第四幕 大戦……月の使徒 挟撃
第四幕 大戦……月の使徒 挟撃
超時空間より。天の楽園の果て。聖なる獣。一族長"ラウム"の睡眠っていては守護していた寳門からの通過りし刻は、どこか……それは曖昧な記憶でしかなかったように思う。然しそれにあっての意識だけはどれだけの刻を経過ていても闇の軍勢は忘れるはずもなかった。
揺れながら動く時空。それにある空間での感覚。
辿りゆく路すがら、それは刻に……寳門より先に待つ不思議の波も渦巻いていた。そんな泡沫に脱落する使徒たちもいては、捻れた時空に飲み込まれて消失てゆく事もあったりした。
「我に続けぇ」
ルシファーの鼓舞は"新しき月"へと向かう全軍の想いを知らず知らず高めていた。それはどこか結末までをも見たような意識に変わりそうなってゆく。
然して不安定な刻の波も渦巻く捻れた時空から"新しき月"にある"暗い月の海"に辿りついていた。そこはいつかに"淑天ノクターナル"が棲んでいた場所。超時空間にある楽園の果てで寳門を睡眠っていたようにも守護していた"ラウム"は、そこにいた"淑天ノクターナル"の事も"月"までの路をも"天空の覇者"は知っていたのだった。
続々と連なり進んでゆく寳門からの堕天使の軍勢。途中不思議と捻れた時空の刻に飲み込まれしまっていた僅かな使徒もいたようだが、その大半は"新しき月"へと辿りついていていたようにある。
「ノクターナルなき後……新しき月か」
ルシファーから零れた言葉だった。
「ただ冷たければ……何の慈愛すら感じる事にもない。いつかに見た"月"ではなく、あの淑天ノクターナルが超時空間の天の楽園より、その千年の果実を喰らい地上へと堕天したサタンの変わり果てた姿形をその満ち欠け翳りある闇のうちに隠し続けていた刻。永久の恋慕に太陽からの反景でサタンを焼いてしまわないようにとあったようではなく。これでは"死星"地上を粧青い魔石からの天雷で破壊し続けているだけの……そんなようにある場所では……闇の皇子ルシファー」
超時空間にある"ラウム"の守護していた寳門から続々と集結しつつある堕天使の軍勢。すると突如として何か光速にも見えた。燃える天雷の焔炎が風を切り音を裂割ながら、それはルシファーめがけて向かってきた。
それはいつかの刻に超時空間から"月"に遣わされていた。その掌に携え燃えている焔炎からの天雷を持つ雷天使。そんな第一波が向かった。するとルシファーの目の前に漆黒の光が翔走った。然して腰に帯びた歴戦の傷跡を残す剣を横に向け構えた姿勢でいながらも、投撃げられた天雷を自在に操る"天使ウリエル"の攻撃を受け止めている闇がそこにあった。
「闇の皇子ルシファー。これにあれば今はこのオレにお任せください。こやつの天雷など……粧青い魔石の"力"からすれば大した事もない。さぁ……地獄の大魔王サタンが"死星"となった"新しき月"の後側で待っています。闇の皇子ルシファーが共闘せねば幾ら地獄の大魔王サタン率いる軍団ですら"サリエル"となると危うい。いち早く合流し挟撃を……"勇者"の呼称名にかけ、今はお任せください。さぁ……早く。その想いが泡沫と弾けてしまう前に……」
いつかのサタンなき後に超時空間に遺された天の楽園の守護者。"勇者アモン"だった。然してその両腕より割れ音を発てながら起きた双牙が鋭くも緋黒く耀き始めていた。
然して少しづつ……その呼称名も"勇者アモン"となった真実の姿へと。歴戦の跡を残す剣を片手に闇の姿形へと変貌してもゆくようだった。
「させるか……熾天使ミカエル。いいや既に闇に堕ちた堕天使ルシファー」
勇者アモンと戦闘い競り合いながらもいる雷天使ウリエルの発した声のようだった。
「ふふっ……聞こえんな。ウリエル。我らが勇者アモンと堕天使の師団数騎で汝など十分。所詮……汝などは地上の魄を破壊して廻るだけ……そんなだけの"力"よ」
「……言うか……闇の皇子」
そうしている刻にも数騎……闇の皇子ルシファーの指令を受けた堕天使の師団がアモンとウリエルが戦闘っているほうへと躍り出た。
「闇の皇子……ルシファー」
堕天使の軍勢から幾つかの師団を率いる数騎がルシファーの横側を通り抜け振り向きながら問う。
それにただ黙って頷いただけのルシファーがいた。
「ふふっ……"勇者アモン"総司令サタナキアより借り受け、それも確かに間違いではなかったようだ」
黒く微笑うルシファー。然して言葉を発した。
「よいかアモン。堕天使の師団数騎から二つに別解……それと汝に任せた。我は残す師団もう一団を率いて"月の裏側"へと廻り込む。ふふっ……サタンも嘸かし待ちわびているだろうからな」
「これは心強い。今この刻はオレと堕天使の師団でお任せください。さぁ……早く行かれよ。闇の皇子ルシファー」
