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ユニヴァース  作者: クモガミ
度重なる出会い
48/125

二つの伝説

自身の身に訪れた危機を涼しい顔で軽々と回避したミツルギに他の三人は驚愕の相を浮かべながら、まだ戦闘中なのに呆けた。

「「「「「ドルドルルッ!!!!」」」」」

「「「!」」」

三人が呆けている間、この機を見逃さず、まだ他のロック・プートン達が人間で言うなら隙ありっ! という風に一斉攻撃をし始め、不覚にもカレン達は魔物達の鳴き声でそれに気付いたが、その頃にはとっくに岩の砲弾の雨が真上から降り注いでいた。

「皆、伏せて!」

「「「っ!」」」

甲高いアイシャの声が響いて、唐突でも男子全員は素早い反応でしゃがみ込み、それを見計って、未だに健在している足元の黒い魔法陣から、再び黒い何十本の腕が復活し、真上から降り注いて来た岩の砲弾を零さずに一つ残らず、黒い腕達が見事にキャッチした。

「返すよっ!!」

黒い魔法陣から伸びている黒い腕達を操って、アイシャはキャッチした岩達を送って来たロック・プートン達に送り返した。

「ど、ドルどどっ!!?」

送り返された岩の砲弾にロック・プートン達は見掛け通り、岩の塊だからトロイのか、避けるどころか反応出来ずにモロ直撃してしまい、更にはぶつかった反動で身体のバランスが崩れて横転してしまった。

「ドル…ドッル!」

敵の攻撃を利用して自分の武器にし、その敵の意表を突いたアイシャの機転の利いた反撃だったが、敵のロック・プートン達は何事も無かったかのように平然と起き上がった。

「効いてねぇな……どうやったら倒せるんだ、あいつ等?」

様子から観察して、同じ岩に守られているロック・プートン達にはあまり効果の無い一撃だったみたいで、そんな強固な防御力を持つ彼らをどうやったら、倒れるのかロロはロック・プートンの事を説明してくれたアイシャご本人に聴いてみた。

「倒す方法は二つ。岩の中に隠れている本体を倒すか、身に纏っている岩を全部ひっぺ返すか、このどちらかだね」

「成る程、単純明快だな」

ロック・プートンの倒し方はアイシャの話に因ると倒す選択肢は二つ、球体状の岩の塊の中で小さい穴から顔を覗かせている本体を倒すか、もしくは本体に張り付いている岩を全て剥がすかであり、ロロはその分かりやすい倒し方に冷笑した。

「ふ~~む、この状態(『セフティ・モード』)では、あのロック・プートン達を倒すのは時間が掛りそうだ」

自身の細長い剣の形をした魔装器とロック・プートン達を見比べるようにミツルギは右のコメカミに人差し指を当てて、如何にも悩ましい表情で悩み事を呟いていた。

「仕方ない…………此処は、素直に〝あれ〟でやるか」

うんと頷いて何かを決断したミツルギはコメカミから指を離すと、前触れも無く、細長い剣の形を魔装器の刀身から至る所に切れ目のような物が浮かび上がり、同時に『ソード』と呼ばれたサソリのような姿をした『コア』の両眼から強い光を放った。

「(! これは…ミツルギは自分の魔装器を〝あれ〟に変化させる気だ!)」

異変が起こったミツルギの魔装器の様子を見て、カレンは自身の魔装器が姿を変える前の予兆に似ていると思った時、ミツルギの魔装器は『DETROITデトロイトMODEモード』に変わるのだと悟った。

「(…なら僕も!)」

自分も続いて『デトロイト・モード』に変化させようとカレンは、チラッと大剣の剣格部分に在る『ランプ』を覗いた。

「(色の輝きが戻っている! よし、イケる!!)」

『ランプ』の色の輝き具合で、『デトロイト・モード』時での稼働に必要不可欠な『メイン・マナ』の貯存している『マナ』の量が分かるので、カレンはそれを確かめると『ランプ』は以前のように碧い輝きを取り戻しており、 これならば『デトロイト・モード』に変化できると確信したカレンは直ぐに強く念じて、それに応えて魔装器はミツルギのと同じく大剣の刀身から切れ目が浮かび上がり、剣格部分に差し込まれた『コア』である『ストライク』の背中から淡いライトピンク色の光を放つ珠が現れた。

