第三幕 大戦……寳門
第三幕 大戦……寳門
「我らの軍団師団などと合流次第……これより"新しき月"の使徒二つの存在の撃破に向かう。案内はアスタトロ汝が頼りよ。それにあたりアスタトロ……先に地上へと赴き天空の支配者"ラルフ"に援護を伝えよ。地上から向かうサタンの地獄の軍団の路を作らせるのだ」
「闇の皇子ルシファー。それにあり至りましては我配下に命じており既に天空にて待機させておりますゆえ……"新しき月"までの案内など気にめさるな」
「ふふっ……サタン配下……ベゼルブブその片腕にあり……事も有能か」
天空の支配ラルフ。聖なる獣。凡てに措いて地上での支配する存在。それは超時空間でもなく堕天使に近くもなく、どこか傍観を守っていた側。そんな中立とも言えたりする存在のようだった。
然し……超時空間の天は"天使ウリエル"の持つ天雷の"力"を祈りを忘れた地上へと向けた刻、地上では中立でもあった"天空の覇者"ラルフをも巻き込み、旧くは"ソドム"と"ゴモラ"という祈りの意味を忘れた魄の集まる場所を壊滅させた。
その事が凡てに措いて中立であったはずの天空の支配ラルフを地上側へと近づけてしまう。
すると地上より凍る幽閉の地に堕ちてありながらも、いつかの刻。超時空間の天。その楽園に千年に一度だけ生る不思議の果実を己自身から喰らった事からも得た全知なる智慧を知る事となった地獄の大魔王サタン。その目論んでいた狙いは"天空の覇者"を味方につけるそれにもあるようだった。
「サタン……凡てこうなる事をあの刻より解っていたか」
そんなルシファーの言葉に割り込むようにも、アスタトロは答える。
「然し……天空の支配ラルフは……この度の超時空間へ挑闘む戦闘いには"力"を貸すことは頑に拒んで……」
「ふふっ。いつかの刻。あの刻のそれをラルフは忘れるはずがない……と、サタンは地上から"新しき月"までの路を通り抜ける事を天空の支配ラルフへ遣いを……ベゼルブブに赴かせ然して頼み込ませ、そこにある天空を通り抜ける事に凡ては素知らぬようにという事だったのだと言いたいのだろう? アスタトロ……汝が今この刻に超時空間の天の楽園にあるはそれにある路を通りきた。それは"新しき月"までと至るのではないか? それもサタンより予め聞かされ初めからそれという話……知っておったからであろう。地上から"月"を通り抜けて参戦するなどと……ふふっ。サタンが何の意味も確信もなしに申す訳がなかろう」
「左様……見事……闇の皇子ルシファー」
そんな話も言葉も超時空間に流れる天の風に掻き消されようとしていたが、ルシファーの堕天使の軍団"新しき月"へと向かう軍勢は塵芥の如く集結していた。
「我ら堕天使の軍団。地獄の大魔王サタンの配下"アスタトロ"の導きにより"新しき月"へと侵攻し、使徒"焔炎の雷天使ウリエル"と粧青い魔石の守護者でもある"大鎌のサリエル"を地上の地獄の軍団を率いる大魔王サタンと共闘し撃破するに向かう。よいか、この大戦。その瞬きに輝く勝利はこれにある一戦にかかっているのだと心得よ」
遂に闇の皇子ルシファーの号令が下された。
暫くの刻を迅速にそれは音もなく。闇の軍勢。ルシファー堕天使の軍団と地獄の軍団師団その一部は行動していた。
「闇の皇子ルシファー。あれに見えるのがそれに通じた路」
不思議な事にそこに何もないはずの宙に幾つもの耀く宝石の一塊ような物が浮いているのが見えた。
それらは揺れて集まりながら、それもどこか石櫃にあるような造作にもある。不思議と個に浮きながらも集まりある宝石の一塊が、たった一つの門のような建造物を形成している場所だった。
然して何かを見守り待ってるように大いなる一つの存在……天空の覇者ラルフの"一族長"が不思議の門の前に横たわるように座していて、その瞳を閉じた侭に闇の皇子となったルシファーの意識に語りかけた。
「ルシファーよ。これより起きるであろう最終戦争。サタンはその集結を知っていれば結末までをも知っているだろう。ルシファー、オマエも忘れているのかそれも知っている事なのは理解しているか? それでもこの"浮き月"の門を潜り抜け"新しき月"へと向かうか……」
……いつかの刻を思い出すようですな……
ルシファーにそんな不思議な想いになるようなどこかで聞いたようにある言葉が、その頭の片隅で痛んだように響いていた。
「ふふっ……知れた事よ。今更ながら何が言いたい。ラルフ……いいや……一族長"ラウム"」
ほんの僅かな刻を感じた。すると天空の覇者"ラウム"は不意に静かにその瞳を開けるとこう答えた。
「んん……よかろう。さぁ……ゆくがよい。ルシファー、己の睡夢の続きを紡ぐもオマエ次第よ。我ら天空の者は……オマエの見続けるのであろう"睡夢"をこれより見守るとする」
するとルシファーの目の前。少しだけ宙に浮き上がった天空の覇者ラルフの一族長"ラウム"は呪いの言葉を詠唱えると、その双翼を後方に大きく広げる格好をする。然して口から下がるペンダントのような物は、何もない宙に浮き上がり、聖なる獣……ラルフ。天空の覇者"ラウム"の持つ火炎の吐息をそっと吹きかけるようにしてから、ラルフたちの誇示する双翼を勢いよく振り出し目の前にある幾つものの宝石のような塊に火炎混じりの風を当てるようにして七色の風を起こした。
「さぁ……ゆくがよい闇の皇子ルシファー。その軍団よ。我ら天空の者はこれまでしか"力"になれない。我ら天空の者はこの不思議の門を守護するが故に中立的にいなければならなかった。然し……我らもあの刻の超時空間の天がした裏切りにすら値した出来事は忘れているはずもない。さぁ……これで路。"新しき月"までの路は開けた。オマエの見続けるのであろう"睡夢"を我ら天空の者たちは見届けてやる」
「我の睡夢と言うならば……ふふっ。存分に照覧せよ。然し……この礼は言わん。サタンとある天空の約定からであろうからな」
それと言う事と同じくして……ルシファーの睡夢とは。刻にそのルシファーの意識の片隅で聞こえた言葉が思い出された。
……いつかの刻を思い出すようだと……。
もしや醒めない"睡夢"を見ているのでは……と。
「ゆくぞ……堕天使、地獄の師団ども……我に続けぇ」
闇の皇子ルシファーの静かにも力強く響き渡る"新しき月"の使徒撃破に向かう号令がこの刻に下された。
最終戦争にと続く戦闘いへと。
続々と連なり進んでゆく堕天使の軍勢。
堕天使の軍団。
地獄の師団。
大魔王サタンの配下アスタトロを先頭にしていては、闇の皇子ルシファーが続く。然して天空の覇者"ラウム"により開かれた寳門には、無数の黒い翼羽の軍勢がその後に続きながら、それは"新しき月"へと繋がる路の門を通り抜けてゆくと、今この刻では既にいない。"月の淑天ノクターナル"なき後にある"新しき月"の二つの存在。"天使サリエル"と"天使ウリエル"それにある使徒を撃破し地獄の大魔王サタン率いる軍団師団と合流する事とした。
それはこれより起きるであろう最終戦争へと突入するようにもある事にも……それに向かうようだった。
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