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レスバも強い公爵

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 公爵邸の広間で、空気が張り詰める。


 室矢カレナは、小さな女神のように立ったまま。


 暗い部分がある顔のまま、低い声で宣言する。


「私は、あなた方を認めない!」


 その返事のように、雷のような音が鳴り響く。


 同時に、金属音。


 ひるんだ面々が、改めて音がしたほうを見ると――


「オ、誓約(オルコス)が!?」


 正騎士の誰かが、叫んだ。


 鎧と武器によるオブジェクトが、絨毯の上で3つ並ぶ。

 美術品のように見えるも、それぞれ体の部位を守るパーツの集合体だ。


 相変わらず、金色のオーラを纏っているカレナが、淡々と告げる。


「ギアは私の作品であり、所有物です! あなた方には、二度と使わせません!」


 言い終わるや否や、台座となった誓約(オルコス)が光り、そのまま消えた。


 呻(うめ)くように悲鳴を上げた3人は、人目もはばからず、自分の装備があった場所にしゃがみ込む。


「いったい、何が?」

「……呼び出せない!?」

「嘘……。嘘よ!」


 いっぽう、気が済んだのか、金色のオーラを引っ込めたカレナ。


 元のメスガキ風に、高い声で締めくくる。


「円卓の騎士としては、私の管轄ではない! 他のギアも使えないから、辞めざるを得ないだろう……。お主らがどのようにケジメをつけるかは、知ったことではないのじゃ! 不愉快だから、早く立ち去れ」


 俺は、チェアの後ろに移動した。


 カレナが元のチェアに座り直し、食べ終わった皿を指さす。


 条件反射で動いたメイドに尋ねられ、チョコレートケーキを選んだ。


(断面図が、地層のようになっている)


 後で聞いたら、ユニオンの定番、チョコレートファッジケーキ……。


 ともあれ、床にうずくまっている男女3人が我に返った。


 その場で立ち上がりつつ、怒りで染まった顔を向ける。


「円卓(ラウンズ)の従騎士を殺したばかりか、このような無礼まで!」

「総力を挙げて、報復します!」

「ウィットブレッド公爵? 誓約(オルコス)の管理を任されている栄誉をこのような形で捨て去っていいのですか!?」


 しかし、超常的なカレナに、やつらは恐怖したようだ。


 別のチェアに座っている老人に向き直り、口々に訴え始める。


「従騎士を3人も殺されました。このような暴挙、許されません!」

「……私の娘になら、見殺しという暴挙が許されるのか?」


「ウィットブレッド公爵家の名誉のためにも、お嬢様への教育を!」

「カレナは、私よりも年上だぞ? あの見た目だが……」


「どうか、別の誓約(オルコス)を! このままでは戦えず」

「……ほう? 彼に勝利すれば、考えてやらんでもない」


 希望の光が見えた3人が、公爵の視線を追う。


 ハァイ!


 俺を見つけて、一斉に別の方向を向く3人。


 そもそも、従騎士が身に着けていた誓約(オルコス)を一撃で粉砕した犯人だ。


 意味ありげに、無言で笑う公爵。


(レスバも強いな? ユニオンは、嫌みの本場でもあるわけだし……)


 だが、こんな茶番は、やっていられん。


「公爵? よろしければ、従騎士たちの弔いを兼ねて、今回のやつらを倒しますが」


「そうだな! カレナ、どうだ?」

「お待ちください! 今すぐ、ラウンズに連絡して――」

「その必要は、ございません」


 渋い声が、騒がしい空間に響く。


 ラウンズの正騎士らしき、白髪の老人が立っていた。

 その斜め後ろに、従騎士でツインテールの少女も……。


 老人が、軽く頭を下げた。


「円卓の正騎士、レノックスです! 到着が遅れて、申し訳ございません」

「同じく、従騎士のシャーリーと申します」


 いよいよ、来たか!


 ウィットブレッド公爵の要請で、一晩たっても連絡がない。


(そりゃ、もっと戦える騎士を派遣するよな?)


 喜色満面にあふれた3人が、新手のコンビへ歩み寄る。


「剣聖!」

「待っていました……。ラウンズの名誉を汚されまして」

「我々の誓約(オルコス)を奪われました!」


 後ろに立っているシャーリーが、顔をしかめた。


(こいつは、1周目でも単純だったからな……)


 それに対して、微笑んだままのレノックスが応じる。


「なるほど……。今は、時間がありません! 私に引き継ぐということで、よろしいかな?」


「ええ、それはもう!」

「詳しくは、後ほど報告します」

「……我々にも、事情がありました! 何卒よろしくお願い申し上げます」


 女のほうは、察したか!


(レノックスは物腰が柔らかいけど、容赦ないんだよな……)


 笑顔のままで社会的に潰すし、必要と見なせば、斬り捨てる。


(1周目は、俺もわりと危なかった)


 愛想笑いで退室した、正騎士3人。


(たぶん、お前らは殺されるよ? それも、あんたらの流儀に従って)


 シャーリーが顔をしかめたのは、俺が従騎士3人を看取った場面を見ていたから。


 混乱したままで、案内した使用人ぐらいしか、気づいておらず。



 誰かが、目立たないように深呼吸した気配。


 公爵に改めて自己紹介した騎士2人は、こちらを向く。


「さて……。カレナ様におかれましては、女王陛下より『歓迎します』との伝言がございます」


「承知した! お主も、プリシラと話しておけよ?」


 カレナは、疲れた様子の公爵に向き直る。


「待たせたな、ルパート! まずは、ブルックウッド墓地のほう」

「……頼む」


 公爵は、1人用のチェアに座ったまま、会釈した。


 頷いたカレナが、同じく座ったままで振り向く。


「出番だ、重遠! ランチタイムまでに、片付けろよ?」


 時計を見ると、午前10時だ。


「ハイハイ……。移動はどうする――」

「ちょっ! ちょっと、待ってよ!? うちの従騎士3人が負けた相手に、1人で?」


 可愛らしい声。


 全員に注目された少女は、恥ずかしそうに顔を赤らめる。


 シャーリーだ。


(お前、2周目でも騒がないと、気が済まないの?)

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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