第十五話『二人旅』
どのようなモンスターを仲間にするか。それを検討するために、図書館でモンスター図鑑とにらめっこをしていたのだけど……。
「なんか、ピンと来ない」
「実物を見ていないからかな? 実際に会ってみると違う感想を持てるかも」
キュウちゃんの提案に従って、私は草原を歩き始めた。目的地は海。空を飛ぶ羽根の生えたシャチというものを見てみたくなったのだ。
海まで続く馬車はあるものの、それは海水浴場として使われるような海岸に続くものであって、モンスターが多く現れるような場所からは程遠い。
それに他のモンスターの観察もしてみたいということで、のんびりと歩いて向かうことにした。
目的地まで片道二時間ほどだというから、温泉へ行くよりは遠くない。けして近くはないし、寄り道はするだろうし、もっとかかると見ていいだろう。
犬のモンスターは、グルルと唸ってちょっと怖い。
「仲間にするとめっちゃ懐くよ」
「顔を舐める? あれって、舐められて直ぐに拭くと印象悪いかな?」
「うーん、どうだろう。犬を飼っていないから分からない」
愛情表現で考えるのなら、私はきっと猫派なのだろう。
ツチノコは、草の陰からジャンプで現れ、毒霧を吐いてくるから厄介だ。
「ツチノコを仲間にしたら、何か意味あるの? 懸賞金が貰えるの?」
「そんな現実的な要素はないかなぁ。巨大化しないから乗れないし、でも触った感触は気持ちいいって言うよ。モンスターは二体まで仲間にできるから、癒し枠として入れるのも人気だとか」
「戦闘では役に立たないの?」
「投げてぶつけて毒霧を吐いてもらうのが鉄板」
可哀想。そう感じてしまえば最後、仲間にしようとはなかなか思えなかった。
川沿いに出た。
オオサンショウウオのようなモンスターが、のんびり寛いでいる。けれど、そのサイズが軽自動車ほどはあるから驚きだ。そして、とても強いらしい。
「向こうから襲ってくることはないけれど、こちらから仕掛けると面倒だよ。身体がぷにぷにしていて物理攻撃は効きにくいし、粘液を出して魔法を防ぐし」
「どうやって倒すの?」
「根気」
根気と婚期は粘るもの。頭の中のサチがそう言った。
「挑戦してみる? 負けても街に戻るだけだし、気楽に挑戦してみてもいいけど」
「うーん、でも、今は海に行きたいし……」
強いモンスターと戦ってみたい気もするけれど、今はモンスターの観察が主となっているから、ここは涙をのんで見送ろう。
いや、そこまで悔しくもないし、見送られるのは私達なのだけど。
「そう言えば、さ。アンティはテレビはよく観る? あ、昨日観たんだ。私は動物番組をよく観るんだけど、テレビの動物番組って、おもしろ動画か感動系かばかりでしょ? もっとこう、動物園とか野生で見るような、動物の生き様を見てみたいんだよねぇ」
「ライブカメラみたいなやつ?」
「それだとちょっと味気ないけど、でも、製作者の意図を持って動物を演出するのは、ねぇ。ちょっと穿った見方かもしれないけれど」
「じゃあ、動物のどんなところに感動する? 笑える?」
「そうだなぁ……」
少し間が空き、キュウちゃんはこう答えた。
「でっかいワニとか、動物の行動で驚いている芸人のリアクション?」
それはきっと、製作者の意図に沿っているよ。そして私達も、川沿いに沿って進んでいく。




