65.ダンジョン(6)
新婚旅行という慣習はないらしい。
シガンは嫁ふたりと交互にイチャつきながら恋人たちの相手を適度にこなすという身体がいくつあっても足りない生活を送っていた。
アドリアンロット伯爵とザールムント子爵から連名で元気薬と強壮剤が送られてきていなければ、腎虚で死んでいたかも知れないただれた生活だ。
アデルは初夜に処女を散らしたばかりなのに、子作りに積極的だった。
父親からの命令もあるだろうが、単純にアデルは快楽主義者なのだろう。
裸のままベッドで過ごすのが平気なタチらしい。
ちなみにベルとターニアは神殿で避妊の加護を受けているため、妊娠はしない。
生理も軽くなるため、冒険者生活に影響がでない優れものらしい。
シガンは低用量ピルのようなものだと思っているが、薬と加護の違いはあれど大体その理解であっている、とガールに言われた。
さてアデルは日中、ぼんやりとしているか、本を読むか、以外のことをしない。
貴族の娘として教養を身につけたりもしているはずだが、それらをかなぐり捨てて読書の趣味に邁進している。
嫁入り道具といいつつ本棚にギッシリ詰まった蔵書を持ち込むほどだった。
しかしシガンの屋敷には本はほとんどない。
個人の持ち物くらいだ。
だからアデルはまず第一夫人として書庫の設置を決めた。
何が第一夫人としてなのかはシガンにも理解ができなかったが、本さえあれば静かにしていてくれるので、シガンは屋敷の一室を書庫に改装した。
……そんな新婚生活も1ヶ月もすれば日常に戻る。
シガンたちはダンジョンの第五階層のマッピングに出かけることにした。
「……というわけで、ダンジョンに泊まるから今日は帰らない。アデルは留守番していてくれ」
「は~い。いってらっしゃいませ旦那様」
物分りの良い第一夫人である。
シガンはアデルに行ってきますのキスをすると、ベルたちの元へ向かう。
「久々だから第二階層で身体を温めてから第三階層に挑みたいな」
「シガン様はまたミノタウロスを倒すつもりですか?」
「まあな。あれはいい訓練になる。なまっていなければ勝てるし、なまっていれば多少の怪我で倒せる見込みだ」
「シガンさま、怪我しちゃ駄目だよ?」
「そうよシガン。ミノタウロスの怪力で怪我などしたら、即死するわ」
「うーん、そうかなあ。まあお前らもいるし、なんとかなるさ」
楽観的なのは言霊があるからだ。
それにあまり使っていないが、影の中にシャドウストーカーもいる。
前回のミノタウロス戦には参加させなかったガールを動員すれば瞬殺も可能だとシガンは思っている。
実際、ガールがいればミノタウロスは撃破したも同然だった。




