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テーブルを囲めば、もうお喋りを止められなくなって2人と色んな話をした。
ドロテーアは最初、侯爵家と伯爵家の友達がいたが気が合わずハブられるようになってしまい、さっきの子爵の女の子たちが声をかけてくれたこと。
最初は楽しかったが4年生になった頃からトゲのある発言が多くなったこと。
ヘザーが最近、初めてイチジクを口にして思いがけない味に勢いよく吹き出してしまったこと。
恋愛小説を読みすぎて何を読んでも全てテンプレートとしか思えず最近暇なこと。
「そういえば、王子に話しかけに行かなくていいの?」
「あのね、ヘザー…あなたならあそこにズカズカ入り込む勇気、ある?」
横目で指したのはもちろん王子率いる豪華絢爛、公爵家子息達の集まる場所だ。
遠巻きにいびつな円となって、女の子がこっそり伺い見ている。
誰かがあの円の中に入り込めば即、話題の中心になる。多分、悪い意味で。
「…ない、わね。ごめん」
「いいのよ…」
「えっと…でも、ご婚約なさってるんですよね?」
ドロテーアが恐る恐る聞いた。
「ええ、婚約者ではあるわ。でも、まあ…それだけよ。ドロテーアさんは…」
「ド…ドロテーアと呼んでください。良ければですけれど…」
「ううん、そう呼ばせてもらうわ。私のこともユーメリーって呼んでね?」
「それは…!恐れ多いです、そんな、公爵家の方に」
「ユーメリーは特に気にしないわよ。そんなんだといつまで経っても親しくなれないし、呼んでみたら?」
「え…」
「私からも…お願いしてもいいかしら。気が引けるのは分かるんだけど…同性のお友達は今までヘザーしかいなくって。ドロテーアとも仲良くなりたいから」
「…はい。ありがとうございます…!嬉しい、です」
「ゆっくりでいいから、敬語もなくなると嬉しいわ」
うんうん、求めていたのはこういう女の子同士の微笑ましい空気だ。
ようやく私も学生らしく友達と楽しめそう。さあ目指せ友達100人。ぜひ可愛い子とお知り合いになりたい、目の保養的な意味で。
「ドロテーアはあそこにいる王子様たちの中で、憧れの人は誰かいる?」
「周りの女の子はよく話していますが…私は刺繍の方が好きで…」
「…羨ましい。刺繍は何回やってもお母様によく注意されるの…どうせじっとしてるなら素敵な恋愛小説を読んでたい」
「2人とも十分素敵な趣味を持ってるわ…。私なんて最近、凶悪犯の人生や酷い事件の本しか読んでない…」
「それはどういう…?」
「ユーメリー…ついにどこか可笑しくなったのね」
「ついに、って何よヘザー!」
持ち寄った料理を摘みながら和やかに話していると、どこからか音楽が流れてきたのが耳に入る。
音楽隊まで用意されているとはすごい。ダンスも踊れるスペースがあるものの、みんなお喋りに夢中なのか、はたまた誰も踊っていないので気後れしているのか、動き出す気配はなかった。
「素敵な音楽ですね」
「音楽隊もいるみたいね」
「!…ユーメリー…!」
「ヘザー?」
「ねえ、あれ!王子、なんかこっち来てない?」
「えっ」
慌てて後ろを振り向くと、確かに王子がこちらへ歩いてくる。
えなんかめっちゃ見てるんだけど確実にこれ私のところに来るよね、やめてくれや。
顔には出していないものの、内心げんなりしつつ椅子から立ち上がった。
「メリー、良い音楽がある。私と一曲踊ってくれないか」
微笑みと共に手を差し出されれば、会場の目線を一挙に集まっている中でどう断れというのか。
「ええ、もちろん」
目を細めて口角を上げ、ゆっくりと手を重ねた。皆が壁際で談笑している中、ホールでただ1組音楽に揺れる。
キラキラ、シャンデリアの光で照らされる。人工の光ではない暖かな光が降り注ぐ中で、導かれるままひとつ、またひとつステップ。
腰に回した腕は、シャンデリアよりキラキラした髪を持ち誰もが羨む美貌の王子様。
黙っていれば、本当に物語の王子様なんだけど。
夢から現実へと引き戻したのもまた、目の前の素敵な素敵な王子様。
「最近全然メリーと会えていない気がする」
「…月に2度はお部屋で話していますよ」
「もっと会いたい」
耳元でささやかれた言葉は、きっとあそこにいる王子を見つめている女の子に言えば卒倒するくらいのものなんだろう…。
ダンスに誘ったのも多分会う口実を付けるためだろう。王子と会わないように逃げ回ってたし。
「なあ、覚えているか。初めて会った日のこと」
「覚えていますよ」
「あの時は小さかったが、もうメリーの背もとっくに越したな」
「…ふふっ。そういえば、すぐに追い越す!って言ってましたね?ちょっと怒りながら」
「それは忘れてくれ…。…メリーが初めてだったよ。素でもいいって言ってくれたのは」
少し上を見上げると、アデラールと目線が合うことはなかった。もしかして照れている?
「俺にはメリーだけなんだ」
握っている手と引き寄せられている腕に、少しだけ力が入った。声は低く、もう少年ではないのだと思わせるような何かがあった。
「7歳でアデラール様を一目見た時からずっと、私はあなたの味方です。あなたが正しくあり続ける限り」
「ああ、期待に応えてみせよう」
他にもダンスをしている人たちが片手より多くなった頃、王子とゆっくりと離れてまたヘザーとドロテーアの所へ戻った。




