神話の時代にいた女神の怒り
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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両手には古ぼけた銀のダガー、リジェクト・ブレードが二振り。
その切っ先は、襲ってきた従騎士3人へ向く。
どいつも土気色で、内側からミミズが走っているような線がいくつも走っている。
だが、その顔は悲壮……。
(すでに、操り人形か! 自我を残したまま)
悪趣味な話だ。
報告していたリーダーらしき男が、叫ぶ。
『偉大なるドゥクス様のため、カレナを殺さなければ――』
「やりなさい、重遠」
お嬢様モードになった室矢カレナの声が、後ろから響いた。
「致し方ないか……」
俺の独白に、サロンで徹夜したと思われる正騎士3人の声が続く。
「待て!」
「円卓の騎士を殺すのか!?」
「今、とめます!」
俺がリジェクト・ブレードを消して、素手になると、3人は黙る。
けれど、握った右拳を引き、左腕を引く動作からの正拳突き。
再び突進してきた従騎士3人の間を一筋の光が通り抜けるや否や、彼らが身に纏っている誓約が粉々に砕け散る。
後ろへ吹っ飛んだ3人は、ボロボロの服で、床に叩きつけられた。
俺は、伸ばしたままの右腕をゆっくりと戻す。
(2周目だけあって、上手くなったものだ……)
軽いパンチ一発で、コレ。
1周目では刀に頼るしかなかったが、もう素手でも扱える。
日光が一面から差し込む広間で、瀕死の3人は倒れたまま、自分の師匠である正騎士を見上げた。
けれど、正騎士たちの反応は辛辣。
「何たる、失態!」
「名もなき東洋人ごときに、触れることもできないとは……」
「ラウンズの騎士が負けたうえ、誓約まで失うなんて」
近寄ることもなく、弟子を罵倒する。
目を丸くしていた執事、メイドは、雰囲気を変えた。
ポーカーフェイスのままだが、蔑んだ視線で正騎士たちを見る。
正騎士3人が、自らに仕えている従騎士、それも直に死ぬ者に、この仕打ち。
ウィットブレッド公爵に仕えるプロだからこそ、主君がその忠誠に報いず、裏切ることを許せないのだろう。
彼らは、知っている。
正騎士3人が弟子だけ現場へ向かわせて、自分たちは公爵に取り入っていたことを……。
(全員で動いていれば、この事態を避けられたかもしれない)
それは、公爵からも要求されたことだ。
ところが、彼らは動かず。
(その結果が、これ……)
ゆっくりと、前へ歩む。
その気配を感じた全員が、俺を見た。
床に倒れたままの従騎士3人は、恐怖に歪んだ顔で、遠ざかろうと這いずる。
最も近い1人に辿り着き、片膝をつく。
トドメを刺されると悟った青年が、顔を背けつつ、目を閉じた。
俺は、床にある片手を握る。
まだ拳を保護する部分が残っていて、ガシャリと鳴った。
思わぬ展開に、茫然としたままで俺を見上げる青年。
「よく頑張った! お前たちの尊厳と命を奪った連中は、俺が倒す! あとは任せろ」
涙を流した青年は、土気色のまま、絞り出すように呟く。
『すまん……』
同じく、這いずるように近づいた残り2人の手も握る。
『頼む……』
『お願い』
やがて、燃え尽きた物体が煙になるように消え去った。
片膝をついたままの俺は、固まったままの正騎士3人のほうを向く。
いや、騎士ではない。
問うべきは――
「あなた方は、それでも人間か?」
理解した3人が、瞬時に激怒する。
「わ、我々の従騎士を殺して、タダで済むと思うな!」
「公爵の前で、何という無体を……」
「この件は、ラウンズとして正式に抗議します!」
そこで、気づく。
この広間にいる全員が、自分たちの敵になったことを……。
使用人ですら感情を殺しきれず、名状しがたい表情を浮かべている。
娘のジェニファーがじわじわと殺されている公爵は、もはや激怒したという表現すら生温い。
1人用の豪華なチェアで立ち上がり、大声で叫ぶ。
「貴様らは――」
金色の光が、辺りを満たしている。
表現しにくい圧迫感に、そちらを見た公爵が黙った。
そこにいたのは、生意気な令嬢であったはずの存在。
同じくチェアに座りつつ、陰のある笑みを浮かべている。
「フ、フフフフ……」
握りしめているひじ掛けが、たった今、乾いた音を立てて砕けた。
顔を上げたカレナは、辺りを金色で満たしつつ、低い声で宣言する。
「よくも、見せてくれましたね? この私に……」
立ったカレナは、雰囲気がまったく違う。
気を抜いたら、ひれ伏したくなるほどの威厳。
「かつて、私が作ったギア……。それを纏った戦士に対して……」
一歩ずつ、カレナが進む。
「多くの守護者が私に仕え、散っていきました……。それは、テオフィルとて、例外ではない」
俺のほうを見たカレナは、すぐに向き直る。
「今となっては、ギアも神話の時代と比べ物にならない……。久しぶりに見ましたが、もはや残骸と変わらない有様!」
クリエイターの顔になったカレナは、すぐに毅然とした表情へ。
口が半開きの愚か者たちに、真実を告げる。
「たった今、テオフィルに倒された者たちは、あなた方がついていれば助かりました! それを棚に上げて、よくも……」
低身長の幼い姿のまま、カレナは叫ぶ。
「その身にギアを纏い、守護者の真似事をしながら、この体たらく……。恥を知りなさい!!」
過去作は、こちらです!
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