最終話 このギルド サイコーかよ
「まさか、あなたが新当主になる日が来るとは……もちろんそのためにギルドに通ったんですがね」
ファインドが上機嫌でシルの隣を歩く
「新当主にならないと言ったらどうする?」
冗談のように笑いながらシルが言う
「はっはっ、お人が悪い 御子息が生きていたというのは信仰のような物ですからね――次こそ再興派は分解してしまいますよ」
シルはニヤっと笑う
集会で【後継】を名乗った上で、全て消してやる
その象徴ごと燃やし尽くして
――
スポットライトのような光魔法、明るく照らされ銀髪が神秘的に栄える
大広間の上にある階段から下を見下ろす
シルバー家の銀髪に涙する者さえいる
当主シルの名のもとに集められたのは、再興派の幹部たちと背後の支援貴族達
「やっと本物の会になるな」
高齢の幹部が感慨深そうにグラスを傾ける
当主の証であるマント
胸元にはひし形の紋章が煌めいている
闇ギルドの紋章とは雰囲気がまるで違う
もう1歩踏み出し、周りを一瞥してから話し始める
「ご出席に感謝する!また、シルバー家の者としてこの場に居る事を嬉しく思う」
会場から熱狂的な歓声が上がる
まるで勇者や王様でも来たかのようだ
「そして今夜が【最後】になることも俺は感謝したい」
会場がざわつく
「どういう意味だ」「もう貴族として再興されているのか」
まさか新当主が、自分の家を潰そうとしているとは誰も思わないだろう
――
シルが右手を上げる
入口が全て閉じられ火の粉が上がる
「私はシルバー家の最後を共に過ごせて幸せだ」
シルが最後まで当主としての挨拶をおこなう
部屋にいる再興派は数秒固まり一瞬の静寂を作るが、その後パニックになる
蜘蛛の子を散らすように逃げ道を探すがどこにもない
「お前を支援してやったんだぞ」「なぜこんなことを」「金を払うから助けてくれ」
口々に勝手な事を言っている
戦える者達が【剣を構え】【魔術の詠唱が響く】が、シルは一歩も動かない
放たれる魔法は結界に遮られた
ファインドもさすがに怯む
「まさかお前、最初から全部!」
シルは満足そうにマントを火に投げた
シルバー家の紋章が消えて行く――これで全てを終わらせる
その瞬間
正面入口の業火のドアが開き、マスターがスタスタと平気な顔で歩いてくる
「やっぱりマスターは凄腕ですね」
シルが驚いて、つい褒め言葉が出る
マスターはニヤっと笑って言った
「いや……今日の凄腕はロゼッタだ シル!もういいだろう!」
隣に立つロゼッタがサッと手を払うと周りの火が一瞬で消える
騒いでいたゴミ共があまりの事態に静かになる
シルさえも状況が分からず口を開ける
――
戦いは終わった
復興派は職員により拘束されたが、多少脅された後に解放されるだろう
双方の被害者はゼロだ
ファインドを見つけマスターが声をかける
「再興ならずに残念だな、お前だけは犯罪奴隷にでも売り出しとくか」
ファインドがフッと笑う
「再興派など飾りだ……だが俺はお前には見えない【真の秩序】を求めていたのだ」
拘束された服の袖から自爆魔法の発動式が展開される
「危ない――」ロゼッタが弓を射るより早く
マスターが一瞬でファインドの腕を吹き飛ばす
飛んで行った腕は壁で爆発し外壁に穴を開ける
「誰を消そうとした?」
マスターの声が響く
「――こいつはな俺の消した奴の息子だ!どんな顔して、どう生きるか俺は見届けてやるつもりだ!そんなすぐに地獄で再会はさせない」
「帰るぞシル」
こちらも計画が阻止され放心状態のシル
マスターが手を回しギルドに歩き出す
――
ギルドの前には人影が立っていた――ノエルだ
「無事でよかった」
「ノエルお姉ちゃん」
ほっとしたような悲しんでいるような複雑な顔をしている
「今日は……もう、終わりにしよう」
――
数日後――闇ギルド
シルは静かに扉をくぐった
「戻ってきたのか」
マスターが出迎えた
少し照れくさそうにシルが言う
「戻る場所がここしかないから」
「あら?焼かれ足りなかった?」
ロゼッタが軽口を叩く
「おかえり」
ノエルが抱きしめる
「うん」
子供のように反応するシル
セリナが空気を明るくしようと声をあげる
「色々と迷惑かけたんだから、私より下っ端という扱いで良いかしら~?」
シルは小さく息を吐いた
「やれやれ、当主だと思ったら次はギルドの下っ端か」
「昇進おめでとうございます!」
みんなの笑い声がギルドに響く
やっぱりここが帰る場所だ
この職場 サイコーかよ
――
-ep.16
ブラックエルフの固有スキル【暗黒の夢】
ロゼッタが思い描いたものを相手に見せる事が出来る
俺は信念を持って闇ギルドをやっている
悪事もろくにしてない再興派を直接消したりはしない
シル お前も闇ギルドの一員だ
――マスター
第2編途中で完結出来るように再構成しました。
あとがきは蛇足なため
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