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Renegade Knight

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 壊れかけの誓約(オルコス)を身に着けたローズマリーは、片手でレイピアの切っ先を向けた。


 対する正騎士3人は、同じく武器を構えつつも、訴えかける。


「ま、待て! お前が負けを認めれば、マスターになってやるぞ?」

「私たちを殺せば、円卓(ラウンズ)にいられない!」

「そ、そうよ! あなた、従騎士の間でも避けられているって――」


 床を削る音と、風切り音。


 一瞬で正面から間合いを詰めたローズマリーは、それを示したような青紫色の誓約(オルコス)を残像のように残しつつ、レイピアの突き。


 対する女騎士は、もはや中世のような鎧の一部だけ。


 壊れかけだろうと、円卓の騎士たる誓約(オルコス)の武器。


 苦もなく刺さり、ローズマリーの足さばきでしなった剣身が女騎士の体を切り裂いた。


「ギャアアアッ!」


 それでも、正騎士。


 反射的に、ソードを振るう。


 後ずさって、ギリギリで避けつつ、残り2人に注意するローズマリー。


「囲め! 相手は1人だ!」

「マスター殺しが!」

「……こんな奴に、負けるわけには!」


 優雅な騎士がいるとは思えない、コロッセオとなった演習場。


 半円を描くように包囲しつつ、左右の端にいる騎士2人が死角に回り込もうとする。


 それを防ぐため、ローズマリーはじりじりと後ずさった。


 ガッ


 屋内の演習場としての壁に、踵(かかと)が当たった。


 そちらに気を取られたローズマリーに、正面ですさまじい形相をしている女騎士がソードで突いてくる。


「死ねぇえええええっ!」


 先ほどのお返しとばかりに迫ってくる切っ先に、無表情のローズマリーは正面に向き直ることもなく、片足を地面に滑らせての低い姿勢へ。


 後先を考えない突進で、ソードの切っ先は演習場の壁に突き刺さる。


 すぐに両手で引き抜こうとする女に構わず、彼女を盾にすることで別の男1人の攻撃を防ぎつつ、反対側の男へ顔を向ける。


 両足を大きく開いたままの低い姿勢で無表情のローズマリーに見上げられた男は、パニックに陥った。


「あぁあああっ!」


 両手でハルバードを槍のように構えて、やはり突き刺そうとする。


 しかし、この武器は間合いが命。


 向かってくるハルバードを避けつつ、むしろ自分から踏み込んだローズマリーは、もう片方の手を添えつつ、両脇を締めてのコンパクトな突き。


「ぐっ!」


 レイピアは世間で思われているほど軽くないが、自分の武器はもう外れている。


 片手をフリーにしての回避へ。


 伸ばされる片手にあるレイピアは避けられたが、その代償として、ハルバードを握っているほうの肩関節を脱臼する寸前まで傷めた。


 避けられると踏んだローズマリーは、両足を決めての突きにせず、そのまま走り抜けて距離を稼ぐ。


 レイピアで風を切りつつ、改めて騎士3人と向き直る。


 ここで、ローズマリーの青色の目に、別の光が宿った。


 次の瞬間、彼女が消える。


 今度は残像すらなく、ハルバードを持っているのも辛そうな男の首筋から鮮血がほとばしった。


 次に、大剣を持っている男……。


 斬り合いの応酬となるも、ローズマリーはレイピアで受けず、動き続けた。


 相手を切り刻みつつ、トドメ。


 飛んでくるダガーが、数本。


 トドメを刺した直後で、ローズマリーは動けない。


「……っ!」


 誓約(オルコス)の装甲で弾きつつ、最後の女へ向き直る。


 けれど、姿勢が崩れたままで、最後の1本。


 急所だ。


 やむなく、レイピアを動かしての弾き。


 耳がおかしくなる甲高い音が響く中で、女騎士が最後の力をふりしぼった。


 異能による加速と、両手で握ったソードによる突き。


 レイピアは重く、ミドルレンジのための武器。

 とっさに構え直すのは、不可能だ……。


「勝った!」


 勝利を確信した女の顔は、ガントレットで保護された拳によって歪んでいく。


 レイピアを捨ててのクロスカウンターを選んだローズマリーは、両足を踏ん張りつつ、全身の動きで当てた拳を振り切る。


「あぁああああっ!」


 ローズマリーは、テニス選手みたいな叫び。


 地面に叩きつけられた女は、もはや動かない。


 初めて感情を浮かべつつ、振り切った後に肩を上下させる。


「ハアッ……。ハアッ……」


 ガシャリと金属音を鳴らしつつ、立ち上がるも、そこに健闘をたたえる声はない。


 昔の闘技場ですら、勝者に対する歓声や賞賛はあっただろうに。


 高い場所にある観客席からは、家畜の屠殺(とさつ)を眺めるような視線のみ。



 ――円卓会議


「これで、片付いたな?」

「……表向きは、任務中の死である」


「それよりも、アドラステア王女殿下の件だ!」

「速やかに、対処しなければ……」


「王家の暗部に任せては?」

「それでは、我々のメンツが立たん!」

「あちらも動いているだろう! 急がねば……」


「マスター殺しにも、困ったものだ……」


「左様! いっそ、死んでくれれば」

「部外者に調べられても、困る」


「仮にも正騎士だったくせに、3人がかりで傷も負わせられんとは……」


「私に良い考えがあります! シゲトオ・ムロヤを、正騎士の待遇にしては?」


 円卓で、沈黙の時間。


「卿(けい)は、その意味を分かっているのか?」


「表向きは我々が解決したことにできるうえ、ウィットブレッド公爵への言い訳としても一定の効果があると思います。ブリテン諸島の黒真珠のお気に入りとなれば、そちらの心証を良くしておくことも有効かと! あくまで、待遇にございます」


 納得した雰囲気。


「なるほど……。もっともな意見だ」


「それだけでは、ないのだろう?」


 意地が悪そうに言った騎士に、提案した本人がニヤリと笑う。


「もちろん! 正騎士には、弟子もいなければ……」


 おかしそうに笑った1人が、呟く。


「従騎士は、マスターに絶対服従……。女性を集めているなら、喜ぶか」

「5人目の犠牲者が出ても、それはそれで……」


「美人では、あるからな? シゲトオ卿(きょう)が連れて行ってくれるなら、それでもいい」


「お気に入りがいる様子を見れば、王女殿下も多少は落ち着こう」


 アドラステア・リーディ・シェラフィールが落ち着いて欲しいことだけは、室矢重遠と意見が一致している。


 他の女がいると、対抗意識を燃やすだろうけど……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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