PURGEパージONオン!」

掛け声のようにミツルギは呟くと『コア』である『ソード』の剣を生やした尻尾を後方に倒して、そのまま『ガジェッター』の中へ押し込み、一方カレンも『ストライク』の背中の珠を奥へ押し込んだ。

                     『『PURGEパージONオン』』

両方の魔装器から発せられた『取り外しを行なう』という意味を持つ言葉と共に、両方の幾つも切れ目が浮かび上がっていた刀身部分が外れ飛び、魔装器の力を『抑える《セーブ》』していた切れ味皆無の刀身だと思われていた〝鞘〟が外れた事によって、二つの魔装器は『セフティ・モード』から『デトロイト・モード』に変わった。

                     『コード・ブレイヴ』

『ブレイヴ』と名乗ったミツルギの魔装器は〝鞘〟が外れて当初の姿とは異なり、刀身部分は鏡のように透き通った銀色のもっと細長い刀身が現れ、刀身の中央には灰色の線が刃先から刃の根元まで伸びており、外見的は剣と言うより刀に近い物になった。

                     『コード・ゼオラル』

続いて『ゼオラル』と名乗ったカレンの魔装器はいつもと同じ、刀身の大きさは大して変わらないが形的にスリムとなり、刃の部分も山吹色に染まって鋭くなり、これで二つの剣は剣としての在るべき鋭さに変貌を遂げた。

「「「!」」」

そして、ミツルギとカレンの魔装器が『デトロイト・モード』になった時、何故かカレン以外の三人が揃ってカレンの魔装器に眼を向けた。

「「「(ゼオラル?)」」」

何かの聞き間違いかと自身の耳を疑ったような表情で、ロロ、アイシャ、ミツルギの三人は『ゼオラル』と間近で名乗ったカレンの魔装器に眼を奪われた。

「「「「「ドルドルッ!!!!」」」」」

「「「!!」」」

三人がカレンの魔装器に気を取られている隙にロック・プートン達は再度、岩の砲弾を投げ付けたが、ロック・プートン達から唯一、眼を離さなかったカレンだけがいち早く反応して、片手で大剣を振り被って、刀身に『力のマナ』を流し込んだ。

剛魔ごうま!!」

薙ぎ払う様にカレンは大剣を水平に振るい、それに合わせて刀身に流し込んでいた『力のマナ』を空中の岩の砲弾に向けて解き放ち、放出された『マナ』は魔装器が『デトロイト・モード』になったお陰で〝魔術〟の威力と大きさが通常の三倍にハネ上がるから、『マナ』は巨大な風の塊と成って、岩の砲弾全てを包み込み、粉々に打ち砕いた。

「「「ドルドルルッ!!!」」」

岩の砲弾の脅威は去ったが、まだ終わった訳ではなかった。攻撃の手を休ませない残りのロック・プートン達が、タイミングを見計らって時間差攻撃を仕掛けようとしていたのだ。

「させん!」

数体のロック・プートン達が岩の砲弾を投げ出す寸前にミツルギはそれを阻止すべく、眼にも止まらぬ動作で身を低くして刀を水平に振るった。

「「「?!!」」」

ロック・プートン達とミツルギ達の間合いは約100メートル程在り、本来ならミツルギが刀を振ったところで、届く距離なのではないのだが、ミツルギの細長い刀の刃はしっかりと数体のロック・プートン達に届いていた。

何故届いたかと言うと、魔装器である細長い刀の刀身が何処までも伸び続けるゴムように数体のロック・プートン達の所まで伸びて、弾丸のようなスピードで届いた細長い刃は球体状の岩の塊の中央の穴に居る本体から上の辺りをスパッと数体同時に引き裂いた。

