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ギルド猫の日常3

カウンターのさらに上

天井近くの棚で黒猫は気ままに爪を研いでいた

冒険者さんが買ってくれた爪とぎだ

そこからなら、受付の全体がよく見える


大柄な斧使いの男

声が大きく、ドカドカ歩く

『あいつはダメだ』


「いらっしゃいませ」

ノエルが受付嬢の仕事をする

初めて見かけるな

音もなく歩く黒衣の男

『悪くない、合格だな』


爪研ぎ台を降りてカウンターに降り立つ

男はふと上から見下ろしてきた

「……猫?」

それだけ言って、男は椅子に腰かけた

椅子に座るなら膝の上に乗ってやろう


ギルドの奥で見ていた職員が口々に言う「またやってる」「選ばれたな、あの魔術師」

それは、ギルド内での『儀式』だった

 ――そばに座る者は、ギルドにとって危険ではない

 ――クロに無視される者は、裏があるか使えない

「変わった猫だな、賢いのか?」

「さぁ?言葉は分かってそうですけどね」


猫カフェのような癒しの時間が闇ギルドに流れる


――


ロゼッタは任務帰りだった

小さな調査依頼-ギルドからそう遠くない

寂れた通りに残された古い倉庫の確認


「反応なし……」

素早く記録をメモする

ぽつり、と額に冷たいものが落ちる

外を見れば灰色の空――次の瞬間、本降りの雨が地面を跳ねていた


足元が濡れないように中に戻る

「少し待つか」

足元で軽い爪音が聞こえた

ロゼッタが見るとそこには1匹の黒猫がいた

「クロ……」


あ~また降られた

最近雨が多くて毛並みがバサバサだ

ロゼッタの横で一生懸命毛繕いする


何も言わない

ロゼッタも何も問わない

2人は並んで雨をやり過ごした


なんか話せよ

尻尾でロゼッタの足を叩いてみるが反応が無い


見上げると書き込みがされた地図を眺めている

ロゼッタはぽつりと呟いた

「この雨で、いくつかの痕跡は流れるな」

地図を爪でなぞった

そこには、さっきまでなかった泥の跡があった


ロゼッタは視線を感じたのか、ふと目を合わせて来た

「お前は知っているのか?」

「ゴロゴロ」

「そうか、そうか」

やがて雨は弱まり空が明るくなる


ギルドに戻るかな

2人は言葉もなく並んで歩く


ギルドに帰ったロゼッタの報告書には、余白に小さな猫のイラストが描いてあった


――


「眠くて涙が出ちゃうな」

休憩時間に控え室でセリナがあくびをした

クロはその近くで、じっと彼女を見上げていた

「ん、どうしたの?クロも眠い?」

セリナの声は柔らかいが、その目はほんの少しだけ赤い

――誕生日

セリナはいつしか、誕生日を誰にも言わないことに慣れていた

「昔はね、朝起きたらお母さんがケーキ焼いてくれてて」


仕方ないにゃ~セリナの顔に近づく

「なに、耳打ち?」

「にゃ」

その瞬間、ドアがバタンと開いた

「セリナちゃん!ちょっと手伝ってー!」

ノエルの明るい声が響く

「え?あ、うん、今行く!」


慌てて立ち上がり部屋を出る

「誕生日おめでとうセリナ」

ケーキと紅茶を手にノエルが出迎える

目を丸くするセリナ

「……ママ」

「昨日クロがね、私の机の上に採用時の書類を落としたの」

几帳面な字で「誕生日・好きなもの・好きなこと」などが書かれていた


ノエルはギルド仲間たちと今日の準備をした

セリナは胸の奥が温かくなるのを感じながら笑った

「ありがとう!ノエルさん!みんな! クロ」


まったく世話がやける





ノエルママ

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