1話 幽霊の噂
ジャンルとしては現実世界恋愛に近いのですが、幽霊がヒロインと言う時点で現実的ではないので、コメディ枠にしております。
内容はほぼラブコメです。
「ああ。平和だ」
俺の名前は柊槐。
幸せになってほしいと親がつけた名前だが、説明が毎回面倒くさい。普通に幸せの幸の字とかが入ってる名前でよかっただろう。DQNネームみたいになってるしと常々思う。
まぁちょっと変な名前で不便はあるが、苗字の柊は普通の名前だし、名前で呼ばれるような友人がいないので大きな問題は無いので妥協はしている。
そして俺が目を覚ましたのは、俺が通う橘高校の男子寮。そして部屋には俺が1人。
男子寮は通常2人で1部屋なのだが、俺の学年である2年生は偶然男子の入寮希望者が奇数で、1、3年生は偶数なので、俺だけが寮で1人部屋なのである。どういう経緯で俺が1人なのかは知らないが、俺は1人部屋に大変満足している。別料金を取られるわけでもないし。
気を使わずに1人でのんびりできる朝はまさに平和の一言。
「おーっす! 柊ー」
だが、そんな朝を妨害するやかましい声が俺の耳に届いた。
「朝っぱらからうるさいぞ。梧」
俺の部屋に大声を出して入ってきたのは、榛梧
基本的に喜怒哀楽の喜と楽で生きている人間で、人当たりも良くて友人も多い。
野球部のレギュラーも張っていて、それでいて勉強もできる。まさに高校生活を満喫しているとしか言えない。
俺は特定の部活にも入っていないし、突出した何かもない。
だが、こいつとは小学校時代からの付き合いで、梧が俺に構ってくるので、近くにいる俺も存在感を消すことができない。
まぁそのおかげで、梧を介していたり、梧がいなくても、俺に話しかけてくれる友人がいたりと、根暗なのに、ぼっち生活にならずに済んでいる。俺としては、もう少し静かな学園生活を望んでいるのだが、それは高望みというものだろう。
「朝はやいって言っても、今日は日曜日だろ? 日曜日にちゃんと活動しておかないと、月曜日に学校行くのがしんどくなるぞ!」
「すげぇ体育会系な考え方だな」
あながち否定しづらいのも面倒くさい。
「というわけで、一緒に心霊スポット行こうぜ!」
「なんで毎回そうなるんだ!?」
ミスター陽キャラとしか思えないこいつの趣味の1つが、幽霊好きということである。
小学校の肝試しからはじまり、行動範囲が大きくなった中学校からは、実際に心霊スポットへ行ってみて、写真を撮ってみたりとエスカレートしはじめた。
これが原因で、補導されること、教師、両親に怒られることこの上なく、更に偶然かオカルトか分からないが、実際現場に行った後に、その行った人間の身の回りで不幸が連発したりした。
そんなことを繰り返しているうちに、梧の幽霊好きに付き合う友人はどんどん減っていった。
普通の友人としての付き合いは残してくれていたのは、語が親に止められた相手は誘ったりしなかったのもあるし、元々の憎めないキャラもあったのだろう。
そして、高校生になると、余計にこの趣味に付き合う友人は減った。
おそらく、俺とこいつの絡みがなくならないのは、俺が数少ないこういうのに付き合う友人だからだろう。
「まぁいいじゃないか。平凡な日常に、恐怖という名のスパイスを加えてさ」
「余計な味付けは蛇足になるぞ」
「あわよくば、幽霊と仲良くなれるかもしれんし」
「なってどうすんだよ」
「それならめちゃくちゃ面白いじゃないか」
「面白くねぇよ。ずっと後ろに付きまとわれるかもしれんだろうが」
「それでどうすんだ? 行くのか、レッツゴーか? 参加か?」
「選択肢がないだろうが。まぁ行くけど」
「さすが親友。心の友よ」
「はぁ……。で、今日は遠出はできないだろう? どうすんだ?」
「実はな。学校の反対側にあるデパートあるだろ?」
「あるな」
「あそこの一番大きな交差点の車道に、綺麗な女性の幽霊が出るって噂があるんだ」
「あんなとこか? 確かに夜の時間帯は車もあんまり通らなくて、人通りも少ないが」
デパート前の交差点は、周りに住宅がほとんどなく、19時くらいまでは割りと人通りがあるのだが、デパートの閉店後は、急激に人が少なくなって、耳がキーンとなるほど静かになる。何度かその時間帯に出歩いたことはあるが、確かにまぁまぁ雰囲気はある。
「あそこなら近いし、1回目で見れなくても何度か実にいけるし、お手軽だろ?」
「まぁ、いつものお前よりは近いな」
こいつと付き合うと、土曜日の夜から日曜日の昼くらいまでつぶれることは良くあるし、大型連休もなくなることも結構あった。この高校の寮が、外出届さえ出しておけば、門限がゆるいのでかなり高校生になってからは頻度が上がり、毎回付き合うと大変である。
「じゃあ時間は21時な。今日は軽装でいいし、現地集合でもいいだろ」
「ああ、じゃあ夜頼むぜ。頼むから1人にしないでくれよ」
俺は梧に念入りに言われる。
梧は幽霊を信じているだけに、幽霊に対して、結構ビビッているのである。1人でそういうところに行くことはほぼない。なんでも呪われたり襲われたりしても、2人ならなんとかなるとかいう意見を持っているようだ。
話のきりがいいところで終わるようにしますので、1話辺りの文字数が安定しない場合がございます。