「まだまだ!」

「「「!!?」」」

もう攻撃する手段を無くすためにミツルギは追い打ちの如く、伸びた刀の刃を鞭のように操り、数体のロック・プートン達に乱れ切りを喰らわせ、全身に纏っていた幾つもの岩を一つ残らず全て引き剥がした。

「け、剣が……伸びた!?」

念には念を入れて数体のロック・プートン達を丸裸にした後、約100メートル伸びていた刀の刀身が急速に縮み始め、これもまたゴムのようにバチンっと元通りの長さに戻り、そして、すぐ近くで戦いぶりを最初から最後まで眺めていたロロはミツルギの常識外れの攻撃に口を開けたまま唖然とした。

「冷たく鋭く、無慈悲な心のように、永久の氷よ、刃と化せ!」

ミツルギの攻撃を同じく傍で見ていたが、ロロと違ってアイシャは顔に一片の驚くも戸惑いも見せず、呪文の詠唱に集中しており、アイシャの周りから氷の魔法の証でもある銀色の光が無数に溢れ出しており、推測するまでもないが彼女は氷の魔法を出す気だった。

アイス一太刀ジャべリン!!」

片手を前に翳して、すぐ手を斜め下に振り下ろした瞬間に仕上げの魔法の名前を唱えると、アイシャの身体の前から銀色の魔法陣が出現し、その魔法陣から鋭く尖った氷の大剣が勢い良く飛び出して、真っ直ぐに一体のロック・プートン目掛けて走って行った。

「ドルルッ!」

野生の勘でアイシャが魔法で出した氷の大剣に当たったら危険だと、 感じ取った一体のロック・プートンは、身体が鈍くて避けきれないが何とか避けようと身体を少しズラした。

「!??」

ずれたお陰で空中を走って来た氷の大剣が中央の本体にはギリギリ当たらず、命中箇所は本体の横の岩に当たったのだが、それでも岩の球体の横半分が氷の大剣によって切断され、横半分を失った岩の塊の球体は脆くも崩れ始め、一体のロック・プートンはアイシャの攻撃にやられずには済んだが、くっ付いていた岩全部が取れてしまう羽目になってしまった。

「はっ! しまった、ボ~~~っとしている場合じゃなかったぜ! 俺様も反撃だ!!」

少し間、呆然と皆の戦いを眺めていたロロはやっと正気に戻り、ミツルギとアイシャが反撃に乗り出したのなら自分も反撃に移ろうと鞄から矢を取り出し、弓に矢をセットして、まだ残っているロック・プートンの一体に狙いを付け、ロロは瞬時に〝練った〟『力のマナ』を矢に流し込み、次は『力のマナ』をうまくコントロールし、矢の刃に眩い白い光を宿らせた。

一点矢いってんや!!」

弓の糸から離されて、超高速で宙を駆ける白い光を宿した矢はロロが狙いを付けた一体のロック・プートンに白い線を描いて飛び向かった。

「ド、ドルッ!」

ロロが狙った一体のロック・プートンも野生の勘で白い光を宿した矢に直撃したら命が危ないと悟り、岩の球体の下から生えている足を折り曲げてしゃがみ込み、全長を少しでも下げて、球体の中央の穴に居る自分本体への命中を避けようとした。

「!!」

しゃがみ込んで全長を僅かでも低くしたのが幸いして、白い光を纏った矢は本体にはスレスレで当たらず、倒されずに済んだが、代わりに本体の上の岩に矢が命中し、命中した岩の箇所は光を纏った矢に貫通され、本体が潜んでいる岩の球体の中央の穴とそっくりな穴がもう一つ出来上がった。

