74 母への手紙と幸運
「母さんへ
お元気ですか?僕は元気でやっています。
出発するとき、最後は喧嘩別れのようになってしまったことを申し訳なく思っています。
早いもので僕がB計画に参加するために家を出て1年が過ぎました。
予定では任期は1年で終わるはずだったのですが、B計画側の都合により、帰宅がもう1年遅れることになりました。
来年の春には戻りますので心配しないでください。
最後に使い立てしてをして悪いのですが、2枚目の手紙を
Q26地区TR768番通りNCCアパート26-229のエリナに届けていただけると幸いです。
ジェイミィより」
書けることは少なかったし書くことも少なかった。
青い風の惑星の話を書いてもよかったんだけど、何を書いても心配させるような気がしたから。
そして、「こうなりました」という言い方はやはり有効だと思う。しょうがない、と思ってくれそうだから。
僕が故郷の惑星に帰った時に倍怒られるかもしれないけど。
2回か3回、母もエリナには会ったことがあるから、エリナに手紙は届けてもらえるだろう。
エリナへの手紙を書く前に食堂へ行ってコーラを飲んだ。このソーダバーは次に行く惑星にもあるんだろうか?
コーラを飲んでいると、何度も考えてこれでいいと思えたはずなのにまた漠然とした不安が僕の中に湧き上がってきた。
こんなときに話したいのはやっぱりアウラだった。
僕が鶏小屋を見に行くとそこにアウラがいた。今日は紺色の制服を着て、鶏を1羽づつ体重を測っていた。
僕はそこにアウラがいるというだけでなんだか安心した。
僕は周囲に人がいないのを確認してからアウラに話しかけた。
「僕にはやっぱりちょっとひっかかることがあって、、、」
どうしたの?
「あのことでもう1年B計画に参加できるというのはやっぱりなんかずるいというかさ、それをアウラはどう考えているのかなって思って」
私はずるい、って言ったじゃない。
「まあそうだけど」
私は最初は育ての両親、主に母親を私が上の階級に行くことで見返してやりたいと思ってB計画に応募したわ。
でもここでいろいろあって、そこはもうどうでもよくなってきた。
もちろんあの人を許したわけじゃないし、今でも許せないと思っているけど、あの人が悔しがる顔とかは見ても見なくてもどっちでもいい、っていうのかな。
他人のことよりも自分が幸せになる事のほうが大事だと思い始めたの。
まあ長いことあの人の顔を見なくてもよかったからそう思うのかもしれないけどね。
それで、2年目のB計画と言うのはつらいことがあったから、今度はちょっとぐらいラッキーなことがあってもいいかな、って思っている。
ジェイミィはそんなに義理を感じるほどあの世界がよかった?
「そういうわけじゃあないな」
でしょ、元々私たちはB計画を利用するつもりだったんだし、だから今回のことも幸運を拾ったと思えばいいんだと思う。
「僕は何もしていないのに」
私はジェイミィに助けられたと思っているわ。
それで、ジェイミィが自分の幸せのために将来を選択してくれたらいいと思う。
「そっか、ありがとう」
僕は幸運を拾ったのかもしれないけれど、拾わせてくれたのはアウラだ。
僕は納得してコテージに戻りかけたらトラルがいた。
アウラと何を話していたの?
トラルが聞くから
「えっと、故郷の惑星に帰ったらアウラはどこの学校に行くつもりなのか聞いてた」
僕はとっさにでまかせを言った。
そっかぁ、ジェイミィはアウラと結婚するの?
「ええっ、そんなことは考えてないけど」
そうなんだ。でも故郷の惑星に帰ったらすぐに結婚しなきゃ。僕たちは1年遅れてしまっているわけだし。
「ああ、そうだね」
母さんとか、帰ったらきっとうるさく言いそうだ。




