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61、62、63と暴力シーンが続きます。
苦手な方はご注意ください。
王都へ向かう馬車の中の事だった。夏休みが終わり、学園まで残り馬車で2時間というところ。夕暮れを少し過ぎた外は薄暗くなっていて、すれ違う馬車や人もなくて。
うとうとしながらお尻の痛みを誤魔化していたら、ふいに御者の驚く声が聞こえて。
「っなんだお前ら…っ…うわあ!」
御者は走っている馬車から放り出されたようで、一瞬で声は遠ざかった。車内は凍りつき、馬車のスピードがどんどん遅くなる。
きっと馬車を止める気だ。ジルはそうなる前に馬車のドアを開けたけれど…馬車の横にびったりと馬が走っていた。
「おい!飛び降りたらたたっ殺すからな!」
野太い声でそう言われればもう何も出来ない。ドアの外にいる賊から守るようにジルとツヴァイが私の前にいるけど…そんな事してほしくはなかった。
馬に乗る男は顔全部を覆う仮面を付けていて顔までは分からない。小汚い格好ではあるけれど体格は良く…腰に刺しているファルシオンの刀剣が怪しく光っていた。
「ツヴァイ様…私が隙を作ります。メリー様と逃げてください」
「駄目よ。抵抗しないで相手の言う事を聞いて」
「でも、メリー!」
「絶対に抵抗しないで。これは命令よ」
すぐに馬車が止まって、まずジルが…大きな男に胸ぐらを掴まれて勢いよく外に出された。同時に私が背にしていた馬車の扉も開かれて、首根っこを掴まれて車外へ出る。
「いっ…!」
「メリー!」
ツヴァイが私に手を伸ばすけれど、届かなくて。……馬車の窓はカーテンで閉めていたせいで、反対側にも居る事に気がつかなかった。
「嫌あ!離して!」
「大人しくしろ!」
視界の隅で…ジルとツヴァイが、男たちに殴られ、蹴られているのが見えた。私もそうなるかと思えばなぜか口に布を当てられて。
咄嗟に、真珠のネックレスを引きちぎった。
「おら来い!お前ら行くぞ!」
縄で縛られ、馬の背に荷物のように乗せられジルとツヴァイの姿が遠くなっていく。……2人とも蹲ってはいたけど、…動いてはいたし生きているはず。…大きな怪我じゃありませんように。
整備された道から外れ、なお馬は走る。お腹から馬の走る振動が伝わってきて痛い。
下を向いている私の視界を何かが横切った。見ればそれはさっきまで付けていたと思われる仮面で……サァっと血の気が引いて行くのが分かる。
私は今、目隠しされていない。イレネオ先生の犯罪心理学では…犯人が被害者に顔を晒すのは…、…殺す気があるからだと言っていたっけ。
震える体を抑えられない。
…怖い。私は一体どうなるの?殺されるの?なぜ!?嫌だ!痛い思いも怖い思いもしたくない!嫌だ!誰か助けて!!
声を出そうにも口を縛られていて出せない。暴れても馬に括り付けられているから落ちそうにもない。それでも抵抗すれば、馬が嫌がって僅かに体勢が崩れた。
「チッ暴れんじゃねえ!」
「ぐっ…!」
ゴツ、と頭に強い痛みが走る。
痛い…!殴られたんだ。嫌、一体どこまで連れて行かれるの…?
平坦だった道はいつからかなだらかな山道となり、日はとっくに暮れていた。ズキズキと頭が痛いけど…それで少し平静を取り戻せた。
考えよう。考えなければ。私が生き残る道を。なんとかして切り抜けなければ…待っているのは無惨な死。…逃げる隙か…助けを待つ時間を、稼がないと。




