第四章後半の解説
この話はアリシアがメインです。と言いながら、最初はグレイブ視点ですね。
「……死んだか」
乾いた呟きをグレイブは一人漏らす。
勝者の出す声の響きとしては虚しくありすぎた。
しかし、直後、微かな生命の気配に、グレイブは顔を上げた。
ここは、これまでのあとがきを読んだ方ならわかるかもしれませんが、アレスたちを殺そうとしておきながら、肩を落としかけ、そして生きていることが分かって、ほっとしているわけです。本当に面倒くさいキャラですね。
そして、立ち上がったのはアリシアでした。
ここは意外だった人も多かったかもしれません。まあ、しかし、先にも言いましたが、私はやはり仲間の活躍をこの作品で書きたかったので、私にとってこのタイミングは必然でした。
グレイブが推測でアリシアが生き残った理由をいいますが、ここでアリシアは反論します。
「私だけの力ではありません。タリクさんが死力を尽くして防いだから。アレスさんが身を挺して守ったから。ヒースさんが最後まで私の前に立っていたから。私は……立ち上がれたんです……!」
激しい言葉を吐き、アリシアは己を責めるように言う。
「そうやっていつも守られてきたんです……!弱い、私は……!」
胸を抑えるようにうつむいたアリシアが顔を上げて言う。
「だから――!」
アリシアは杖を握りしめ、叫ぶ。その語気に自分の感情をありったけのせて。
「今度は私の番です!この命ある限り!アレスさんたちを私が守る!なにがあっても!絶対にです‼」
アリシアらしい優しい性格と責任感。そして自己評価の低さですね。
自分で言うのもなんですが、この健気さ好きです。
それに対するグレイブの返事がこんな感じです。
「一応、言っておくが、アリシア」
足元に闇を広げながら、穏やかな声で。
「俺はお前を弱いと思ったことはない」
目を見張るアリシア。続けてグレイブは言う。
「お前の仲間も、そう思っているはずだ」
これグレイブもう魔王でも何でもないよな、とか思いながら書きました。そうです。滅亡の焔以降から、グレイブはもう魔王としての戦いではなくなっているのです。残っているのはアレスたちへのリスペクト、そして異世界転生を止めるための最後のとどめ、自分に転生者殺しを突き刺すだけ、彼からすれば事後処理です。
実はこの前の「――とどめを刺すだけだ」は、アレスではなく、自分自身なわけです。誰にもそんなことは言ってないし、何ならアレスを殺すと口では言っているのですが、本音ではそんなところです。ここで書いておきながら、小説内で文章化はしたくなかったので、やめました。ミスリード多すぎてひどいですね。
そしてアリシアは泣きそうになりながら詠唱します。グレイブも詠唱します。
私はこの詠唱を慣れない頭で必死に考えて作りました。厨二心はあっても、それを作り出す語彙力の欠如に泣きそうになりながら考えてまあ、何とか出来ました。いやはや……
そして、炎の化身となったアリシアにグレイブは眼を細めます。もう気持ちは親心です。
バトルシーンですが、ここは概要ベースで書きました。すでにバトルシーンは長く、あまり細かい描写はもう必要ないと思って飛ばし気味で書きました。
そして最後の一撃、アリシアはグレイブを打ち破りましたが、炎は届かず、力尽きて倒れます。アリシアの勝利、しかし、届かない。そんなところで書きました。まあ、その後アレスがあるので、こうならざるを得ないですね……。
その後「聖職者タリク」で、ヒースとタリクが立ちふさがります。その二人を前にグレイブは嬉しさで笑みを漏らします。
しかし、ヒースは一刀で倒れます。展開ベースでいうと、すでにヒースの見せ場は終わったからですね。そして、ここではタリクの話になりますが、派手な技はないです。その代わり、タリクの内心の語りであったり、矜持であったりを伝える会にしています。
「私は……あなたとは友人だと思っていました。いえ、正直言えば……今も、そうです」
「……」
グレイブは無言で続きを待つ。
「数々の冒険の中で……あなたはいつも私たちに手を差し伸べ、導いてくれた。時に笑い、酒を飲みかわし、喜びを分かち合った。私は――楽しかった。あなたと言葉を交わすことが。ただ、一方で……気がかりもありました。あなたはどこか……私たちに一線を引いているような気がして。時折見せるあなたの遠い目は……いったいどこを見ているのだろう、と……」
