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神話の時代にいた女神の怒り

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 両手には古ぼけた銀のダガー、リジェクト・ブレードが二振り。

 その切っ先は、襲ってきた従騎士3人へ向く。


 どいつも土気色で、内側からミミズが走っているような線がいくつも走っている。


 だが、その顔は悲壮……。


(すでに、操り人形か! 自我を残したまま)


 悪趣味な話だ。


 報告していたリーダーらしき男が、叫ぶ。


『偉大なるドゥクス様のため、カレナを殺さなければ――』

「やりなさい、重遠」


 お嬢様モードになった室矢カレナの声が、後ろから響いた。


「致し方ないか……」


 俺の独白に、サロンで徹夜したと思われる正騎士3人の声が続く。


「待て!」

「円卓(ラウンズ)の騎士を殺すのか!?」

「今、とめます!」


 俺がリジェクト・ブレードを消して、素手になると、3人は黙る。


 けれど、握った右拳を引き、左腕を引く動作からの正拳突き。


 再び突進してきた従騎士3人の間を一筋の光が通り抜けるや否や、彼らが身に纏っている誓約(オルコス)が粉々に砕け散る。


 後ろへ吹っ飛んだ3人は、ボロボロの服で、床に叩きつけられた。


 俺は、伸ばしたままの右腕をゆっくりと戻す。


(2周目だけあって、上手くなったものだ……)


 軽いパンチ一発で、コレ。


 1周目では刀に頼るしかなかったが、もう素手でも扱える。


 日光が一面から差し込む広間で、瀕死の3人は倒れたまま、自分の師匠である正騎士を見上げた。


 けれど、正騎士たちの反応は辛辣。


「何たる、失態!」

「名もなき東洋人ごときに、触れることもできないとは……」

「ラウンズの騎士が負けたうえ、誓約(オルコス)まで失うなんて」


 近寄ることもなく、弟子を罵倒する。


 目を丸くしていた執事、メイドは、雰囲気を変えた。

 ポーカーフェイスのままだが、蔑んだ視線で正騎士たちを見る。


 正騎士3人が、自らに仕えている従騎士、それも直に死ぬ者に、この仕打ち。


 ウィットブレッド公爵に仕えるプロだからこそ、主君がその忠誠に報いず、裏切ることを許せないのだろう。


 彼らは、知っている。


 正騎士3人が弟子だけ現場へ向かわせて、自分たちは公爵に取り入っていたことを……。


(全員で動いていれば、この事態を避けられたかもしれない)


 それは、公爵からも要求されたことだ。


 ところが、彼らは動かず。


(その結果が、これ……)


 ゆっくりと、前へ歩む。


 その気配を感じた全員が、俺を見た。


 床に倒れたままの従騎士3人は、恐怖に歪んだ顔で、遠ざかろうと這いずる。


 最も近い1人に辿り着き、片膝をつく。


 トドメを刺されると悟った青年が、顔を背けつつ、目を閉じた。


 俺は、床にある片手を握る。

 まだ拳を保護する部分が残っていて、ガシャリと鳴った。


 思わぬ展開に、茫然としたままで俺を見上げる青年。


「よく頑張った! お前たちの尊厳と命を奪った連中は、俺が倒す! あとは任せろ」


 涙を流した青年は、土気色のまま、絞り出すように呟く。


『すまん……』


 同じく、這いずるように近づいた残り2人の手も握る。


『頼む……』

『お願い』


 やがて、燃え尽きた物体が煙になるように消え去った。


 片膝をついたままの俺は、固まったままの正騎士3人のほうを向く。


 いや、騎士ではない。


 問うべきは――


「あなた方は、それでも人間か?」


 理解した3人が、瞬時に激怒する。


「わ、我々の従騎士を殺して、タダで済むと思うな!」

「公爵の前で、何という無体を……」

「この件は、ラウンズとして正式に抗議します!」


 そこで、気づく。


 この広間にいる全員が、自分たちの敵になったことを……。


 使用人ですら感情を殺しきれず、名状しがたい表情を浮かべている。


 娘のジェニファーがじわじわと殺されている公爵は、もはや激怒したという表現すら生温い。


 1人用の豪華なチェアで立ち上がり、大声で叫ぶ。


「貴様らは――」


 金色の光が、辺りを満たしている。


 表現しにくい圧迫感に、そちらを見た公爵が黙った。


 そこにいたのは、生意気な令嬢であったはずの存在。


 同じくチェアに座りつつ、陰のある笑みを浮かべている。


「フ、フフフフ……」


 握りしめているひじ掛けが、たった今、乾いた音を立てて砕けた。


 顔を上げたカレナは、辺りを金色で満たしつつ、低い声で宣言する。


「よくも、見せてくれましたね? この私に……」


 立ったカレナは、雰囲気がまったく違う。


 気を抜いたら、ひれ伏したくなるほどの威厳。


「かつて、私が作ったギア……。それを纏った戦士に対して……」


 一歩ずつ、カレナが進む。


「多くの守護者(ガーディアン)が私に仕え、散っていきました……。それは、テオフィルとて、例外ではない」


 俺のほうを見たカレナは、すぐに向き直る。


「今となっては、ギアも神話の時代と比べ物にならない……。久しぶりに見ましたが、もはや残骸と変わらない有様!」


 クリエイターの顔になったカレナは、すぐに毅然とした表情へ。


 口が半開きの愚か者たちに、真実を告げる。


「たった今、テオフィルに倒された者たちは、あなた方がついていれば助かりました! それを棚に上げて、よくも……」


 低身長の幼い姿のまま、カレナは叫ぶ。


「その身にギアを纏い、守護者(ガーディアン)の真似事をしながら、この体たらく……。恥を知りなさい!!」

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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