え、うそん
脳内にお花畑を構築したヒロインが爆誕してから半年、ヒロインが学園に入学する時期がやってきた。
入学式当日生徒会役員として受け付けの手伝いをしながらマユリカはそわそわしていた。ここならばヒロインを見落とす事もないだろうと率先して引き受けたのだ。
現在マユリカは2年生。1つ下であるヒロインとは学年が違う為接点は持てない。それなのにゲームでは要所要所でヒロインの持ち物を壊し水浸しにし、あまつさえ階段から突き落とす。どれだけゲームの悪役令嬢はアグレッシブなんだ。私には無理ゲー、そんなヒマがあるならのんびり過ごしたいとマユリカは思っている。それに王子が常時べったりなのでヒロインに意地悪は不可能だろう。
「どうやら名簿にある生徒は全員来たみたいだね」
「え?」
祝辞があるのにマユリカから一切離れようとしなかった王子に声をかけられ、ぐるぐる考えているうちに受け付けが終わった事に気づく。そしてヒロインを見逃した事にちょっと落ち込むが今日は入学初日、逆ハーレムルートを狙うなら登校時や食堂を狙って突撃してくるに違いない。だからすぐに会えるだろうとのんきにかまえる事に。
すぐに会えるーーーーー
すぐに会えーーーーー
すぐーーーーー
会えーーーーー
あ?
いや、全く会えないし!え?花畑が枯れた!?
いやいやいや、あんだけヒャッハー全開な言動の報告が上がって来てたのに、急に花畑が枯れるはすがない!どうしたヒロイン!
王族専用のサロンで昼食を戴くのをマユリカが無理を言って食堂を利用して早1か月、ヒロインのヒの字も見あたらず。悶々としつつもおかん王子からケーキを給餌されながらモグモグと食す。周りの生徒がぎょっとしたり二度見三度見するも、数年前からこのスタイルなので気にしない。そして当たり前のように食べるマユリカに王子はご満悦である。
「そういえば今年入る予定だった令嬢が1人試験に落ちて来年に回されたらしいよ」
「へ?」
淑女らしからぬ抜けた声を出したのは仕方ない。貴族だからと言って一定の学力と子息令嬢教育を成されていない生徒は進級出来ない。入学もしかり。
しかし階級は違えど勉強や子息令嬢教育は幼い頃からやっているので、入学出来ないという事はまずない。
「何ででしょうか?」
「どうやらその令嬢は半年前に貴族になったばかりの庶子らしいのだが、令嬢教育はもちろん試験科目全て酷かったらしい。まあ一からの勉強だろうから半年では間に合わなかったって事かな」
「そうなのですね。ちなみにどちらの貴族でしょうか?」
「男爵家と聞いているよ」
ヒロインーーーーー!!これヒロインの事だよね!?令嬢教育はまだしも、ガッツリ乙女ゲームの記憶があるならある程度は歴史背景とか知ってるんじゃないの!?あれか、攻略だけして説明書や設定資料集とか読み込まないライトユーザーか!?でも入学試験の算術は、前世で言う中1程度のレベルなんだけど。逆ハーレムルートヒャッハーしているって事はある程度年齢いってるよね?ヤベェ、ヤベェよヒロイン。
「来年は受かるといいですね」
「そうだね、1年あるのだから大丈夫だろう」
そう王子であるサリエルが言うも、一抹の不安が拭いきれないマユリカだった。




