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ししとう

 給湯室に入ると、カゴいっぱいのししとうが置かれていた。

 どうやら誰かが家庭菜園で採れすぎた分を持ってきたらしい。


「ししとう、いっぱいだね」

 隣で立ち止まった先輩が、ひとつ手に取って、指先でころころと転がす。


「持って帰らないんですか?」と聞くと、先輩は笑って首をかしげた。


「私ね、焼くよりも揚げるほうが好きなの。ししとうって、揚げると本当に美味しいんだよ」

 そう言いながら、わざとらしく小さく息をついた。


「でもね……一人分だけ揚げるのって、ちょっと面倒なの」

 ちらりとこちらを見て、唇にいたずらっぽい笑みを浮かべる。


「誰か、ししとう揚げに来てくれたりしないかな」


 古い蛍光灯の高周波の音が、静まり返った給湯室にかすかに響いていた。

 その中で聞いた先輩の半分甘えるような声だけが、妙に鮮やかに耳に残った。

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