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英雄を狩る少女  作者: ジャクロの精霊


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忘れられない飢え

村の女が影の中に消えた後、通路は静まり返った。


そこに残されたのは、彼女たちだけだった。


セツナ。


ミラ。


そして、レナ。


空気は重く感じられた。


恐怖からではない。


真実から。


「なぜあなたなの?」セツナが尋ねた。


レナはすぐには答えなかった。


彼女は両手を組んだ。


地面を見つめた。


そして、口を開いた。


「だって、私には見えるから。」


沈黙。


セツナは口を挟まなかった。


「彼らも見える…」レナは続けた。


「でも、見ようとしない。」


ミラはわずかに首を傾げた。


「どうして?」


レナは苦笑いを漏らした。


「だって…」彼女は家を見上げた。「…餓死するよりはましだから。」


沈黙。


「彼が来る前は…」彼女は続けた。「私たちには何もなかったの。」


彼女の声が変わった。



低く。


より現実味を帯びて。


「収穫は二度も失敗した。」


「家畜は死んだ。」


「商人は来なくなった。」


沈黙。


「人々は物を売り始めた…」

「そして、自分自身を売るようになった。」


トンネルの中を風が弱々しく吹き抜けた。


「去っていった者もいた。」


「そして…去らなかった者もいた。」


沈黙。


ミラは動かなかった。


セツナも。


「彼が現れた時…」レナは言った。「彼は私たちを救ってくれた。」


その言葉は、他のどんな言葉よりも痛かった。


「彼は食べ物を持ってきてくれた。」


「彼は獣を殺してくれた。」


「彼はすべてを再び動かしてくれた。」


沈黙。


「そして、彼は尋ね始めた。」


セツナはその部分を既に知っていた。


しかし、彼女は口を挟まなかった。


「最初は公平だった。」


「それから…公平じゃなくなった。」


沈黙。


「でも、その頃には私たちはもう彼に依存していた。」


ミラが静かに言った。


「他の人たちは?」


レナは一瞬目を閉じた。


「彼らは受け入れた。」


「恐怖から?」


「必要に迫られて。」


沈黙。


「彼らはここで食事をする。」


「彼らはここで寝る。」


「彼らはここで明日のことを心配しなくていい。」


間。


「だから彼らは受け入れた。」


セツナは彼女を見つめた。


「あなたは受け入れないの?」


レナは首を横に振った。


「できない。」


沈黙。


「彼が外で何をしているかを知ってしまったら。」


それがすべてを変えた。


「内側は…耐えられる」と彼女は続けた。


「でも外は…」


彼女は言葉を最後まで言い切らなかった。


言う必要はなかった。


刹那は彼女の視線を受け止めた。


そして…


何かが彼女の中で蠢いた。


記憶。


暗闇。


冷たさ。


飢え。


通り。


ゴミを漁る汚れた手。


古くなったパン。


誰かがそれを彼女から奪い取る。


殴打。


痛み。


沈黙。


孤独。


刹那は一度瞬きをした。


彼女は戻った。


通路。


レナ。


ミラ。


しかし、過去の残響は残っていた。


目には見えない。


しかし、確かに存在している。


ミラはそれに気づいた。


「刹那様…?」


刹那はすぐには答えなかった。


彼女は静かに息を吐き出した。


「…続けて。」


レナはためらった。


しかし、従った。


「彼はここにはいないわ。」


沈黙。


「彼の声を聞いたの。」


セツナは顔を上げた。


「いつ?」


「数日前。」


「誰と?」


レナは唇をきゅっと引き締めた。


「他の誰かと。」


空気が重くなった。


「他の誰か?」


「英雄。」


沈黙。


ミラが先に反応した。


「本当に?」


レナは頷いた。


「姿は見ていない…でも声は聞いた。」


沈黙。


「彼らはルートについて話していた。」


「村について。」


「『資源』について。」


その言葉は石のように重くのしかかった。


セツナは動かなかった。


「他には?」


レナはためらった。


「彼らは…仲間の一人が倒れたと言っていたわ。」


完全な沈黙。


