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ギルドマスターは見ている

──やれやれ

「いつの間にか、うちのギルドは【爆弾】ばかりだ」

紅茶を飲みながら監査の後始末を眺める

ノエルは街をふらついてるだろう


背後で火柱が立つ

「平和だな……うちの定義では」

ロゼッタがいつものように偽帳簿を処理している

耳がパタついてる……まさか照れてるのか?


ロゼッタ=ケイリ

元会計監査局の凄腕だ

氷女とまで言われた女が、いまでは「ノエルちゃん」呼び

ここまで変わるとは思わなかった


あいつは「信用されること」に一番慣れていない

無条件に信頼されたら、全力で応えようとするタイプだ

ノエルに何かあったら――組織ごと消しかねない

「危ういな……」


――


奥の秘密部屋から【ぷしゅー】と音がする

「おい、頭から湯気出すなよヤカンじゃないんだから」

少年シルが待機護衛にツッコミをいれられる


ノエルがつけた名前を今では気に入っているようだ

忠誠とか信頼とか、そういう次元じゃない

自分が【初めて認められた】そんな純粋さも感じる

「1度は消した命ですが、ノエルさんが言うなら仕方ないでしょう」

マスターは複雑な気持ちでシルを見る


そう、私のギルドには――

・監査局でも魔法力を恐れられた闇魔法使い

・裏の魔法実験場から逃げ出した【処分済み】の元貴族

・そして無自覚最終兵器の受付嬢

よくまあ、こんな爆弾ばかりを集めたもんだ


この3人をまとめるには、それなりの気力が必要だ

とくにノエル

あの子は【真っ直ぐすぎる】

本人は「ただの受付嬢ですから!」とか言ってるけど

・その言葉でロゼッタは本気で偽装工作を始め

・シルはナイフ片手に戦闘態勢に入り

・護衛は勝手な行動をし始める始末だ


笑うしかない

「これはもう……俺のギルドじゃないな」

気づけば、全員があの受付嬢の手のひらで踊らされてる

無垢で、真っ直ぐで、けれど誰よりも人を動かす――まるで昔のあいつを見ているようだ

「……案外、俺が一番まともかもしれんな」

S級間近と言われた冒険者パーティーの元リーダーが、柄にも無い事を言う


紅茶を飲み干すと、ロゼッタが声をかけてきた

「マスター監査用帳簿の撤収完了しました」

「よし!今日も平和だ」

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