ことねと湊 後編 ーー川端ことね視点
美羽ちゃんの別荘に行った時もそうだったーー
「⋯⋯ことね、意地悪ですわね、近くにいるなら声をかけてくださっても⋯⋯」
『うん。 私ね、美羽ちゃんが喧嘩して、傷ついて泣いてる所をずっと見てたよ』
「ちょっと、酷いではありませんの。 なにかおしゃってくださいまし!」
『ふふ、だって美羽ちゃんの泣き顔、かわいいもん!』
「ことね! サディストなんですの! ドン引きですわ⋯⋯」
そう、私は意地悪。 美羽ちゃんが泣いてる所を見て喜んでいた。
でも私、湊には、そう思われたくないの。
いつも、楽観的でニコニコしてる『川端ことね』でいたいから。
だから、一番じゃなくてもいい、私のことも愛してーー
「おい! ことね! しっかりしろ!」
『⋯⋯湊』
「さっきから、俯いて⋯⋯お前らしくないぞ? いつも元気だろ?」
『そうだよね、いつも元気⋯⋯うん⋯⋯』
湊はそんな、私を見ると、突然お姫様抱っこしました。
『⋯⋯え。 湊! 恥ずかしいよ! みんな見てるし!』
「そんなことはどうでもいい! 静かな場所に行くぞ⋯⋯」
『ねえ、降ろしてよ。 自分で歩くから⋯⋯』
「嫌だ! 俺は今、ことねを抱っこしたい気分だから。 ⋯⋯なんだよ、いつもは抱っこされて嬉しそうにしているのに⋯⋯」
『それは⋯⋯今日は駄目なの! 恥ずかしいから⋯⋯』
そうして顔を真っ赤にした、私は湊に運ばれるのでした。
「⋯⋯⋯⋯」
「⋯⋯行かせない! 貴方に湊とことねの邪魔はさせない!」
「その通りだぜ。 ツラかせよ⋯⋯黒田明里」
「⋯⋯やれやれ。 今からいい所なのに⋯⋯」
湊と私は、人気のないベンチに座ります。
モジモジする私。 緊張するなーー
「おっと、お手洗いに行きたかったのか?」
『違うよ! そう、これは違うの⋯⋯』
しばらくの間、二人は視線を合わせないまま沈黙してしまいます。
『⋯⋯さて、気持ちも落ち着いたから、文化祭もっと周ろうよ! 体育館とか瑞稀ちゃんたちが、楽しいイベントをして⋯⋯』
「俺は行きたくない⋯⋯ことねのそばに居たい」
『湊? どうしたの? ⋯⋯そんな態度じゃハレームモード失敗だよ!』
「ことね⋯⋯俺は、お前が好きだ!」
『⋯⋯あ、うん。 ありがとう』
「いいや、お前はわかってない! 俺がどれだけことねのことが好きなのかを!」
湊が私を正面からしっかりと見つめてくる。 私は、視線を泳がせる。
『え、いや。 そんなことないよ! 湊は私の幼馴染だし。 毎日一緒に暮らしているから、それ相応の仲だよ! うん』
「⋯⋯そうだ。 俺たちは、小さな頃からずっと一緒で、お前のことをいつも見てきた⋯⋯だからわかる。 ⋯⋯入学式の前日のお前の様子が変だったこともな」
湊は最初から気づいていたのだ、『私達』の変化に。
「彩乃と美羽に話してる時の、お前の視線もな。 ⋯⋯ずっと、俺の方を見て寂しそうにしてただろ。 ⋯⋯なに呆けた顔してるんだ、言っただろ⋯⋯俺はこんなにもお前のことを見ているんだ。 ⋯⋯だから話せ、お前の抱えていることをな」
ずっとこちらを見つめる湊に、ことねは悩みながらも打ち明けるのでした。
「⋯⋯それで、要件はなにかしら? 瑞稀?」
「明里! なんであんなことしたの? 最悪だよ?」
「ふふ。 どうしてかしらね⋯⋯ってあぶないわね、吉澤ひとみ」
「アタイらを利用したって訳か? どうなんだよ!」
「ご名答。 ⋯⋯まったく騙されて、勝手に共倒れしてくれれば良かったのに」




