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スカジャンのシガン  作者: イ尹口欠
冒険者編

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42/185

42.ダンジョン(1)

 クラーケンは港に曳航され、無事にシガンの屋敷の食卓にのぼった。


 味は完全にイカだ。


 ただし濃厚な甘さと、狩りの依頼達成料で懐が暖かくなったのはイカとは違うところだ。

 とはいえアドリアンロットに来てから、シガンの懐が寒かったことはないが。


「シガン様、もう無茶はやめてくださいね?」


「シガンさま、もうクラーケンは駄目だからね?」


「シガン。もう一度神様に祈らせないでね?」


 さすがにシガンも今回は無茶だったと思っていたので、素直に頷いておいた。



 さて金とは何もしなければ減っていくものである。

 常に労働し、稼がなければならない。


 シガンの始めた家庭菜園の巨大野菜の種は、今の所は伯爵に高く買い上げられているものの、数年スパンで見れば値下がりは明らかだ。

 何か新しい商売を始めるべきだとシガンは考えていた。


 言霊を使えば大抵の無茶は可能だが、あんまりアコギだと罪悪感で萎える。

 何か面白くてみんなが幸せになれるような仕事が欲しい。

 特に自分が楽しめるものがよいのだが……。


 シガンが楽しいことと言えば戦うことだ。


「《実は屋敷の地下にダンジョンが広がっている》とか? なんちって」


 ズズン……。


 ●は背後でため息まじりに言った。


「お前。そこの馬鹿なお前。何をトチ狂ってとんでもないことをやらかした?」


「え、今のアリなの?」


「並行宇宙のどこかに、屋敷の地下にダンジョンがある世界でもあったのじゃろう。まったく、考えなしじゃな……」


「すっげえ! これで戦い放題じゃん! しかも入場料も取れば勝手に儲かる!?」


「え、おい……」


「よおし、ちょっと地下を見てくるか! 改装も必要だなこりゃ」


「反省の色はどこへ……」


 ●は愕然としたまま消えた。


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