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I,Robot  作者: M's Works
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トッカ


 今日も空は青い。


 僕がこうして活動を始めてから二〇年が過ぎようとしている。

 一〇年前から精力的に取り組んできた緑化計画も実を結び、あの頃のように人工物で埋め尽くされた街は姿を消した。

 木が街を守るように根付き、至る所に花壇が設置され、僕ら有機型アンドロイドにとって過ごしやすい環境になったように思う。

 変わったのは街だけではない。

 気付けば街で生活するアンドロイドの半数が有機型アンドロイドに置き換わっていて、今後もその割合を増やしていく予定になっているらしい。

 もしかしたら僕のデータが役に立ったのかもしれないと思うと、ちょっと嬉しいような気がする。


 でも、変わらない場所もある。

 あの頃から好きだった高台は、今も当時のままで残っている。

 街の再開発は中心部から順に行われているから、この辺りに手が入るのはもっと後になるだろう。

 僕としてはずっとそのままにしておきたいんだけど、多分そういうわけにもいかないはずだ。

 今日を逃すと二度と見れなくなるかもしれない。

 だから、今日は無理を言って一人で訪れた。


 明日には僕が設計、開発した新型スペースシップで空に上がる。

 今までは見上げることしかできなかったが、今度は宇宙から地球の空を眺めるのだ。

 これまでにも宇宙に上がる方法はいくつかあったけど、僕のような有機型アンドロイドが安全に行ける方法はなく、自分で作り上げるために研究者を志した。

 結局一〇年の年月をかけて、僕の夢はようやく完成することができた。

 最終的には何百体ものアンドロイドを乗せて、もっと自由に宇宙旅行ができるようになればいいと思う。


 ズボンのポケットで携帯端末が震えているのを感じ、取り出して通話ボタンを押す。

 スピーカーから流れ出たのはよく知る彼女の声だった。


『もしかしてまたあの高台に行ってたんですか?』


「うん、これで最後かもしれないから」


『……そろそろ時間ですから戻ってきてくださいね』


「わかってるよ。僕ももう子供じゃないんだから」


『寂しくて泣いていたのではないですか?』


「僕があれ以来泣いてないのは知ってるだろ。今から戻るよ」


『はい。お待ちしています』


 端末を閉じて高台を後にする。

 適度に急ぐ脚でぼんやりと考えを巡らせた。

 かつて彼女とした約束を果たすのはいつになるのだろうか。

 僕は、僕たちが持つ感情というものを未だに解明することはできないでいる。

 それ以外にもわからないことはたくさんあるし、もしかしたら知らなくてもいいことなのかもしれない。

 それでも僕たちは進んでいく。

 僕たちロボットが望む未来があると信じて。


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