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ロゼッタ=ケイリと会計監査局

マンションの1室

ロゼッタは古い書類を見つめていた


それは――かつて自分が表の仕事

「会計監査局」で働いていた頃の報告書


■軍事予算の不透明な支出について

当時の高官たちの顔色が一斉に青くなったのを思い出す

「まさかノエルちゃんに尊敬されるとは」

ふふっとノエルの話しになると口が緩む

ロゼッタは書類を再び引き出しにしまい魔法刻印をロックする


――


彼女は王国1の頭脳と呼ばれ、若くして会計主任にまで昇進した

「会計が口を出しすぎだ」

「可愛い顔して余計なことばかり」

「これだからブラックエルフは」――

何を言われても数字はウソを付かない

予算を片っ端から精査しウソを報告した結果が「退職通知書」だった


窓から王宮がある方向を眺める

「この国は腐ってる……」

口から本音が漏れる

「ま、おかげで【機密情報】は丸分かりだけどね」

ロゼッタは再び今の仕事に取りかかった


――


ロゼッタがギルドにいる日は

ノエルは出勤するなり「あっ今日ロゼッタさん居る」と言いながらトコトコ走って来る

「ロゼッタさんって、すっごい仕事できますよね~」

カウンターに手をのせながら褒められる

「まあね……数字は裏切らないから」

ロゼッタが耳をピクピクさせて答える

しかし、目には冷酷さが見えたような気がする


ノエルが満面の笑みで返す

「私、なにかあったら絶対ロゼッタさんに相談しますねっ」

ノエルの笑顔は、無垢で、眩しすぎた

ロゼッタは目を細め視線を逸らす

「うん、いつでもどうぞ」

(本当に、この子は……)


このギルドに入って以来

ロゼッタは無意識に「敵か味方か」「損か得か」でしか人を見てこなかった

しかし、ノエルは違った

彼女は裏帳簿を覗き込んで「うわっ分からない数字がビッシリだ!すごいですね!」と無邪気に褒めてきた

全身から善意が吹き出している

『この子は守ってあげないと』

誰にもそう思わせる天性の才能がある


――

時は戻ってガサ入れの次の日


「2日連続ですね……次は王国会計監査局」

ギルド地下のマスター室

マスターとロゼッタが【監視魔法】の映像を確認する

「下水道から来るとは……あの人達は盗賊か何かですかね?」

マスターが呆れて顔に手を当てる


「昨日の騎士団のガサ入れで出ない書類 『どこかに隠してるだろう』という読みでしょう」

ロゼッタの目が魔導を帯びて炎のように光る

「――仕方ないブラックエルフのスキルを使います」

マスターが珍しく驚いた顔をする

「いいのか?」

「ノエルちゃんのために【表向きは】健全なギルドを目指しましょう」


――


ノエルが「急な休みで寝すぎた」とポワポワしながら出勤してくる

ギルドの前でロゼッタが立っている

「あっ、ノエルちゃん今日も有給です!ガサ入れ2日目入りました」

「えぇ~昨日で終わったんじゃないの~」

一瞬嫌そうな顔をしたがクルリと回ってスキップで街に消えて行った


見送るとギルドの扉に鍵を掛ける

ロゼッタを中心にマナが溢れ出しギルドを包み込む

「監査のアホ共は良い夢見なさい」


――


同行していた王立魔法院の魔法使いにより潜入魔法が使われる

下水道から監査局がギルドに突入する

だが――

「何も出ない、完璧すぎる」

「欠点の無い書類、仕入れ先の安全性、労働条件のホワイトさ……どれも問題無い」

監査員の1人が膝をつき吐き捨てる

「俺は夢でも見てるのか……ここの事務員はどうなっているんだ!」

その言葉を聞いたロゼッタは、ふっと小さく笑った

「元同僚よ」


ブラックエルフの固有スキル【暗黒の夢】

ロゼッタが思い描いたものを相手に見せる事が出来る

監査員達は絶対に闇ギルドが100%ホワイトな幻覚を見ている


まぁ万が一スキルが解けても、書類は普段から偽装してるから問題無い

「私よりバカな奴らには不正を発見出来ないだろう」

ロゼッタがマナを使用し過ぎでハイになり

普段はしない邪悪な笑い方をする

まるで魔王の使いのような


――


騎士団が撤退した後

ロゼッタはカウンターの椅子に腰を下ろす


カウンターの表帳簿に何かメモが挟まっているのが見える

『ロゼッタさんの字、読みやすくて好きです』

それはロゼッタがノエルの間違いを修正した部分だ

「……もう、そういうの、やめてよね」

耳が赤く染まり飛べそうなくらいパタパタと羽ばたく

残ったマナ残滓の影響で本当に飛んでいたかもしれない


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