↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/33

超空のテオフィル

室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!

https://hatuyuki-ku.com/?p=707

 白銀のプレートアーマーを身に着けた室矢(むろや)重遠(しげとお)は、はるか遠くにある洞窟のほうを見たまま、宣言する。


「共に女神カレストゥーナ様をお守りする、守護者(ガーディアン)……。同胞を自らの手で殺すしかなかった! その無念と彼らの怒り、今、見せよう!!」


 その瞬間に、重遠が立っている地面の周りが次々に砕け、まるで重力が逆になったように小さな島のように浮かぶ。


 重遠からも、白銀に金色が混ざっているオーラが噴き出ている。


「ディメンション、コオオオォォォルッ!!」


 右拳を突き出したのを合図に一筋の光が走ったと思えば、その洞窟がある丘ごと、天へ吸い込まれるように砕けていく。


 急激な突風が周りに吹き荒れて、室矢カレナが守っている円の内部を除き、やはり地面ごと吸い込まれる。


 それは局所的な世界の終わりで、何者も逆らえない滅び。


 反射的にハルバードを地面に突き刺して、それを支えにしたシャーリーだが、自分の周りは安全と分かり、息を吐く。


 洞窟のほうへ視線を戻せば、死霊術師のドゥクスがちょうど空へ吸い込まれていた。


 死んでいるのか、気絶しているのかも不明。


 上空にあるはずの青空と白い雲はなく、代わりに宇宙に浮かぶ惑星の数々や、正視し続けたら発狂しそうな三次元であり得ない構造物が並ぶ場所などが、スクラップで繋げたように展開されつつ、それすら瞬く間に切り替わっている。


 正気を削られたシャーリーが視線を戻せば、全てが終わっていた。


 世界の崩壊は止まり、元の――


「ヒッ!」


 そこにあったのは、丘とその中にあった洞窟がえぐれた穴ではなかった。


 空間が、ぼやけている……。


 靄(もや)がかかっているように見えるも、明らかに違う空間だ。


 ガシャリと動いた重遠が、見事な仕草で片膝をつく。


 低身長の少女とは思えない威厳のカレナは、満足そうに微笑む。


「流石です……。超空のテオフィル! あなたをガーディアンに任命したこと、誇りに思います」


「もったいない、お言葉……。あの3人も、これで浮かばれるでしょう」


 ガシャリと立ち上がった重遠の体から、各パーツが弾けるように飛んだ。


 いずこかへ消え去り、彼の雰囲気も変わる。


 元の口調で、カレナに話しかけた。


「満足したか?」


 ゆっくり息を吐いたカレナは、金色のオーラを引っ込めた。


 同じく元の口調で、答える。


「ああ、満足したのじゃ! また次元召喚《ディメンション・コール》を見るのは、現代文明が滅びる時だろうな?」


 どこか寂しげに呟いたカレナは、公爵邸の広間へのゲートを作り直した。



 ◇ ◇ ◇



 『神話伝承テオフィル』のコスプレを終えて、驚く面々に囲まれたまま、お茶会。


 円陣になるような配置のソファに座りつつ、ウィットブレッド公爵が述べる。


「ブルックウッド墓地の人形は、倒したか! ジェニーの死の刻印も、一部が消えたようだ……。『ブリテン諸島の黒真珠』の二つ名は、伊達ではないと」


「ルパート? このまま重遠に退治させていくが、ロンドンに不慣れじゃ! 付き添って案内する同年代が欲しい。できれば、男……。捜査できる身分証明書も」


 室矢カレナのお願いに、豪華なチェアに座っている公爵は頷く。


「すぐに手配しよう! ここへの襲撃も予想されるゆえ、彼らにも滞在してもらえるか?」


「承知した。……円卓(ラウンズ)は、この始末をどうするつもりじゃ?」


 カレナに詰問されたレノックスが、深々と頭を下げる。


「申し訳ございません……。あの正騎士3人については、私が責任をもって対応する予定です! 彼らの処遇を含め、あなた方へご報告させていただきます」


 公爵も、険しい顔だ。


「我らへの態度は、ラウンズの総意と見なしている。それを忘れないでくれ」

「……肝に銘じます」


 緊張した空気の中で、レノックスが命じる。


「シャーリーはここに残り、連絡役を務めなさい」

「……はい、マスター」


 不服そうな表情で、シャーリーが答えた。


 入ってきた執事が、大声を出す。


「失礼いたします! ただいま、アドラステア・リーディ・シェラフィール王女殿下がお越しになりました!」


 嫌な予感がする!


 けれど、このタイミングで抜けるわけには――


 冷や汗をかく俺に対して、周りがざわつく。


「王女殿下が!? お迎えしなければ……」


「私たちは、どうする?」


 カレナの発言に、動きを止めた公爵の返事。


「別室に……。私たちが応接室へ行く! 何かあれば、周りの者に言え」


 フフフ、また勝ってしまったか!


 どうやら、2周目に入った俺には、死亡フラグが遠慮して避けるようだ。


(これで、ユニオンと円卓からの高評価! 予定通り……)


 バタバタと、高位貴族らしくない慌ただしさ。


 公爵が、立ち去る。


 残されたのは、俺たちの給仕をするメイドや執事、それにシャーリー。


「自己紹介が遅れたが……」


 座っているシャーリーは、俺の後ろを気にしたまま。


 釣られて、俺も上半身をひねる。


 チュッ!


 振り向いた瞬間に、唇が当たった。


 悪戯っぽい青の瞳が、向き合ったままで離れる。


 紅潮した顔のメイドは、茶色がかった金髪ロング。


「エへへ……。来ちゃった♪」


 メイド服を着ている女は、誰あろう、アドラステア本人だった……。

過去作は、こちらです!

https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。