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「俺としてもメリーと一緒に居るのは楽しいから妻にとは思っていたんだけど、けど大事なリーズが…」
「アデラール様」
「なっ…なんだ?」
「……お気持ちはよく分かりました。破棄の件、いつ頃書簡を頂けるのでしょう?」
「!…そうか、分かってくれたのか…ありがとう、メリー。書簡はできる限り急ぐから1ヶ月後にはセントポーリア公爵に届けさせよう」
「ええ…それで結構ですわ。他にご用件は?」
「え、無い…けど」
「そうですか、ではこれで失礼します。どうぞリーズさんと仲直りしてくださいね」
呆気に取られるアデラールを置いてパタン、と扉を閉めて、ようやく私はずうっと我慢していた笑顔を出した。
さあて、お父様に手紙を書かなくちゃね。間違っても王族からの破棄の書簡に抗議しないで、ってね!ああ楽しい!あっそうだ!最近一番出来の良い押し花も一緒に送ってあげようっと。
実家の使用人たちにはお父様から伝えられるだろうから、ツヴァイには直接私が言わなきゃね。喜ぶだろうなあ!一緒に喜びを分かち合いたい!!酒が欲しい!!!まだ飲めないけど!!!
るんるん気分で私は男子寮まで赴き、そこら辺にいた人にツヴァイを呼んでもらった。
もちろん手にはしっかりと祝杯のジュースとちょっとお高いチーズを持っている!!お酒は無理だけどこのくらいはね!!
「メリー?珍しい。なんかあったのか?」
「休みの日にごめんね!天気も良いから校舎裏の木陰に行こう?話はそれから」
「え?ああ…」
珍しく弾むようなテンションの私に訝しげな目線を送っているけれど、いいもんね!
適当な木陰へ座れば、葉っぱの隙間から覗く太陽が美しい。はあ、世界がこんなに綺麗だったなんて。昨日までとはまるで違う。
「今日…アデラール王子に呼ばれてお茶をしに行ったんだけどなんて言われたと思う?」
「…まさか」
「うふふふ、そのまさか!」
「リーズと別れてやっぱりメリーしかいない愛してるとでも言われたのか!?」
「はい!?」
え!?違うけど!?仮にそうならこんなに喜んでないけど!!?!?てかなんでそんな怒ってる…?ちょちょちょ急に立ち上がらないで!びっくりしてジュースの瓶落としそうになったじゃん!!
「あいつ!!どんだけいい加減な奴なんだよ、俺話してくる!」
待て待てその話をするっていうのはトークじゃなくてバイオレンスの方にしか聞こえないんだけどお姉ちゃんの気のせいかな?違うよね?だって握り拳作ってるもんね!?
「違う違う!違うの、婚約を破棄させてくれって言われたの!」
「だから婚約を破棄させ……え?今なんて…?」
「王子に、リーズさんと婚約するから私との婚約は破棄させてほしいって」
「………よかっ………たな?」
「そう!よかったのよ!」
「よ………良かったな!!」
「うわぁっ!?」
ガバリと抱きつかれて驚いてしまったけど、素直に喜んでくれてるのが嬉しくて私も抱き返す。
きっとお父様とお母様は私の事を心配しちゃって喜んではくれないだろうし。
「良かった…じゃあもうあいつに呼ばれる事も…卒業後に王城に行く事も無いんだな?」
「そうね…一先ずは実家に居ると思う。とはいえほぼバツイチみたいなものだから…この先縁談はほとんど無いかもしれないけど」
「いいだろ別に!俺が家を継ぐからメリーもずっと居ればいい!…また二人で過ごそう」
「…うん。ありがとう、ツヴァイ」
王家との強固な繋がりが無くなってしまったから、本当は喜んではいけないんだけど。
それでもずっと心配してくれていた弟と私、2人だけでこっそりと祝杯をあげた。
珍しくふにゃりと笑ったツヴァイが可愛くてかっこよくて多分その3倍は私は笑っていたと思う。
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「…って事でツヴァイと2人でこっそりお祝いしたのよ」
「そうでしたか」
「………で、なんでまだ王家から婚約破棄の書簡が届いてねえんだよ………!」
夏休み初日。例の如くジルが迎えに来てくれた馬車に、たっぷりのお土産を乗せてツヴァイと家に帰る道中。
5月の終わり頃に王子から破棄の申し出を受けて早2ヶ月と少し。………なぜか未だに書簡は届いていないようで。
イライラしているのか隣に座るツヴァイの足が揺れている。
貧乏ゆすりはダメだよという意味を込めてそっと膝に手をやると、伝わったみたいで揺れが止まっ……なぜ手を握られているのかしら。
「帰ったら父さんに聞こう。絶対破棄させてやるから」
「ええ…?なんでツヴァイの方が私より気合入ってるの…」
「ツヴァイ様、僭越ながら私も同行させていただきます。セントポーリア領にメリー様が残る場合のメリットを旦那様にお伝えできれば」
「それいいな、ジルも来い」
「はい。メリー様にはぜひわが領で行き遅れになっていただきましょう」
「ジル喧嘩売ってる?」
気付けばジルにももう片方の手を握られていて、いつもは不仲なはずの2人がなぜか今は共闘しているかのような連帯感を感じる。
なんだろうこいつら、確かに結婚したくないよ?したくはないけどさ?ここまで婚約破棄に賛成されると若干失礼な気がしてならない。
「メリー様のご卒業が大変楽しみですね。学園には私を連れて行っていただけませんでしたので、寂しく思っておりました」
「あなたまだ根に持ってるの…」
「…メリーが卒業したら俺も家に帰りたい」
「馬鹿なこと言わないの、学園はうちから通える距離じゃないでしょ!」
軽口を叩きながらも本当に婚約破棄出来るのだろうかという一抹の不安を抱えて、私たちは家へと帰った。