「ドルル…ッ!??」

岩の球体に風穴が空いた程度で済んで良かったと思いきや、そんなロック・プートンの気持ちを裏切るかのように、光輝く矢に貫通した箇所から岩が次々と崩れ始め、まるで崩れ落ちる砂山のように岩の塊はロック・プートンから全て剥がれ落ちてしまうのだった。

「「「ド、ドルドル!?」」」

数は元から少なかったとは故、同族達が瞬く間に戦闘力と身の守りを一遍に奪われ、動揺を隠せないまだ岩の塊を身に着けている残りの三体のロック・プートン達は動揺の所為で、攻撃の手を休めてしまう。

「(貰った!)」

砲弾攻撃を一旦中断した隙を見逃さず、カレンも反撃に移ろうと、『力のマナ』を練って即座に大剣に流し込み、〝魔術〟を発動させるためのかなめ、『マナ』のコントロールを速やかに済ますと、カレンの大剣の刀身が真っ白な光に包まれた。

絶光斬ぜっこうざん!!」

光に包まれた大剣を両斜めに振るうと、真っ白い光が文字を書くように、空中に白い線の×《ばってん》が浮かび上がり、カレンは大剣を今度は水平に振るって、その×に―《水平の線》を加えた。

「「「!!!」」」

最後の水平斬りが発射ボタンだったのか、×に―が追加された途端、合計三本の白い線は光の刃と化して、岩の塊の球体を保っている残り三体のロック・プートン達の所へ、鳥の如く羽ばたいて行った。

「「「ド……ルッ!!」」」

超高速で飛び交う三本の光の刃に三体のロック・プートン達は『あれに当たったら死ぬ』と野生の勘で察するが、頑丈だけど重い岩の鎧を装着している自分達では到底、避けきれない事も察し、少し躊躇うも生き残る事が最優先だと判断し、球体の中央の穴から岩の塊を衣服のように脱ぎ捨てて、その直後、三つ岩の球体は三本の光の刃にそれぞれ真っ二つになるが、本体は直前に脱出したので、辛うじてロック・プートン達は生き永らえた。

「「「ドルドル!!」」」

「「「「「!」」」」」

これで全匹のロック・プートン達は岩をバッサリと剥がされ、最後に丸裸になった三体のロック・プートン達はやっと勝ち目のない戦いだと認め、そう思ったら颯爽と背を向けて一目散に来た道(巨大なトンネル)の奥へと撤退し、それを目撃した、他の魔物達も戦意喪失や死を恐れて、三体のロック・プートン達に釣られて続々と来た道へ帰って行った。

「敵の後退を確認……と」

「……終わったみたいだね」

「ん、そうだな!」

「はぁ~~~……一時はどうなるかと思った」

逃げて行く魔物達の背中が完全に見えなくなったのを見計って、アイシャは警戒の表情を解いて、魔物達の撤退報告を周囲に伝え。

自分の眼でも確かめたが報告を聞いて、カレンは表情を和らげ、肩の力を抜き、終わったと誰かに同意を求めるように呟き。

その呟きにミツルギは眼を閉じながら刀を腰に掛けて、激戦だったにも関わらず息は乱れてはおらず、逆に余裕に満ちた表情で清々しく相槌を打ち。

そして、ロロは曲げた両膝に身体を乗せるように両手を乗せ、やっと戦いが終わった事に安心と共に長い溜息を吐きだして、ブワッと疲れた顔を表に出した。

「「「ところで、カレン……」」」

魔物の大群の対戦が終焉して、空間内が静まり返える程安全になったところで、ミツルギ、ロロ、アイシャの三人がカレンに何か話を持ち掛けようとしたが、偶然的に三人はセリフも声も被って言い止まり、お互いの視線を交わし合う。

「戦い所為で聞きそびれたが、改めて聞くけど……カレン、そいつは誰だ?」

この『白霧山脈ホワイト・マウンテン』の洞窟内で自分達以外の他の人間に会えるとは全然、思っていなかったロロは、会った時から気になっていたカレンと親しそうに接するミツルギついて、知り合いっぽいカレンに問い質した。