沈みゆく夕日に目を向けていたタリクは、グレイブに視線を戻す。
「今なら、分かります。ずっとあなたは……苦しんでいたんですね。一人で」
「……」
「真実を知れてよかったです。この是非はともかく――友人だと思った私は間違っていなかった。そう思えた気がして」
今回グレイブの裏切りでアレスのショックが表立って出ていました。が、ここでタリクの本音がでるわけです。落ち着きを払って見せていましたが、タリクもかなりショックを受けていたということです。
友人と思っていた彼は、その本心を何も言わず、それどころか国を滅ぼすほどの悪人だったのか。
まあ、現実にいるとやばいですね。ショックもむべなるかなです。
「グレイブさん。一つだけ聞かせてください。これが……あなたの望んだ結末ですか?」
「……ああ」
グレイブはほのかに笑いながら短く答えた。
「……そうですか」
タリクも微笑で返す。
「あなたの本心は――」
その言葉にグレイブは遮ります。
「もういいだろう。今更そんなこと。どうでもいいはずだ」
このあたりのグレイブは徹底しています。自分の本心なんてどうでもいい。そんな思いで、最初から最後までアレスたちに対しています。
そして、タリクにどけと言いますが、タリクは首を振ります。
なら、戦う一択です。当然、グレイブの一刀でタリクは倒れます。しかし、そこでタリクの神官としての矜持により最後の置き土産を残していきます。
「よかったです、あなたもそう思ってくれて。それと――」
これ以上なく、勝ち誇ったような、しかしどこか優しい笑みで。
「私の本職は神官。仲間の傷を癒すことにあります」
下手な派手な技よりいいな、と自画自賛しながら書きました。このあたりタリクの良さを持たせて締めることができたと思います。
最後「勇者アレス」です。魔王と勇者の一騎打ちです。古典的、王道、かつ最も輝かさなければならない最後の見せ場です。
しかし、まあ、ここはもう捕捉するようなことはなく、場面通りの内容です。グレイブは相変わらず、嘘を交えて言っていますが、もうこのあたりは記載の通り、最後の締めに向けて気持ちがこれ以上なく高揚しています。
「君は……!」
「なんで……!これだけのことをして……!」
「そんなまっすぐな目をしているんだっ……!」
雄弁なのに肝心なことは何も語らないグレイブなので、アレスから見れば本当に理解不能ですね。
もうこのあたり、グレイブはすでにほぼ報われた思いになっています。負けて本望なところです。
そして、アレスは続けて言います。
「君はいつも……俺たちの行く先にいた。行く先々で俺たちを……助けてくれた。多分、人知れず人々を救いながら。いつも誰かのために。この数年間ずっと犠牲が少しでも出ないように……抗ってきたんだ」
かつての冒険の日々を思い起こしながら、アレスは言う。
「君は物語にいるような英雄ではなかったけど、でも俺にとっては英雄のようで……多分救われた誰かにとっても……そうだったはずだ」
救われて笑顔になった人々。グレイブとともに助かったことを喜び合った日を、昨日のようにアレスは感じて、目を細める。
「今思えば、それは君にとっての何かの罪滅ぼしだったのかもしれないし、純粋な厚意ではなかったのかもしれない……。使えるはずの力を抑えたために救えなかった人々もいたんだと思う。だけど――」
悲しさで顔を歪め、アレスは震える声で言った。
「俺はそんな君のことを……尊敬していたんだ……!」
グレイブは目を丸くし、ふっと笑った。
「尊敬、か……。こんな俺を、な……」
「だけど、今の君は……許せない。絶対に……」
人々を殺め、国を滅ぼし、荒野へと変えたグレイブ。どれほどの悲哀があったとしても、その行為をアレスは許せない。許してはならない。
「君を倒す!倒して終わらせる!君を止めるために……!」
勇者のルーツが実はグレイブのところであると語ります。そして勇者としてでもなんでもなく、アレス個人の思いとして、止めなければということで、グレイブに立ち向かいます。
いやあ、どうですかね。結構、勇者的かなと思いながら、個人的にここも好きな場面でした。
続く「勇者アレス――最後の戦い」で、最後の戦いになります。台詞なしで書きました。
