第十二話『キュウちゃん』
ピザをお供に弓姫から聞いた話をまとめると、概ねゲームの内容における説明が大部分であった。
このゲームの目的は、地図を埋めること。
プレイヤーがメニュー画面から確認できる世界地図は、白紙のものとなっている。さながらGPSのように自身の移動とリンクして、その全容が現れていく仕掛けだ。
都道府県をモチーフにした大陸や島はいくつもあり、時には船や飛行船が必要となる。
それはプレイヤー自身も手に入れられるため、全てを自分で行うことも、運営が運行するそれらを利用するのもいい。
どうやって進めるのかは、全てプレイヤーに委ねられているのだ。
話を締め括るかのようにピザも食べ終わり、私達は早速、埋まっていく地図を体感するために家を出て街を離れた。
おぉ、これはまるでミミズが這ったみたい。いや、ナメクジかな? アリの行列? もっとお洒落な表現は出来ないものか。
「それはまるでヘビ花火」
「そういう地味な花火が好きなの?」
唐突な発言で勘違いされてしまったけれど、実体験ながら私の好みには合っていると思う。派手なものより、地味な方が好き。ぼーっと見ていたい。
「目的は分かってもらえたと思うけど、肝心なのはモンスターとの戦闘は避けられないこと。このゲームは基本的に、やられる前にやっちまえが基本戦術なの。だから、弓は結構効率がいいよ」
そう言いながら、弓姫は弓を構えて矢を継がえた。
「弓に関連する依頼も結構あって、特殊能力を貰えたりするの。スコープ機能なんてその例だよね。ゲーム内では千里眼って名前だけど」
「千里って何メートル?」
「え、最初の質問がそれ!? ……えっと、分かんない」
ゲーム内にいるとネットの情報を閲覧できないのが不便、かな? まぁ、ゲーム内に居なくても、あまり意味はなかったのだけどね。
何故なら、それらは画面で表示されるものではなかったのだから。
確認できるのは文字ではなく、意味不明な文字の塊。普通の人工知能ならそれで理解できていたのだろうけれど、何故か私は、それが全く理解できなかった。
だから、私の知識の殆どはマスターから教えられたものなのだ。
矢が放たれて、弓姫がガッツポーズをする。
「当たったの? 弓姫」
「うん、命中。あ、私のことはキュウちゃん、キュウとでも呼んで」
「マラソンをやっているの?」
「え、やってないけど?」
……マスター、どうやら通じていないようです。
「私はマラソンじゃなくて、弓道をやっているの。練習になるかと思って、サチさんに勧められてゲームを始めたんだけど……」
「だけど?」
「爽快すぎて射法八節を忘れそう」
意味が分からないけれど、その顔に笑顔はなかった。
「忘れたら、どうなるの?」
「どうなると思う?」
まさかの質問返し。
「えっと、タライが落ちてくる」
「コントじゃないんだから。でも、落ちてくるには落ちてくるか。……いや、コントというのも間違いではない?」
あら、予想外にニアピン?
「じゃあ、水が落ちてくるの?」
「まぁ、水も落ちてくるかなぁ。年寄りの冷や水」
それはお年寄りが若者のように振る舞う言葉だったと思うのだけど、果たして正しく使っているのかどうか。
「正解はね。……雷が落ちる。めっちゃ怒られるんだよぉ。あの顧問、礼儀には厳しいから。ま、ゲンコツが落ちないだけマシだよね。グーはコンプラに喧嘩売ってるもん」
「……じゃあ、キュウちゃんは頭はパーなの?」
「うん? ビンタも駄目じゃない?」
マスター、あなたの知識は古臭かったのかもしれません。いや、私のコミュニケーション能力は棚に上げるけど。




