63.結婚式(3)
「ちゃんと挨拶するのは初めてだな。はじめまして、俺がスカジャンのシガンだ」
「アデル・アドリアンロットよ。アデルと呼んでくださいまし、旦那様」
「あ、ああ。アデル。今日が初対面だけど大丈夫か? 昨日はよく眠れたか?」
「目のクマのことですか? メイドたちが苦心して化粧で誤魔化そうとしていましたけど……気にしないでください。夜ふかしはいつものことなんです」
「へえ。夜ふかしして、何をしているんだ?」
「私、読書が趣味なんです。乱読で、屋敷にある本をほぼ全て読み切っています。だから私、夫には生活と本を買うための財力しか求めていません。あ、でも子供は必須だと父に命じられていますから、今晩からよろしくお願いします」
「お、おう……」
新婚初夜は、アデルと過ごすことになっていた。
その次の夜がベルとの初夜になる。
ベルとは散々、婚前交渉をしているから今更だが。
アデルと話していると、ベルがアティとターニアとガールを連れてやってきた。
「初めましてアデル様。私はベルベット・ザールムントです」
「初めまして。気軽にアデルと呼び捨ててください。立場上は第一夫人ですが、あなたの方が愛を育んだ期間は長いのでしょう? 旦那様のこと、いろいろと教えて下さいね」
「え? ええ……」
ベルとしてはこの場で宣戦布告する気でやって来ていたのだが、肩透かしを食らった形になった。
アティがシガンの肩をポコポコ殴る。
「もう! アティが二番目だったのにシガンさまの馬鹿! 次はアティの番だからね!?」
「シガン、私との結婚もアティと同時でお願いね」年齢が最年長なのに結婚の順序が最後であるターニアが真顔で言った。
「わ、分かった。アティが14歳になったらアティとターニアと結婚しよう」
シガンは「本当ならばせめて16歳くらいまで先送りにしたかった」と内心では思っていたが、口が裂けても言えない状況である。
ガールは「随分と若い花嫁たちですね」と感想を述べた。
やはり文化文明の発達とともに晩婚化するのは必須らしい。
シガンはガールの一言に内心、全力で同意したかったが、やはり口が裂けても言うことはできなかった。




