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ギルド猫の日常2

執務室の扉がわずかに開いていることがある

マスターなのに戸締まりも出来ないのか?


気づかれた気配はなかった

だが、扉の向こうの足音だけでわかっていた

「来たか」

椅子を軽く引く、まるで「乗ってこい」と言ってるように

身体を大きく伸ばしてジャンプし膝の上に着地する

性格に反して思いのほか温かい


しばらくしてマスターはふと手を止めた――何かを思い出すように

「昔な、冒険者の頃は似たような猫を飼っていたんだ」

遠くを見る目をしていた

「任務に出るたび、どこまでも着いてくるから【影】と呼んでた」

一応聞いてやるかと耳だけ向ける

「あいつは俺を庇って刃を受けた……猫がそんなことをするとは」

ごつごつとした男の手だか触り方は悪く無い

「お前は違うよな」

俺に聞くな


猫だけが知っている情報は、想像よりもずっと多い


――


「ヒマです」


カフェでセリナがつぶやいた

任務は【監視】ギルド近くに現れる不審な人影の観察

ギルドが見える角のカフェにもう半日いる


彼女はふと横を見る

そこにいたのはクロだった

いつの間にかセリナの横の窓辺に登って、じっと外を眺めている

「クロもヒマですか?」

よく喋る子猫だな

不審人物いたぞ――ギルドの周りで黒い服の男がキョロキョロしてる

「怪しい」

セリナは小声で言った


あの人物の周囲には、不審な魔力の流れがある

「追うべきかも?」

セリナがそう言う前に男を追跡し始める

「えっいつの間に!」

セリナは笑っていた

「すごいなぁクロ!私よりずっと闇ギルドっぽい」


猫と少女の監視訓練

そんな昼下がり


――


「……どいてください」

ノエルは苦い顔をして言った

机の上の書類を潰す

クロが気持ちよさそうに寝息を立てている

「それ、今日の確認書なんですけど」

もちろん反応はない

ノエルは諦めて別の書類を先に処理する


「本当に、どいてほしいんですよ?」

もう1度言われた

さすがに怒ってそうな声だなと耳を動かす

でも、どきたくは無いから尻尾を振る


「返事、しましたね?」

ノエルがペンを置き顔を近づけて来た


ヤバイばれたか?

母猫並みの嗅覚だな

とりあえず寝返りをうって腹を向ける

猫が寝るのはその場が『安全』だからだ

ノエルのお嬢さんを信頼している


「あなたって、ほんとにずるいなぁ」

背中をそっと撫でられた

気持ちよくてゴロゴロ音が出る

「まあいいか、出来る事から何とかしましょう!それまではあなたの寝床ってことで」

そう言って、ノエルは笑った

受付嬢の仮面を取った、素の少女の顔だった


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