このあたりはどう見せようかなと演出に悩みましたが、この長い戦いを締めるには台詞ではなく、意志や感情を見せるのが一番かなと思いました。
なので、可能な限り行動と状況で、激しさと気持ちの強さを見せるよう努めました。
その戦いも終わり「星へ還る転生者」になります。
白い世界は精神世界で、そこに集まった理屈は何もないです。が、それでもなにか言われたら、グレイブの最後の魔法の一つとか適当に理屈を付けます。
それは置いといて、この場面で種明かしになります。大筋の話が語られ、グレイブはアレスたちに一人一人言葉や思いを届けて、この世界を去ります。
ここはもうこれまでの嘘はなく、すべて本音です。そして格好つけているシーンですね。
強いて言えば、「あなたたちの世界に幸があらんことを!」というのは、黒淵深志としてではなく、いつもアレスたちの前にいたグレイブとして言っている、くらいですかね。お前とかではなく、あなたたち、というのがそういう表現のつもりです。
そんなところです。タリクのシーンは後から見返せば、もう少し描写入れてもよかったですね。(もうちょっと友人らしい描写)
さてここまでですが、グレイブの出番が終わりました。非道を行ったが、実はいい人風にグレイブを書き、最後は救われた感じで締めました。
人によってはこのあたり評価が分かれるところでしょう。悪いことしておいて、被害者ぶっているとか、いい人っぽく見せるのもどうなのか、という見方はありそうです。
改めて言うと、グレイブは間違いなく罪を犯しています。これは許されない行為です。ただ、この救われた云々の話はあくまでグレイブの気の持ちよう一つで表現されているものなのです。最後、格好つけているのも、別に許されているわけではないのです。ただ、そのグレイブにその行動の自由があって、そうしているだけなのです。もうここまでやり切ったら、彼はもうこうしたくなるだろうなと思って書いています。
まあ、要するに筆者の言い訳です。勝手にありそうな非難を想定して、日和った感じで言えば、グレイブだったらそうするだろうと思って書いているだけです。私がそうしたいから都合よくそうしたとかではないです。まあ、日々なにがしかに絶望している筆者は、こういうキャラクターに救いがあってほしいと思ってもいますが。(やり込めて何か得するでもドラマ性があるでもないですし)
ただ、やっぱりこのシーンのグレイブは独善的なやり方が最後の死によって美化されている側面もあって、ちょっと行きすぎかなとも思わなくないです。まあ、しかしやむなしですかね。
個人的にはグレイブも注目ですが、アレスにも注目してほしいです。
「――出会えたのは偶然だった。フォルトナの町でのなんてことはない魔物討伐。そこでお前たちと初めて会った」
その口調は優しく、なつかしさに満ちていた。
「苦戦しながら勝利するお前たちを遠目に見た。――特段何も思いはしなかった。勝つこともあれば、負けることもある。当事者にとっては輝かしい冒険譚でも、俺からすればありふれた戦いの一つでしかなかった。ただ、どこか胸に引っかかるものがあった」
グレイブは口元を緩め、空に息を吐く。
「それがわかるまで時間がかかった――だが、ある日気づいたんだ」
そしてアレスを見て言う。
「希望だ」
続ける声は静かで、温かかった。
「お前たちが助けた人々の笑顔――そこには他にはない希望があった。この絶望的な世界には救いがあるのだと信じる力が。まだ、これからもこの世界を精一杯生きていこうという活力が、湧き上がっているかのようだった。それはただ救われたから生まれるものじゃない。お前たちが誰かのために全力だったからこそ、それを見た人々の心を強く打ったんだ」
グレイブは眩しそうに目を細めて言う。
「それに気づいたとき、俺の疑問は確信に変わった。本当にこの世界を救い、新しい時代を作るのは――お前たちのような人間なのだろうと」
希望の存在というのは簡単になれないです。日陰者から見た眩しい希望。万の称賛よりも響く賛辞であり最高の尊敬の言葉だと思います。
それを受けるのはアレスたち。ただ強いから勇者なのではなく、本当に希望なのだと、他でもない、最後の魔王がそう言ったわけです。こんな状況はなかなかないと思いますし、それだけアレスたちが素晴らしい存在ということを言いたいわけですが、ただ、ちょっとその冒険の描写を知らない読者は、やはり伝わりにくいですね。個人的に台詞は好きですが、刺さるとしたら、アレスたちだけなのかなと。
