家から寮へ
「こんな成績でよく帰ってこれたな!」
どなりちらしているのは、俺の親父。
中学校教諭で、学年主任とやらをしているそうだが、俺にはさっぱり分からん。
「お前の成績、どうやればいいんだが…」
また始まったという冷めた感じで、俺は親父の前で正座させられていた。
考えてみれば、小学校から成績はあまり良くなかった。
Aをもらったのは小学校の3年生ぐらいが最後のような気がする。
「…もう、お前にしてやれるのは一つしかない」
そう言って、一枚のチラシを俺に見せた。
俺が口を開く前に、親父は俺に告げた。
「これから1ヶ月間、お前はここに行ってもらう。どうせ長期の休みなんだ。バイトするわけもなく家でゴロゴロ過ごすよりかはるかにましだろ」
「ここって、全寮制の学校じゃないか」
「そうだ、なんでも知恵を授けてくれるそうだ。お前に必要なものだろ」
俺は反論をしようとしたが、親父の右手が強く握られてわずかに震えているのを見ると、その気も失せてしまった。
「いいな、今日はもう寝ろ。そして、明日にはここに行くからな」
俺が渡されたチラシには、山をバックにニコッと笑っている女性や男性、総勢15人ほどが載っている。
全員が教員らしい。
生徒は写真には映っていないようだった。
どこにいるのだろう。
翌日、無理やり部屋から引きずり出されて、車に荷物ごと放り込まれた。
「いくぞ」
俺は黙っていた。
むすっと怒っていた。
だけど、すぐにそんな感情はなくなってしまうことに、俺は気づいていなかった。
けっこう適当に作られている木の門を通ると、普通のマンションが森の中に建っていた。
「ここだ」
俺はそのマンションの入り口のあたりで車から荷物ごと降ろされた。
親父はそのまま車で家へUターンして帰ってしまった。
入口のところへ荷物を持っていくと、二人ほど写真で見た人が立っていた。
「えっと、林山抱くんですね」
「ええ、そうです」
「入寮おめでとう、君を半月指導することになる半月暢だ」
男性が、俺と握手をする。
「同じく、半月の間指導をする沢多飛花よ。よろしくね」
「はい、よろしくお願いします」
女性の方とも握手を交わす。
「さて、他の人たちが来てから、詳しい説明をするから、それまでは待っていてほしい」
「分かりました」
俺は、邪魔にならないように、端っこに荷物を引きずって移動した。