「待て……堕天使め」
雷天使ウリエルの声が後から響いていた。
然してルシファーは、そこに堕天使の軍勢を二手に別解るようにしてから"新しき月"その裏側……今この刻にでは地上へとその向きを変えていている。粧青い魔石からの天雷が地上の楽園を焼き尽くさんとしている。守護者とある"サリエル"がいる地獄の軍団師団の奮戦しているだろう場所へと向かう号令をかけた。
闇の皇子ルシファー率いる堕天使の軍団は"新しき月"の後側から廻り込む。すると地上への攻撃が始まっていた"月の裏側"では既に超時空間の使徒、天使。地獄の軍団。大魔王サタン率いる軍団師団。魔者などが入り交じるような戦闘いが起きていた。
天雷に撃たれ倒れる魔者。火炎を吹き付けられ燃えてゆく天使。切り刻まれ乗り越えられてゆく存在。だが然しそれも……天にあるそれも地にある存在も、その使徒たちは戦闘いながらもその先に待つ刻を見届けようとしている。
白い彩色。
黒き彩色。
それはただ一つにある彩色のようにも見えそう思えた。
然しそこに混淆とあるなかに、瞬きにも一際美しい麗美なる存在が見えるようでもあった。地獄の大魔王サタンの姿だった。
「ふふん。何だ随分と到着のが早かったではないか……ルシファー。そろそろ"月での戦闘い"も終盤だ。超時空間のほうはどうした」
「それらしい事に超時空間は"破壊の天使カマエル"の登場待ちというようだろう。天の楽園におき……今この刻では我の軍団。堕天使の軍団も"総司令サタナキア"将軍に任せてある。多少前線での小競り合いもあれど……まだその程度よ。ルキフゲ・ロフォカレ配下のバアル辺りが奮戦しているがな」
ルシファーの辿りつき見た"新しき月"は、地獄の軍団を率いる大魔王サタンがいた。然しそこで起きている戦闘いでは、まだ黒檀の彩色に耀く。孔雀の羽で装飾られた鎧兜を纏った風体でいたりする。だがその片手にはいつ抜刀するのかと構えた腕があるようにも見える。
「ふふっ……言うか。サタン。然しまだ汝の闇の姿形も……」
「ルシファー。いいか? たかがこれしきの戦闘いにおいて、オレの真実なる姿を見せられようか。ふふん。まだその刻ではない。だが最後はこんな"冷たい月"ごと丸飲みしてやるだけだがな」
地獄の軍団その大魔王サタンの不敵な微笑いが……どこか皮肉粧いたようでもある。
「大魔王サタン。よくこれまで辿りつきましたな」
突如とした話しかけた声。
「……何だ、アスタトロではないか。いつからいた。然しオレの読み通り……見事だ。だが、ラルフは天空を支配し誇示した。強者……いいや……聖なる中立なりし存在とすら言えよう。あの"天空の覇者ラウム"が寳門を通したとはな……ある意味……おれでもそれは賭けだったが」
サタンの口振りに僅かな疑問がルシファーの意識に浮かんだ。
「サタン……汝は、"ラウム"の守護している寳門の存在はいつから知っていたのだ? 我ですら……」
するとサタンは更に皮肉粧いたように微笑いながらも、ルシファーのそんな問いに答えた。
「……オレは超時空間の天の楽園を己自身から堕天した。楽園の守護者でもあったオレがだ。それも千年の果実を喰らってからな。知らないわけがあるまい。ノクターナルもそうだった。超時空間よりノクターナルが追いやられた"月"より超時空間の天の楽園は決して見えぬからな。……ふふん」
「もしや……汝もノクターナルと同じように……秘めていた別の想いが……それで汝は堕天をした……のか? サタン」
「ルシファー。オレがだ。そんな事にあるはずがない」
さっきよりもどこか皮肉粧いていても、何かを僅かに漂わせた想いを感じるサタンの不思議と不敵な微笑いがあった。
「さて……頃合いだ。地獄の師団も前線部隊だけではあの"大鎌の天使サリエル"には敵うまい。丁度よくルシファー率いる堕天使の師団からなる軍勢も揃った。アスタトロ。伝令を翔走らせよ。これより地獄の軍団はオレを先頭にして、闇の皇子ルシファー率いる堕天使の軍団は前線での戦闘いにある師団と合流してから"粧青い魔石の守護者でもある。"天使サリエル"を挟撃し撃破する。急ぎ全軍の将軍、師団長にそれにある伝令を遣わせるのだ」
然して始まっていた戦闘は堕天使の軍勢……闇の皇子ルシファーを迎え"新しき月"を舞台にして、最終決戦へと続いてゆく戦闘いとなっていった。
「最後は"月"ごと丸飲みしてやる」
「行くぞサタン」
「ふふん。ただ見ていろルシファー」
それは永久に決して見る事は出来ない。そんな戦闘いが。これよりの刻より始まろうとしていた。
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