳴らし部屋の前で音が止まる。この部屋の静けさと、青年の激しく脈打つ鼓動の音を、バンッという音と共に現れた少女に青年は笑みを零す。そして言う。
「おはようございます。お嬢様」
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遡ること15年前。ある村に1人の男児が生まれた。
いや、拾われたと言った方がいいのか。夫婦に拾われた男児は「レイン」と、名付けられた。レインはスクスクと育った。容姿端麗とも言える美少年へと。彼はある日、一冊の本を読む。
「魔法…そして《アルカナ》か……」
この世界、名を「バース」という。バースでは自らに宿る魔力を媒体に《魔法》という現象を引き起こすことができる。試しに使おうとしたが反応がない。レインは少し不満気な顔をして本に目を通す。
「魔法には火、水、風、土の4属性がある…と。僕はどの属性かなぁ」
レインは目を輝かせながら本を読み続ける。バースには20の《アルカナ》が存在し、生物には皆《アルカナの加護》が付与されている。だが加護がハッキリと付与されているのは人族、エルフ族、ドワーフ族、獣人族、そして魔族らしい。
「僕の加護はどれだろう…。カッコイイのがいいなぁ」
そんな淡い期待を抱きつつ、彼は本を閉じた。
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レインが村で育ち始めて10年が経った。
いつもはやや遅く起きるレインは、もう起きていた。
「今日は神殿で、魔法の適正と加護の種類がわかるんだ!もう待てないよ!」
───神殿にて
「はぇ……?」
神殿内で幼い声が響いた。
結果としてレインに魔法適性はなかった。その事実を知らされて黙っていられる程、レインは大人ではなかった。
「何で……?何で、何でなんで?!」
それは年相応の反応だった。彼の親達は、悲しみを浮かべてじっと、口を結んでいる。
だがここでレインは思い出す。
「そうだ…。アルカナ…アルカナの加護は!?」
見えたのは一筋の光。手を伸ばせば、まだとど──
「残念ながら、この子は加護持ちではありません。無加護ですね」
珍しい、と言いながら頬をかく神父。
「加護が…無い……?」
そうレインは呟いた。
この日から彼の世界は色褪せていく。
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村に帰ってからは散々な日々を過ごした。
周りの同年代からの呆れや嘲笑、罵倒が続いた。一週間後、レインの両親はこの世を去った。“不慮の事故”で死んでしまった両親を、レインは一人で供養した。
親が他界したのを機にレインは村から追放された。村の人々は誰一人レインを慮ることは無かった。
そうして一人、レインは森を彷徨う。もう何処にいるのかも分からない。食べるものもない。木の根につまづく。
(もういっそ…このまま……)
目を閉じてゆっくりになろう。怖いことなんて無い。向こうで父さん、母さんと一緒に仲良く暮らそう。
その思いはついぞ届くことは無かった。
「ガルルゥゥ…」
(ッ!!ま、魔物!?)
狼型の魔物がレインを見下ろしていた。レインは今まで考えていた事を振り切って、走った。
もうどのくらい走ったのか覚えていない。息の続く限り、足が壊れない限り走った。でも、もう限界。ふらっと倒れ込むレインは空を仰いだ。
(綺麗な空だな…)
目を閉じようか。そう考えていたら───
「あなた、だあれ?」
見知らぬ少女と目が合う。
だが、もう関係ない。レインは自分の意識を手放した。
彼女と出会い、ようやくレインの人生は、動き始める。
如何でしたでしょうか?気に入って頂けると嬉しいです!
ではまた次話でお会いしましょう!!