「あぁうん、彼は……」

「待て、カレン。 君が俺の自己紹介をやる必要はない、何故なら我が二つの名の家には『自分の自己紹介は自分でやる』という共通の家訓が在るんだ。 だから君の連れへの俺の自己紹介は俺自身にやらせてくれ」

「……分かった、ミツルギがそう言うなら」

ロロに問われてカレンはミツルギの事を紹介しようとしたが本人からストップを掛けられ、家訓とは一体何なのか、意味が分からなかったが、ミツルギが自分で自己紹介をやると申し出たので、特に断る理由など当然ないカレンは素直に自己紹介をバトンタッチする。

「ゴホンッ! 申し遅れた、カレンの連れのお二人。 俺は『ルーレイ』家第112代当主及び『神楽』家第111代当主の『ミツルギ・神楽・ルーレイ』と言う者だ。 以後お見知りおきよ」

「「…え?」」

準備の咳払いの後、ミツルギは片手を首の下の辺りにそっと置いて、たったそれだけで優雅で礼儀正しく見える姿で挨拶と自己紹介をロロとアイシャに送ると、二人はキョトンと豆鉄砲を喰らったかのような顔で、小さく呟いた。

「神楽…?」

「…ルーレイ?」

眼を見開いて二人はそれぞれミツルギの名前の中に在った『神楽』と『ルーレイ』という言葉を確認するように聞き返す。

「『神楽』と『ルーレイ』……まさか、君は」

「あの〝伝説の英雄達の子孫〟……なのか?」

「ふむ、まぁ……世間的にはそう呼ばれているな!」

どうゆう訳かは知らないが様子と言動から推測するに二人はミツルギの『神楽』と『ルーレイ』の名を知っているみたいで、真相を明かしたい追求心に駆られたアイシャとロロは度胸試しをしているような顔付きで〝英雄の子孫〟に当たる人物かなのかと、ミツルギに恐る恐る尋ねてみると、当人はそれを世間的と言ってさらっと肯定した。

「ほ、本物なのか?」

「疑うか? これを見てもか?」

やけにあっさりと肯定されたのでロロは簡単には信じず、疑ってみたが、証拠を見せ付けるようにミツルギは両手の薬指にそれぞれ付いた色も刻印も違う綺麗な指輪を二人の前に突き付けた。

「それは…大貴族の証『大貴族グレートノーベル証明輪リング』! そして、その刻印は…」

「『神楽』と『ルーレイ』の刻印! ……って事は」

綺麗なだけではなく、指輪は大貴族の証であるようで、しかも、二つのそれぞれの指輪の刻印が『神楽』と『ルーレイ』の名を示す物らしく、これが止めになったロロとアイシャはミツルギの正体を完全に確信した。

「マジかよ……マジで、あの『神楽』と『ルーレイ』なのかよ!?」

二つの指輪が決定的な証拠になり、ロロはゆっくりと眼が丸くなり、信じられない物を見ているような驚いた形相で確定された事実に身体を微かに震わせ、興奮してしまう。

「ねぇ、どうしたの二人共? ミツルギの名前がどうかしたの?」

毎度毎度、約一人だけ話に付いて来ていないカレンは二人が何故、ミツルギの名前に対して訳有りの反応を見せるのかを尋ねた。

「どうしたのってお前、あの『神楽』と『ルーレイ』だぞ! 分からないのか!?」

「いや、そんな事言われても……僕にはさっぱり……」

「「「……」」」

様子の変化と興奮に近い心境を指摘されてロロは有名人に会ったら驚かない方がおかしいと言わんばかりに『神楽』と『ルーレイ』の名前が一体何を示しているのか、分からないのかと問い掛かけたら、カレンはお手上げのポーズをして愛想を浮かべながら正直に知らないと答えると四人全員の間に沈黙が生まれた。

