10話 小さなお客さん
「おはようございます!」
ノエルは今日も元気よくギルドの扉を押した
「雨でも元気だね 今日もよろしく」
奥ではマスターが変わらぬダンディな笑みで迎えてくれる
(ふふっ今日もイケオジ……サイコー)
手早く制服に着替えカウンターに立った
胸元の骸骨と大鎌がキラリと光る
今日はいつも通りの一日になる──そう思っていた1時間後
バンッ
扉が急に開いた
おっお客様だ!
しかし、そこにいたのは想像を超えた存在だった
ぐっしょりと濡れ泥だらけの少年
破れた服、血のにじむ手足
震える声で少年は絞り出すように言った
「……ひ、光ある所に闇がある……」
合言葉──だけど
「こ、子ども!?」
ノエルは硬直した
間違いとか?一応確認しとく?
「……ホワイトが良いのか??」
「……闇に生きる」
合言葉、成立しちゃった~
――
「どうぞこちらへ」
ノエルは営業スマイルに戻りスイッチを押し扉を開ける
──そのとき
極道っぽいスーツ姿の男達がゾロゾロと入ってくる
「そのガキを渡せ!!」
(ヤバい!この子、追われてる!)
少年は泣きそうな顔でノエルにすがる
「お願い……助けて……!」
えっどうすんの?とりあえず渡しとく?
でもお客さんだし奥に通しとく?
その時だった
「ノエルさんの仕事はお客様の案内ですよ」
振り向くとマスターがいた
まるで最初からそこにいたかのように
「ここでは、誰であろうと【合言葉を言った者】はお客様です」
マスターは武器も持たず、ゆっくりと出口へ歩いていく
パン! パン!
スーツ達が懐から小型魔導銃を取り出し射撃した――弾は空中でぴたりと止まった
「くそっ こいつ漆黒の暗殺者」
──ドン
音がした瞬間
ノエルの目の前で世界が一瞬歪んだ
私達以外店内に居ない事になった
いつの間にか部外者は外の道に全員出ている
「ここは私のギルドだ 騒ぎたいなら他所でやってくれないか?」
マスターの声は変わらず優雅だった
尻餅をついている手前の1人にゆっくり近づく
「次、踏み込んだら──全員消す」
ノエルに聞こえない小さい声は死を告げる死神のようだった
蜘蛛の子を散らすように逃げていく
――
ふぅん
店内に戻ってきたマスターは珍しく考え込み、ため息が漏れる
「抹消済みですが、魔力値は高いですし、ノエルさんが選んだのも何かの縁ですか」
ぶつぶつと独り言を言いながら顎に手を当てる
よし
「ノエルさん後はいつも通り案内をお願いします」
マスターは【失踪者リスト】を手に奥へと消えていった
「……は、はいっ!」
震える声で答えながら、ノエルは少年を秘密の扉の向こうへ誘導した
少年は制服の裾をぎゅっと掴んで離さない
「だ、大丈夫だからね」
そっと笑いかけ、手を取る
なんとか離してひとりで歩いて行く