ミラは声を潜めた。


「クリムゾンが…」


セツナは何も言わなかった。


しかし、彼女は理解していた。


その知らせは既に広まっていた。


「彼らは驚いていたわ」とレナは続けた。


「予想していなかったのよ。」


「ガレスは何て言ってたの?」セツナが尋ねた。


レナはためらうことなく答えた。


「何も変わらないって。」


沈黙。


「ただ…もっと速く動くってこと。」


空気が冷たくなった。


「どこへ…動くの?」ミラが尋ねた。


「どこか別の場所へ。」


沈黙。



「別の場所。


別の場所。


別の場所。


刹那は目を細めた。


「ここだけじゃない…」


「ええ」とレナは答えた。


「最初からそうだったわ」


沈黙。


重苦しい。


断固とした。


刹那はもはや一人の男を見ていなかった。


彼女は一つのシステムを見ていた。


「あと何人?」と彼女は尋ねた。


レナは首を横に振った。


「分からない」


「でも、まだある」


「ええ」


沈黙。


ミラは静かに言った。


「つまり、これは…その一部に過ぎないのね」


「ええ」


刹那は一瞬目を閉じた。


そして目を開けた。


彼女の視線はもはや冷たいだけではなかった。


それは…もっと深みがあった。


より強い決意に満ちていた。


「行かなきゃ」と彼女は言った。


ミラはすぐに頷いた。


「ええ、 「せつな様。」


レナは一歩前に出た。


「あなたは…?」


彼女は言葉を最後まで言い切らなかった。


しかし、その問いかけは確かにそこにあった。


せつなは彼女を見た。


「まだだ。」


沈黙。


「でも、もうすぐ。」


レナは視線を落とした。


安堵した様子も、落胆した様子もなかった。


ただ…待っているだけだった。


他の皆と同じように。


「戻ってきなさい」とせつなは言った。「そして、何も変わらずに。」


レナは頷いた。


「分かりました。」


「誰も疑ってはいけません。」


「はい。」


ミラは一歩後ろに下がった。


「さあ、私たちはもう行かなければなりません、せつな様。」


せつなは頷いた。


「ああ。」



彼女は振り返った。


そして通路を戻り始めた。


ミラは彼女の後を追った。


戻る道は速かった。


静かに。


緊張感に満ちていた。


一歩一歩が重要だった。


一秒たりとも無駄にできなかった。


もし誰かに自分たちの不在に気づかれたら…


すべてが崩れ去ってしまうだろう。


二人は二階へ上がった。


棚を押した。


すべてが元通りになっていた。


まるで何も起こらなかったかのように。


家の中は…


何もかもが以前と同じだった。


同じ秩序。


同じ静けさ。


同じ嘘。


刹那は何事もなかったかのように歩いた。


見るのも。


二人はそれぞれの持ち場に戻った。


それぞれの役割に。


仮面を被って。


「刹那様…」ミラは囁いた。


「ああ。」


「これはもっと大きい。」


沈黙。


刹那は答えた。


「ああ。」


「どうする?」


刹那家の中を覗き込んだ。


システムを。


それを持っている男を。


「まず」

それとも…ここで終わりにしましょうか。


沈黙。


「では…他に何が残っているか見てみましょう。」


ミラは頭を下げた。


「はい、せつな様。」


せつなは一瞬目を閉じた。


飢えの記憶が残っていた。


弱さとしてではなく。


真実として。


「もうこれ以上は許さない」と彼女は呟いた。


ミラは絶対的な冷静さで答えた。


「許しません、せつな様。」


せつなは目を開けた。


そして今度こそ…


迷いはなかった。

この章をお読みいただき、本当にありがとうございます。


レナの過去、刹那の回想、そして壮大な計画の解明を楽しんでいただけたなら、ぜひお気に入り登録、ポイント、コメントで応援してください。

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― 新着の感想 ―
 身売りや餓死するより、依存で自我放棄気味な生活の方がまだ幾らかマシに感じてしまうとは、笑えないですね。声に出してる間のレナさんの心境について深入りする気になれませぬ。  他の英雄と結託して進行中の、…
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