「お前、それ……冗談だよな?」

「冗談じゃないよ、僕は本気で言ってるよ」

冗談であって欲しいと願うような眼差しと怪訝そうな顔のロロの聞き返しにカレンは本気で知らないと慈悲もなく即答する。

「マジで知らねぇのかよ……田舎者にも程があるだろ!?」

いつものやり取りたが、今回のロロはカレンの世間知らずにいい加減頭に来たらしく、顔を俯いた後に全身をプルプルと震わせ、そして、非難するように音量の高い声で怒鳴り、今度は違う意味で興奮する。

「ロロ、落ち着いて」

軽くブチ切れて、フーフーと猫のように息を荒くするロロにアイシャは怒りを鎮めようと肩に手を乗せて、落ち着かせようとした。

「ねぇ、ミツルギ? 二人が君に言っている〝伝説の英雄の子孫〟って、一体何の事?」

理由は分かってはいないが成り行きでロロを怒らせてしまったカレンは、質問しようにも今の彼に質問したら駄目だと場の空気を読んでそれを理解し、アイシャの方も興奮しているロロを落ち着かせているから邪魔をしてはいけないとこれも空気を読んで、カレンは二人への質問を断念した。

それでここは、話題の原因でもあるミツルギ本人に直接聞いてみようとカレンは、二人が言った『神楽』と『ルーレイ』に関連する〝伝説の英雄の子孫〟について尋ねた。

「ふむ、簡単に言うと、俺の二人の先祖は今から約400年前に訪れた、世界全体の危機を救った英雄の二人なんだ」

「世界を救った?」

事情を知らない人から見たら、異常なまでの世間知らずのカレンにミツルギは特に様子の変化は見当たらず、今まで通り且つ親切に自身の先祖の話を開始する。

「世界を救った事を詳しく説明すると、ここから少し歴史を辿る事になる。 400年前、おとぎ話上の人物だと思っていた魔人『アルタイル』が突如として、世界に降臨し、おとぎ話通りの常識を越えた異常とまでも呼べる程の力を駆使して、各国々に混乱を齎し、世界中の人々を恐怖と絶望で支配して、この世界『アメストラル』を自分だけの物にしようと企んだんだ」

「魔人『アルタイル』?」

「だが、その『アルタイル』の野望を止めんとせんと現れた、英雄達が存在したんだ」

「英雄達って事は……もしかして、ミツルギの先祖の人達の事?」

淡々と話を進めるミツルギの正体を知る為にはこの世界『アメストラル』の歴史を辿る事になり、そこから魔人『アルタイル』という世界の支配を企む人物が登場し、続いてその魔人の企みを阻止するために現れた、英雄達が登場すると聞いて、カレンはその英雄達の中にミツルギの先祖達が居ると予測した。

「ああ、俺の先祖、初代『ルーレイ』と『神楽』は魔人『アルタイル』を共に力を合わせて倒した勇者『トラル』の仲間だったんだ」

「勇者『トラル』?」

「『トラル』も存じないのか? 勇者『トラル』と言えば、400年前の最大の英雄の名前さ! 凶悪な力を持った魔人『アルタイル』を、我が身を犠牲にしてまでも倒し、世界を救い、世界を変え、そして、世界の導いた偉大な人物で、400年経った今でもその名は世界中の何処でも語り継がれている程の有名人中の有名人、それが『トラル』さ」

400年前の英雄と呼ばれているミツルギの先祖の話の過程で出て来た勇者『トラル』と言う人物は説明の内容的に飛躍している部分も在ったりしたが、掻い摘んで言うと『トラル』は魔人『アルタイル』を倒して世界中を救った、現代でも超有名な大英雄らしい。

「『神楽』と『ルーレイ』並びに……まさか、勇者『トラル』まで知らない奴がこの世に居るなんてな」

ほんの少し前まで興奮していたがアイシャの迅速な鎮静に数秒で怒りが治まり、落ち着きを取り戻したロロは話に介入して来た。

「『トラル』の事は例え世界中の辺境地に住んでいる連中でも、知らない奴は一人も居ないっていうぐらいの有名人なんだぞ。 色々な本にも載っているし、学校の歴史の教科書にも大々的に載っている事も有れば、『トラル』を崇める宗教も在るって話だ」