「俺からも一つ聞かせてくれ。これからの世界、お前は何を望む?」
アレスは顔を上げ、短く答えた。
「平和な世界を望む」
そして、強く言い切る。
「君のような、彼女のような悲劇を二度と生まないように」
これだけの惨事があって、なお、グレイブや白井綾香という存在に救いを与えたかったと思える精神性はやはり勇者なのだと思います。その覚悟や決意は短いです。が、何よりも強いです。グレイブの台詞は基本長く、特徴的なので、それにやっぱり引っ張られてしまうと思いますが、アレスの純粋なしかし、それだけでない懐の深い優しさ、行動するという決意が個人的に好きだったりします。
ことの善悪をただ長々と論じるのではなく、どんなことをしたいか、どう救いたいか、それも希望の一つのような気もしますね。
なお、アレスたちがただ強いだけのくそ野郎集団だったら、多分白井綾香は死んでいません。グレイブはアレスたちを助けず、人類は苦境にたったまま、多分その勢力は大分小さくなっているでしょう。仮に白井綾香をそのくそ野郎のアレスたちが倒したとしたら、グレイブは間違いなく、なりふり構わずアレスたちを滅ぼしに行きます。四人組で戦わせたりはさせません。城内でも待ちません。暗闇からの各個撃破、アサシン的に無力化して、殺していると思います。異世界転生を止めるとかそういう話ですらなく、多分グレイブは虚無の復讐者になっていると思います。
もう一つ言うと、グレイブを生かすか殺すかで悩みました。多くの作品で悪行と呼ばれる行為をした敵役は大体死ぬわけですが、これを改めてどうすべきかどうか。そう悩みながら書いていました。ただやはり書きながら、グレイブは生きることをどう考えても望んでいないことが分かったので、潔く退場してもらいました。
まあ、その終わり方としては、やはりそうなるべき締めくくりだったと思います。
そしてついに最終章。アレスが王様になりました。サブタイトルは「白い羽が運ぶ未来」。
おしゃれなタイトルです。これはCopilotさんが作りました。他は全部私で考えたのですが、これはちょっと難しいなと思って聞いたら、これが出てきましたね。すごいです。
王様として、穏やかではありますが、平和を築いていこうという決意をアレスに語ってもらいました。
アレスたちの仲間サイドはみんな生きている感じを見せるために描写も加えました。ミレーゼとイリスが死んでいたらそれはちょっと、ですし。ややご都合な面はありますが、仲間サイドに犠牲はなく無事世界は平和になりました。
墓の描写も少し情緒ある感じに仕上げたつもりです。分かるかと思いますが、白井綾香の墓を作ったのはグレイブです。非道を行った白井綾香ですが、被害者の一人と思っていたグレイブは誰にも見つからない場所で供養した感じですね。
このあたりも賛否あるかもしれませんが、そんなところです。
ざっとすべての話をここまで書きました。いや、ちょっと長すぎですね。自分でも予想外です。(テーマの話と加えて三万字超えました。一章分の分量ですね)
興味があれば、この内容見てから、該当の箇所を読み返してみてください。もしかしたら新たな発見があるかもしれません。
この作品書いてみて思いましたが、善悪はともかくかなり熱量高めに最後まで書ききれて個人的に思い出に残る作品になりました。前作の「ラーザイル戦記――鮮血公女のマキャベリズム」もある意味ではこの作品に負けない熱量はありますが、その作品はかなり政治的な要素が強く、別種の熱量なので、バトル物でしか出せないものが今回出せてよかったです。いろいろと思想を体現できた話であり、やりたかったことも書けたのでいうことなしです。
さて、ここまで読んでくださった方、改めてありがとうございます。
この長々とした私のあとがき(というより解説や感想等)にもお付き合いいただきありがとうございます。
後はCopilotと設定メインの話になります。それが終わればおまけです。おまけは結構、この作品の本質であったり、別エピソードだったりで、ここまで読んでくださった方であれば、読んでみたい話になるのではと思います。
もう少しお付き合いください。
ありがとうございます。




