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「アデラール王子へ3点、メリー様へ7点を配布いたします」
「…妥当だな。今回は仕方ない、しかし次は勝つぞメリー」
「ええ…次も勝てるようにしますね」
いやいや…ジルさん?今のは確実に2:8、ないしは1:9だったと思うんだけど。
ジロリと下からジルの顔を睨めば、"この点数で勘弁してください"と言わんばかりの顔を一瞬だけした。
「しかし…むぅ。自身の支持者パラメータに1+点数を掛けるんだったな?」
「そうです。アデラール様は1.3倍を、私は1.7倍を掛けます」
「これでメリーに点数を追い抜かれてしまった。さてどうするか…」
「まだゲームの終わりまで数ヶ月ございます。ですがもちろん、このまま逃げ切るつもりです」
「ああ。私も勝つ気概で臨むさ」
アデラールの顔に僅かな焦燥の様子が見えた。負けるかもしれない、そう自覚してしまったんだろう。
表情にはあまり出さないように取り繕っているのだろうが、その焦燥はきっと内面を崩してくれる。王子…あなたに足りないのは知識でも頭脳でもありませんよ。
私と違うのは一つだけ、負け慣れていないことです。
そして、今日のゲームは4勝1敗で私の勝ち越しとなった。
「っだああああああ!」
「メリー様、叫びながらベッドへ突っ伏しないでください。どんな淑女ですか」
「うるさいうるさい!疲れたの!肩凝るのよ!」
「その点に関しては大変お疲れ様でした。本日も王子にはご満足していただけたようで、何よりです」
私の所作にため息をつきながらも、気遣ってくれているのか鎮静効果のあるカモミールの紅茶を手際よく入れてくれた。
「…いい匂い」
「さ、ベッドから起きてこちらへ。お手をどうぞ」
「ありがとう」
窓際の机に座り、宿の3階から外を眺めるが、夕暮れ時だからかどこか足早に道を歩く人しかいない。
きっとみんな、1日の仕事を終え我が家に帰るんだろう。
昔の自分を思い出して今歩いている人たちと重ねようとしたけど、外から聞こえた笑い声で重ねられなくなってしまった。
あんなに楽しそうに帰路を歩いたことはなかったもの。いつだって、足早に。張り付いて取れないような無表情で淡々と足を家へと動かしていただけだ。
「メリー様?」
「…なに?」
「旦那様は城の方と夕食を取られるようです」
「そ。ジルと部屋で食べるわ」
「私は共に食べられませんけどね」
「誰も見てないしいーじゃない」
「立場というものを考えてください」
「ま、そうね。私が気にしなかったとしても周りが気にしないでくれるとは思わないし」
「ええ、その通りです。宿の者に夕食を用意するように言ってきます。鍵をかけてお待ちになってください」
「はーい」
私の使用人はジルしかいないから大変そうだなあ。でもゾロゾロ連れ歩くのも嫌だから仕方ない。お仕事頑張れ、ジル。
でもツヴァイとは一緒に来たかったなあ。今頃一体なにをしているのか…。
くりくりと手持ち無沙汰げに右手で横髪をいじってみる。大変艶やかな御髪です、まるで画面から飛び出たかのよう。素晴らしい。
学園の入学まであと数年。この数年の間に、出来るだけゲームの未来とは違った方向へ進めるようにしていきたい。もしかしたら大筋は全く変わらない可能性はあるけど…風が吹けば桶屋が儲かる、もといバタフライエフェクトの方へ賭けてみようじゃないの。
となると入学前に思い出せる範囲でゲームのストーリーを整理しておきたいなあ。登場人物とか特にね。
「メリー様、ジルです」
「どーぞ」
「ありがとうございます」
「…ねえ、やっぱりジルも座ってよ。暇だから話したいのよ」
「…その程度のことでしたらまぁ…、誰もいませんしね」
「うふふ…ようこそ、闇のお茶会へ」
「なんでしょうかね一体…」
ぴき、と多少顔が強張るのを私は見逃してはいないぜ。多分嫌な予感とかしたんだろうけど逃がさんぞ。
「ぶっちゃけ使用人同士ってどうなの?」
「メリー様言葉遣いが」
「家庭教師モードは封印!主人命令よ!」
「…どう、とは?いじめとかは特にありませんよ。仲違いや相性の問題はありますが」
「ちーがーうー恋愛よ恋愛!」
「…メリー様も女性なんですねぇ…その手の話が好きだとは」
「いえ、ジルがその見た目で女の子達の目線奪っている上男性陣から嫌われたりしてないのかなって」
「そんな事実はありません」
「…チッ」
「それ一体なんの舌打ちなんですか。ていうかメリー様、私にだけ悪態つきませんか?もう少し優しくしていただいても」
「必要ないでしょうに」
「必要ですよ、使用人に同じ愛をくださいよ」
「えージルってなんか完璧人間って気がして…鼻を折りたくなるの」
「どんな理由ですか…こんなにメリー様をお慕いしているというのに」
「愛されるのはほら主人の常だし。ていうかジルはそういうのないの?アリーサとかミラとかたとえばミラとかそういえばミラとか」
「それほぼミラですよね」
「ミラ可愛いじゃない?」
「可愛らしいですね。ただ最近はあまりそういった目では見られていませんが。どちらかというとメリー様にべったりでまたメリー様に付いてまわる人間が増えてしまったというか…」
「あなたのその私への執着心は一体何なのよ…。はあ、それにしてもよかった。ジルのことは本当に諦めたのね」
「おや。そのよかったの発言はどこに対してでしょう」
「それはもちろん、ミラがジルを選ばなかったことに対してよ。ミラにはもっと一途で優しくてステキな男性と一緒になって欲しいし」
「心外ですねえ…」
「ほかの女性は違うかもだけど…変に女慣れしすぎてる男性もどうかと…」
「無神経な男よりはよほどいいではないですか?」
「そーかもしれないけど…あー分からなくなってきたわ。私まだそういうのしたことないし」
「…そういえば、学園に入学した貴族の子供達は将来を親に決められることが多いので色恋沙汰が多いと聞きますね」
「ええ?どういうこと?」
「どうせ結婚する人間は親に決められる、自由な時間は学生でいる間だけ、ならばその間に思い切り恋愛を楽しみまくろう…という」
「……なんかドロドロしたのしか想像できないのだけど」
「まあ…その通りですね。度を超えると、素行不良で決まっていた結婚が相手側から破棄されてしまい実家から勘当される…なんてこともあります」
「まあ…」
「結構恋愛方向へ奔放になる人も多いらしいですから。くれぐれもお気をつけて」
確かに危うい…しかもここ、恋愛ゲームの舞台だもの…。ゲーム以上のドロドロしたのに巻き込まれたらどうしよう…。
恋愛しなければ回避できるかな!?けど若干10歳にしてそんな枯れた日々送るのもどうかな…せっかくの二週目の人生なのに…。
「…心して気をつけるわ」