「その勇者『トラル』と共に世界を救った功績で、仲間達も人々から英雄と称えられ、『トラル』の次に有名な英雄の『神楽』と『ルーレイ』の末裔がそこに居る彼がそうなんだ」

過去の人物でも世界中の隅々に伝わっている勇者『トラル』の有名度と現代でも彼を取り上げる物の多さを説明するロロとは別に、ミツルギは『トラル』と一緒に世界を守り、後に英雄と称賛された仲間の末裔だから有名だとアイシャは眼を指し向けてカレンに告げる。

「でも、本当に驚いた。 こんな所であの『神楽』と『ルーレイ』に出会えるなんて」

「だよな! 俺様もぶったまげたぜ……あの伝説の英雄の子孫を生で拝める機会が訪れる日が来るとは、思ってもみなかった」

以上の説明からミツルギの先祖は余程の有名人のようで、ロロはともかく冷静沈着で喜怒哀楽の表情が乏しかったアイシャまでもが驚きを抑えきれないようで、二人は伝説の英雄の末裔ミツルギとの対面に感激に似た感覚を体感する。

「〝伝説〟か……君達が今日此処で〝伝説〟に出会えたと言うのなら、俺も今日此処で、〝もう一つの伝説〟に会えたと言う事になる!」

先祖が世界中に知れ渡る伝説級の有名度の恩恵でロロとアイシャから感銘的な眼差しを送られ、例え先祖に対する物だったしても悪い気がしないのかミツルギは誇り高そうに笑みのシワを増幅させた。

そして、笑みを絶やさぬままミツルギはこの場に自分という〝伝説〟の英雄の血を引き継ぐ者の他にもう一つ、〝伝説〟が在ると語り、視線をカレンに向き変えた。

「カレン、君の持っているその魔装器は『ゼオラル』で、間違いはないか?」

「へっ? …ああ、うん。 一応そうだけど、それがどうかしたの?」

もう一つの〝伝説〟が此処に在ると言ったミツルギが、何故かカレンに魔装器の名前は『ゼオラル』か、と尋ね始め、自分は〝伝説〟の話とは全く無関係だと思っていたカレンはいきなり話を振られ、意表を突かれるも戸惑う事無く、その通りだと肯定した。

「やはり! 聞き間違いではなかったのだな!」

良い方の予感が的中したように今度はミツルギが興奮の笑みを浮かべる。

「ああ、そうだ! 忘れてたって……え?」

ロロも同じ事を尋ねようとしていたようでミツルギに先を越されて、その事を思い出すが同時にカレンの質問の返事を聞いて、身体を硬直してしまう。

「えっと…カレン、もう一度確認するようで悪いけど…君の、その魔装器は『ゼオラル』で、間違いはないんだよね?」

ついさっきミツルギが『神楽』と『ルーレイ』の名を語った時と同じように、アイシャは本日二回目の眼の見開きを披露しながら、恐る恐るカレンに問い掛けた。

「まぁ、名前は確かに『ゼオラル』って事は間違いないけど……それよりも三人とも、一体どうしたの? 僕の魔装器がどうかしたっていうの?」

コロコロと態度が変わっていくロロ及びアイシャにカレンは、二人の態度の変わりようの原因は自分の魔装器が関係している事は質問の内容で明らかになっているので、ミツルギも含めて三人に自分の魔装器ついて何か有るのかと尋ね返した。

「どうしたのって……お前が持っている魔装器は―――」

「君が持っている魔装器は〝勇者『トラル』が持っていた魔装器〟なんだ」

「え…?」

割り込むようにロロが言おうとした事をミツルギが先に答え、その返って来た答えの内容がカレンの耳に入って、脳に伝わった時、衝撃が身体中を走り抜けた。

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