革ベルトおっさん再び
最終試験も終わり、ついに今日から本格的に学園生活が始まる。
入学式から突如のザ・ホープリッパー戦に、昨日の最終試験。
たった2日だったが、非常に濃い2日間だった。
だが、俺はしっかりと乗り越えた。入学も出来たし、レベル11の実力もバレていない。
エリスとも顔見知りになれたし、ポポロというこの世界に来てから初の同性の友達もできた。――あちらが友達と思っていてくれればだが。
今のとこ全てうまくいっている。
軽やかな足取りで学園の敷地内に入り大講堂へ向かう。
大講堂内に着席し、学園長や教師陣らによる歓迎の挨拶が終わる。
革ベルトおっさん久しぶりに見たな。それにノーブラ疑惑の毒舌シスターもいる。
今日こそはつつがなく式は進み、最後にマナストーンというスマホと同じくらいのサイズの石板を配られる。
「諸君!これはマナストーンといって学園から様々な情報が送られる端末だ。貴重なものなので無くさないように。それでは使い方を説明する・・・」
それから学園長による端末の説明が続いた。
1人1台ずつ支給され、自分の魔力を流し込むことによって持ち主の登録が完了される。
学園側からの連絡や、人それぞれの魔力の形――魔紋というらしい。指紋の魔力版のようなものを交換すれば音声による対話やメッセージを送りコミュニケーションをとることができる。
まぁ簡単に言うとスマホみたいなものだ。
ただ異世界は日本ほど便利では無いようで学園の敷地内でしか使えないということだ。
今日も隣に座っているエリスから聞いた話だと、この世界には学園外でも使えるマナストーンもあるが、とても貴重で権力者や大金持ちしか所持していないらしい。
魔力を流し込み、所有者の登録が完了する。
「皆、登録は終わったな。ではこれより各自のクラスと試験結果の順位をマナストーンに送るので確認してくれ。」
すると石板の表面に、クラス通知と試験結果という文字が浮かび上がる。
その文字をタップすると、石板の表面に文字が映し出される。
俺のクラスは5組。そして順位は151位。
・・・確か今年は151人の新入生がいると言っていたな。
まぁ順当にビリか。
思い返せば入学試験の座学が1問もわからなかったので恐らくビリ。続く戦闘試験でも革ベルトおっさんに一発でふっとばされ、魔法試験では魔法を放つこともできなかった。昨日の最終試験では開始5秒で場外失格。
これでビリじゃ無い訳がない。学園側からの俺に対する疑いは無事晴れたと言っていいだろう。
ただ、これからも油断するとすでにレベルが11あるという事実はバレかねないのでなるべく目立った行動は控えるに越したことはない。
「マナストーンってすごいね!ナツヒ君何組だった?」
とりあえずの試験結果に安心していると、右隣に座るエリスから話しかけられる。
「あぁ、俺は5組だった。エリスは?」
「えっ!本当に?私も5組!やったー!一緒だね!」
――きた。
俺の学園生活の勝ちがこの時点で確定した。少なくとも1年間は。
しかもエリスも一緒のクラスだということを喜んでいてくれている。
もちろん、それは顔見知りだからという部分で喜んでいるのはわかっている。恋愛的な気持ちでは無いと。
だけど弾けるような笑顔で喜びを表現する性格が良くてかわいくて、ついでに巨乳なこの子と同じクラスにいられるだけで、サラリーマン生活よりも楽しいという事は間違いない。
「ポポロは何組だった?」
ポポロとも同じクラスだと更に楽しくなりそうだと思い尋ねる。
「僕は2組だ。2人と同じクラスが良かったな・・・。」
気弱そうな印象の眉毛がさらに下がり、哀しそうな表情を作るポポロ。
「そっか・・・。どうせなら同じクラスが良かったな。でも別々のクラスでも仲良くしてくれると嬉しいな。」
ポポロに素直な気持ちを伝えると「もちろんだよ!」という言葉と共に、見る者を優しい気持ちにさせる笑顔をこちらに向けてくれる。
まだ出会って3日だがポポロのような優しくて勇気のある人間と知り合えて良かった。
「そうだ!ポポロ魔紋の交換しておこう!」
お互いのマナストーンに魔力を流し込み、魔紋の交換をする。
そしてポポロと魔紋の交換をした流れでエリスとも交換をする。
意中の女子と連絡先を交換する際に、下心を感じさせない為の高等テクを使う。
これで、エリスとポポロとは学園内にいる限りはいつでも連絡をとれるようになった。
その後は学園生活の説明があり、各教室に移動する事になった。
オルニア学園の教室は、床や壁が重厚な石造りで――そもそも建物全体が石造りではあるが――日本の学校というよりは、宮殿や中世ヨーロッパのお城を彷彿とさせるような雰囲気だ。
教室内には、質の良さそうな木製の長机と椅子が何台か並んでいる。
名札などは特に置いていないので、好きな場所に座って良いようだ。
教室には俺とエリスが1番乗りだったが、教室全体を見たいので前ではなく一番入り口から遠い後ろの席へ座る。
当たり前のようにエリスもついてきてくれて隣に座ってくれることに密かに喜びを覚える。
隣を見ると、スカートから伸びるエリスの健康的な太ももが眩しい。
更には机の上に巨大な胸を乗せている。
え?見ろってこと?それとも楽だから?その意図はわからないが、絵面の破壊力が凄まじい。
意識を持っていかれそうになるので、努めて視線を上に引き上げ前を見るようにする。
エリスは、幸い俺の視線には気付いていないようで教室の出入り口あたりを見ている。
俺もエリスの視線につられ教室に入ってくる面々を眺める。
エルフやヒューマン、ドワーフや獣人など多種多様な種族の学生が入ってきて、改めて異世界にいるということ実感させられる。
そして、その中にやたら輝く金髪を無駄にかきあげながら高らかに笑う生徒はいなかった。
――良かった!もはやそこまで嫌いな訳では無いがなんとなく同じクラスにはなりたくないと思っていたので、勇者様がいなかった事に安堵する。
生徒が全員着席し、そわそわと教室内を見渡すものや正面を見つめるもの、隣に座った生徒同士で話しているもの。それぞれの様相を呈す生徒たち。
しばらくした後、教室に入ってきたのは、スキンヘッドでいかつい筋肉隆々の身体をベルトのような防具で包む偉丈夫。
――入学試験で俺を容赦なくぶっとばした革ベルトおっさんだ。まさか担任か?
「おはよう!わしがこの1年5組の担任になるベルトホルト=オーシャンだ。3年間みっちり鍛えてやるから覚悟しておけよ!がっはっは!」
・・・。やはり担任か。服着ないのか。それに本名がほぼ革ベルトおっさん。勝手につけたあだ名と名前が近かったことに少しだけ謎の満足感を覚える。
それに3年間と言っていたな。オルニア学園はクラス替えが無いようだ。エリスと3年間一緒のクラスだという事がわかり心の中のスタジアムで優勝したかのような歓声が沸き上がる。
それから、革ベルトおっさん改めベルトホルト先生による学園生活についてのオリエンテーションが始まった。




