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75 エリナへの手紙

「エリナへ

高校卒業おめでとう。

元気ですか?僕はまあまあ元気でやっています。


僕がB計画に参加して1年がたとうとしています。最初、B計画の任期は1年ということでしたが、B計画側の都合でもう1年延期されることになりました。

1年で帰るという約束を守れなくてごめんなさい。


来年の春には戻れると思いますが、来年になるとエリナは19歳になってしまいます。

だから、僕の帰りを待たずに、エリナは幸せな結婚をしてください。


僕はいつでもエリナの幸せを願っています。

ジェイミィより」


僕はエリナへの手紙を書いて、2枚の便箋を封筒に入れて所長に届けた。

これでわかってもらえるだろうか。納得してもらわないと僕としてはどうしようもないんだけど。


それでも多少はスッキリした気分でその夜も受験勉強をしていると、

なにかいいことあったの?

とサニアが聞いてきた。

「うん、過去の問題でもだいぶ点数が取れるようになってきたし、これはきっとサニアの教え方がいいからだね」

僕は嘘をつくのがすこしうまくなった。


それねえ、ジェイミィは高校のときあんまり本気だしてなかったでしょ?

「え?」

中流階級の高校生にとっては落第さえしなきゃ学校の成績はその後の人生にあんまり影響ないじゃない?

確かに、そりゃ落第とかしたら大変だけど、無難に高校を卒業して工場かどこかに勤めたら、同じような仕事をしている限り給料は同じで、出世するとか昇給するとかはまずない。

だから僕だって、勉強はテキトウで残りの時間はアルバイトをしていた。


みんなそうだから、ちょっと真面目に受験勉強をしたら入試はそんなに難しいものじゃないのよ。

まあ入学してからは専門的な勉強ばかりだから難しいらしいけど。

「あ、はい」

やっぱり高い給料を貰うにはそれなりの責任があるってことだと思う。

「そりゃそうだよね」

それはとてもわかりやすくて納得できる話だ。でもこの世界の全てがそういうわけじゃない。

僕はそれがわかった上で利用できるものは利用するし、それでもこの世界を少しでもなんとかしたいと思う。


1年前僕がここに来たときは、無難にこの1年を過ごせば、その後は故郷の惑星に帰ってエリナと結婚して普通の生活を送るのだと思っていたけれど。

ここに来たらいきなりあの事件に巻き込まれて、アウラがシークレットチャイルドだという話を聞いて、

リザリィには階級違いの結婚は不幸だと聞いて、サニアの仮説を聞いて。それから、ヤコブの話を聞いて。

ユウミやフランの他の人とは違う考え方を知って、僕はもう1年前の僕ではない。

1年前の自分に戻りたいわけでも戻れるというわけでもないけれど。

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