神の力
――やっぱりまだ体が思うように動かない!
追跡を始めてすぐ路地裏に入った剣持は所々に障害物があるからか、全速力では走れていないどころか避けることに集中しすぎて脳が焼き切れそうになっていた。かと言って歩道にでればもっと他に気が散って遅くなることは明確だ。
――クッソ!これじゃ追いつくどころか車の発見すらも厳しいぞ...
――刀也さん、上っすよ!上!
「上?」
伏見の声に顔を上げてみるがもちろん上空に車などあるはずもない。
「どういうことだ上って!」
今、走ることに全集中している剣持にとって余計なことを考えている暇はなかった。
――違いますよ、建物の上に登って見つけるんすよ!
伏見の提案を聞いて剣持は急ブレーキをかけた。
「建物を登る?」
――そうっす。今の刀也さんならできるはずですよ、なんせこの一週間みっちり鍛えましたからね。
伏見がそう言って脳内でピースしている姿が見えて剣持は少し笑った後に体制を低くし始めた。
「そうだな、ありがとうガッくん」
そう言うと剣持は大きく飛び上がった。
そう彼らはANYCOLARからの仕事が全く来なかったため、その時間を剣持が神の力を使いこなす訓練にあてていたのだ。まだ不完全なところはありつつも人並み外れたスピードで走れれば、五階建てくらいの建物の高さであれば余裕で届く跳躍も可能になっていた。
「うお、っと」
少しバランスを崩しながらも見事に建物の屋上に着地した剣持は車がいったであろう方向の建物に飛び移りながら周囲を見渡していると――。
ものすごい勢いで信号無視して周囲からクラクションを鳴らされまくっている一台の車が走っているのが見えた。
「あれだな」
例の車を発見した剣持はそのまま建物を飛び移り続けて車を追おうとした次の瞬間、剣持の目に嘘みたいな光景を目の当たりにした。
「へ、ヘリコプター!?」
今まで爆走していた車がさらにスピードを上げたと思ったらいきなり屋根からプロペラが生え始めたて一瞬のうちにヘリコプターへと変形したのだ。
「それは反則だろ!」
そう叫ぶと急いで建物を飛び移っていき何とか飛び立とうとするヘリの後方に追いつくと、
「…くっ!届けーー!!」
全力のジャンプでヘリのスキッド(足となる部分)にギリギリ手が届くと、車体を大きく揺れらしたが剣持をぶらさげたまま飛び立った。
なんとか追いついて一息ついたのも束の間。
「なんだお前!」
窓からこちらを見る人物がいた。
――まずいな…。
ここで落ちたら一溜まりもないことは下を見なくても明らかだった。
ヘリにぶら下がっているぶんには大丈夫そうだが、攻撃されればさすがにまずいことになるだろう。
「不審者がヘリコプターにへばりついてるよ」
「よし、マオ落とせ」
「無理だよ!僕まで落ちたらどうすんのさ」
「大丈夫だ、行け!!」
「いやぁぁぁぁ」
「二人ともうるさい!今運転に集中してるから黙りなさい!!」
「…」
攻撃に対処しようと色々策を考えていた剣持だったが上の静かになった様子を感じて動きを止めた。
――これ、このままでいたほうが良さそうっすね。
剣持は伏見の声に頷きながら最悪なことにはならなそうで安堵した。




