追い詰められたネズミ達
「さて、お前たちに聞きたいことがある」
4人組に向かってじりじりと距離を詰めながら、弓月朔は問う。
「お前たち、先ほど我々を対象に√を行使していた。間違いないな。何をしようとした? 詳細を答えろ」
「な、何言ってるんだ? る、るーとって何の事だ。頭おかしいんじゃねえか?」
4人のうち1番小柄な男が、朔に気圧されうろたえながらもそう答えた。
朔は無言で傍らのカスミを見た。
「嘘は言ってないはずです、隊長。彼らの体は、確かに私の“偽証禁止”に縛られています」
視線は4人組に向けたままカスミは答える。
「な、何なんだよ、お前ら。なんで私、動けねえんだよ」
カスミの正面の少女がヒステリー気味の調子で言った。少女は首から下が動かない事にパニックを起こしかけているようだった。先ほど麻月カスミが4人に発砲した弾は、もちろんカスミの√によるものだ。
彼女の固有能力は着弾した相手の体調に変化を起こす魔弾の精製。今回カスミが選んだ効果は完全運動麻痺に加え、偽証を企てる思考そのものにも干渉する類のものだ。
しかしカスミは違和感を覚えていた。かれらは指一本たりとも動かすそぶりを見せない。
いや、動かしたくても動かせないのか。
カスミが使った弾は、確かに完全運動麻痺効果を付与していた。が、それはあくまでも対一般人、つまり非能力者に対する効果だ。能力者は非能力者とは違う。理から外れた者。構成データはそれぞれ固有のものであり、こと脳ともなると、各々独自の思考体系(OS)を実装している。故に着弾した相手によって与える効果もまちまちだ。
つまり、豚の体に侵入して増殖する事ができるウイルスが、人間に対してもその感染力を発揮できるとは限らないことと同じ。相手を解析することもなく撃った弾が、ここまでの効力を発揮できていることがそもそもおかしいのだ。
まるでこの4人組は“一般人”のようではないか。
「どういうことだ。間違いなく彼らの周囲で環境異常が発生していたが…」
通常あり得ないことに朔がためらいを見せていると
「だから……。僕ラ、何ニも知らなイって…言っテんでしョ!!」
「―――――――!?」
麻月カスミは驚愕に目を見開いた。先ほどまで強制的に朔の質問に応じさせられていた彼らの眼が、まるで、ぐるんと裏返ったように白目をむいた思うと、自分を目がけ襲いかかってきた。相手は全身麻痺状態であるにもかかわらず。
その場にいた他の一般弾員も、突然のことに一瞬動作が遅れる。
「ッ!!?」
想定外の出来事に体が正しく動作せず、構えたはずの銃は掌からこぼれ、落下していく。
決して油断をしていたわけじゃない! なのに…。
「くッ!」
カスミに残された行動は、迫る悪意に身構えることだけだった。




