屋上から見る風景
何日たっても状況は好転しない。あれから事件の犯人が捕まったという話は聞かないし、噂によると全く捜査は進展していないそうだ。
もう学院に来るなよ! そういう露骨な視線に全身を突き刺されながら、何故学院をサボるという選択肢を選ばないのか、自分でも分からない。
クラスでも孤立は深まるばかり。変わらず話しかけて来ていたワイスも、京介が頑なな態度をとり続けることで、次第に話しかけてこなくなった。
あれ以来、学院は完全に以前とは様子を違えていた。どこへ行っても黒服の銀弾連中を見かけるし、立入り禁止のテープが貼られた場所がめっきり増えた。授業も休講になることが多くなり、教師陣は会議また会議らしく、見かける機会がめっきり減った。
そんななか、京介は立入り禁止のテープを乗り越えて屋上にいることが多くなった。
ここに居ると、遠くに見える街並みがちっぽけに感じて、自分という境界線があいまいになる。まるで、自分が世界に溶けて消えていくような、そんな不思議な感覚。
考えること、悩むことをやめることができる、そんな場所だった。
「俺がハッキングできないのが悪いんだろ……」
何より悔しかった。只でさえクラスで一人だけ無能力なのに、今度はそれを理由に訳の分からない事件の犯人扱い。どうせならものすごい能力者になって、犯人でも何でも捕まえて、ギンダンの奴らに突き出してやる。
「……腹、減ったな」
今は昼休み、こんな心境でも生きていくにはエネルギーが必要だった。
食事という生きるための欲求は否応なしに自我を世界から引き戻し、そうしてまた京介は悩むことを始めてしまうのだった。
「はあ」
ポケットを漁るとスティック状の手ごたえ。これを食べるかと思うとまた憂鬱な気持ちになる。
「……まるで逃げてるみたいだな」
そうひとりごちて今日も一人、まずい配給食を齧っていた。
「………」
ここにずっといても何かが変わるわけではない。誰かが助けてくれる訳でもない。
自分でも分からない。なら何故こんなところに毎日来ているのか。何を期待しているのか。
少し強い風が吹いた。それは何の色も、匂いも乗せてはいない。もう春だというのに、ただ肌寒さを感じさせるまったくの無味乾燥なものだった。




