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マスター殺しのローズマリー

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 女子だけの食堂が、凍りついた。


 時が止まった中で、全身から冷や汗をかいたシャーリーは叫ぶ。


「じょ、冗談だよ! アハ! アハハハハハ……」


 誰も、笑わない。


 何も言わない……。


 注目を浴びたままのシャーリーは、固まる。


 自分の隣に座っているセーラも、口が半開きのまま。


 ガタッと、椅子が引きずられる音。


 そちらを見れば、自分を目の敵にしているデルフィーヌが近づいてくる。


 足音が響き、慌てて立ち上がった取り巻きの女子も3人ほど。


 広い食堂にいる全員が見つめる中で、デルフィーヌは立ち止まった。


「シャーリー様? 今の発言、ご説明いただけますか? いつも貴族とは思えない所業のあなたがユニオン王家への不敬で首をはねられるのは一向に構いませんが、私たちまで同列にされるのは決して許しません!」


「ご、ごめんねー? いつも迷惑をかけて、悪いとは思っているから……。あ! これ食べる?」


 愛想笑いで、必死に機嫌を取るシャーリー。


 というか、自分の食べかけを勧めるな。


 デルフィーヌは、ぶん殴られたかと思えるほど、顔を引きつらせた。


「実は――」

「冗談ならば、仕方ありませんわ! いいですわね!?」


 大声でさえぎったデルフィーヌは、後ろに立つ女子3人に対して、ドスの効いた声で言い聞かせた。


「「「はいっ!」」」


 前に向き直った後で、作り笑顔。


「では、失礼いたします……」


 優雅に頭を下げたデルフィーヌは、しずしずと歩いていき、自分の席に座る。


 それを契機に、ようやく音が戻ってきた。


 我に返ったセーラは、自分が噴き出した紅茶の始末へ。


 といっても、貴族の女子が集う場所。

 壁際に控えていた下働きの女子にジェスチャーを送り、片づけてもらうだけ。


 食堂のいたるところで、思春期らしい会話が弾み――


 再び、音が消えた。


 お互いの耳元で、囁きあう。


「ねえ? マスター殺しよ?」

「……どうして、ここにいるの」


「また、誰かを殺すの?」

「私のマスター、大丈夫かな……」


 長机についている面々は、誰もが拒絶している表情だ。


 先ほどの爆弾発言とは違い、明らかに敵意を滲ませている。


 食堂で注目されたまま歩くは、腰までの長い黒髪、目の上で揃えているストレートの女子だ。


 髪飾りは白のバンドで、髪を固定する役割も兼ねている。


 青色の瞳は、周りを気にしていない。

 美人で可愛らしさもあるが、無表情だ。


 カフェテリア形式でトレイに載せていき、自分の席を探す。


 デルフィーヌも不快そうだが、目を合わさず、何も言わない。


 その近くを通り過ぎた少女は、シャーリーが座っているところも――


「いつまで、練り歩く気?」


 両手で重そうなトレイを持ったままの少女に、シャーリーが声をかけた。


 立ち止まった少女が、話しかける。


「……いいの?」


「ここは、食堂だよ? 好きなところで食べればいい」


 ちょうど周りが空いていることで、少女がトレイを長机に置き、自身も座った。


 無言のお祈りをしたら、食事を始める。


 それを待っていたかのように、他の女子がどんどん席を立ち、トレイを返却して出ていく。


 急にガランとした、食堂。



 自身も食べながら、少女の様子を眺めていたシャーリーが、尋ねる。


「珍しいね? ローズマリーが顔を出すとは……」


「上に呼ばれたの……」


 シャーリー越しに覗いたセーラも、こわごわと聞く。


「い、今は、どうされているんですか?」


「まだ、謹慎中……。たまに外での任務があるけど、単独で討伐している」


 淡々と言ったローズマリーに、シャーリーが突っ込む。


「マスターは?」


「いない……。ごめんなさい! 時間を指定されているから」


 断りを入れた後で、ローズマリーは食べるスピードを上げた。



 ――キャメロットの演習場


 屋内の広い場所に、正騎士3人が立っている。


 女神モードの室矢カレナに誓約(オルコス)を奪われた、愚か者たち……。


 不安げに立ち尽くす男女は、移動式のラックから、意を決してソードやハルバードを引き抜く。


 円卓(ラウンズ)の上位と思われる人物が、高い場所で宣言する。


『只今より、騎士3人への試練を行う! それぞれの従騎士との別行動によるオーダー違反! 騎士の象徴で力となる誓約(オルコス)を失った咎(とが)は、重い! 依頼したウィットブレッド公爵からも苦情が届いている! しかし、最後のチャンスを与えよう! 決闘に打ち勝てば、これらの罪を保留すると同時に、新たな誓約(オルコス)を貸し与え、従騎士の選定も許す!』


 動きやすいが、普通の鎧、盾を身に着けた男女は、その希望にすがる。


 手にした武器を握り直して、対戦相手が出てくる出入口を見つめた。


 ゴッゴッゴッ……


 暗闇からスキーブーツで歩くような足音が響き、誓約(オルコス)を身に着けた少女の登場。


 青い瞳は、前を向いたまま。


 広い場所に出たことで、片手を振るように長いレイピアを出現させる。


 腕の一部のように振るえば、ヒュッ! と、鋭い風切り音。


 従騎士としての誓約(オルコス)で、破損が目立つ腕や足のパーツに、頭、胸部、腰を覆うアーマーも。


 胸の片方は保護されておらず、壊れたまま。

 むろん、服を着ているが、セックスアピールに思える格好。


 無表情の少女だけに、乱暴された後のような軽鎧の姿とのギャップが激しい。


 ブーツと一体化した誓約(オルコス)の足を止めた少女は、ジャッと、床を削りつつ、レイピアを構える。


 シャーリー達と話していた、ローズマリーだ……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

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